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人生二回目なので、今度こそ大好きな旦那様と幸せになります!

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本価格:650(税抜)

電子書籍価格:--円(税抜)

  • 本販売日:
    2019/10/17
    ISBN:
    978-4-8296-6884-9
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書籍紹介

ラブラブ結婚生活、やり直し!

若くして夫を亡くしたアン。病気で急逝したレスコットを想いながら眠り、気がつくと――過去に戻ってる!? もう会えないと諦めていた大好きな人と、ふたたび夫婦になれたけど、様子が以前と違う! 寡黙だったはずなのに「あなたは可愛い人だな」愛おしげに囁き、熱の籠もった目で激しく求めてくる。旦那様がいっそう好きになり、新婚生活は最高潮! 私、絶対に幸せになります!

ジャンル:
西洋 | ファンタジー
キャラ属性:
王子・王族・貴族
シチュエーション:
新婚 | 甘々・溺愛 | お風呂・温泉 | 幼馴染・初恋の人
登場人物紹介

レスコット

領民を思い遣る公爵。真面目で誠実な男性だが、無口すぎるためにアンには誤解されてしまった。二回目の世界では……?

アン

公爵夫人。レスコットに先立たれ絶望するなか、気づけば幼少期に戻っていて……。人生やり直し!

立ち読み

 ──カーン、カーン。
 死者を送る鐘の音が響いている。
 それを私はどこか遠い別の世界にいるような気持ちで聞いていた。
 目の前には真新しい白い十字架。その下にある平たい石には、私の夫だった人の名前が彫られている。
 ──レスコット・ヴィクター。
 享年二十七という若さで彼は亡くなった。
 死因は、斑病。別名五日病とも呼ばれる流行病だ。
 その言葉通り、適切な治療を受けられなければ、発症して五日後に死亡する。
 四十度以上の高熱に嘔吐。そして意識混濁状態になる者も多い、致死率が八〇パーセントにもなる死の病。
 毎年、国のどこかで、時には複数箇所で突発的に流行し、かなりの犠牲者を出す。
 特効薬は存在するのだが、出回っている数はとても少なく、価格も目玉が飛び出るほど高い。私の夫は公爵という身分でお金ならいくらでも用意できたのだが、在庫がなく、薬を手に入れることができなかった。
 薬を作るのには、どれだけ急いでも一週間かかる。たとえ材料と薬を作る医者を手配できたところで夫は助からない。それでも一縷の望みを掛けて薬の依頼をしたが、材料がないと断られ、結局夫は死んでしまった。
「……」
 十字架には死人を悼む白い花輪が掛けられている。夫を埋めたばかりの土はまだ柔らかく、花びらが散っていた。
 雨の匂いがする。空を仰げば雲が厚くなり、どこか遠くでゴロゴロという音が鳴っている。
 葬儀に参列していた人たちもすでに殆どが去り、残っているのは彼の妻である私と、親族である彼の弟くらいだった。
「義姉上」
 いつまで経っても動こうとしない私に痺れを切らしたのか、義理の弟であるエリック・ヴィクターが窺うように声を掛けてくる。その声に応えて返事をした。
「……何、かしら」
 エリックとは殆ど話したことがない。結婚式で会ったなという記憶程度だ。エリックは夫とは仲の良い兄弟のようだったが、私が夫と結婚した時にはすでに公爵家を出て、近くの屋敷で使用人を雇い、気ままな一人暮らしをしていた。彼が遊びに来ても私が呼ばれることはなく、顔を合わせもしなかった。
 そんな義理の弟が、何故今更彼の兄の妻であった私にわざわざ声を掛けてきたのか。
 緩慢な動作で振り返る。
 黒い髪に黒い目。夫と額の辺りの骨格がよく似ている。血の繋がった兄弟なのだということを否応なしに理解させられ、ずきんと心臓に痛みが走った。
 思わず目を背けてしまったが、義理の弟はそれを咎めなかった。彼も深い悲しみを抱いているであろうに、エリックはそれを隠し、力強い声音で私に語りかけてきた。
「……これだけは、義姉上に言っておかなければならないと思ったのです」
 その響きが嫌に真剣なものに聞こえ、私は黙って視線を向けた。
「義姉上にとって、兄上は決して良い夫ではなかったと思います。それは兄上も自覚していましたし、話を聞いていた私もそう思いました」
「……」
 なんのこと、とは言わなかった。だって、彼が何を言っているのか、私には分かってしまったから。
 ──レスコット・ヴィクターは良い夫ではなかった。
 正確にはきっと違うのだろう。
 夫は、とても無口な人だった。
 国王の紹介という名の命令で夫と結婚した私、アン・サラテは、侯爵家から公爵家へと嫁いだ。
 そこで初めて出会った夫は、男性らしいがっしりした体格の、狼のように目つきの鋭い、とても凜々しい人だった。
 社交界で人気のある、柔らかな表情や口調の中性的な男性とは違い、いかにも男性的といった感じの夫は、初めて出会った時こそ萎縮してしまったが、その中身はとても誠実で真面目な性格をしていた。
 出会いこそ政略結婚ではあるが、これはなかなかの当たりを引いたのではあるまいか。
 そう思った私は、夫となった人と夫婦として仲良くなろうと様々な努力をしたのだが、残念ながらその努力が実を結ぶことはなく、全てが泡と消えた。
 何せ、とにかく夫は話さないのだ。
 いくら話しかけても、相槌とも言えない答えが返ってくるだけ。私が近づけば逃げて行くし、外聞の悪い話だが、夫婦の閨だって一週間に一度あるかないか。それも義務的に一度行うだけとくれば、夫にとって私との結婚は望まないものだったのだろうということくらいは馬鹿でも分かる。
 だから結婚半年も経った頃には、私は夫とコミュニケーションを取ることを諦めてしまった。
 そして、話しかけていたのが私からだけだったという事実により、夫と話す機会も殆ど失ってしまったのだ。
 閨だけは一応残ってはいたが、心がこちらにないと分かってからは、たとえ一週間に一度程度だとしても辛いだけ。妻としての務めだと理解はしていても、私には負担でしかなかった。
 そういう夫婦の実態を、義理の弟は夫から聞いて知っていたのだろう。
 第三者に知られていることを恥ずかしく思いながらも、何を言われるのかと身構えていると、エリックは真顔で言った。
「──さぞ兄を酷い夫だとお思いだったことでしょう。ですが、それは全くの思い違いなのです。できればこれは、兄自身の口からいつか義姉上に話して欲しいと思っていたのですが、もうそれは叶いませんから、兄の代わりに私が言います」
「……?」
 エリックが何を言おうとしているのか分からない。戸惑いを隠せないでいると、彼は表情をピクリとも動かさずに言った。
「兄は無口でも何でもありません。ただ兄上は、妻である義姉上のことが好きすぎて、恥ずかしくて碌に話すこともできなかっただけなのです」
「……は?」
 エリックが何を言ったのか、一瞬、本気で分からなかった。
 だって、あの夫だ。会話の『か』の字も碌にできない、コミュニケーション能力ゼロと言っても過言ではない人が、実はそうではなかったと聞かされても、おいそれと「はい、そうですか」とは頷けないのだ。
「ええと、エリック。あなた、疲れているのよ。彼が亡くなってショックを受けているのはあなたも同じ。屋敷に帰ってゆっくり休んだ方がいいわ」
 私と同じ、黒い喪服に身を包んだエリックを労る言葉を紡ぐ。夫の両親は、私が嫁ぐ前に亡くなっており、残った血縁と呼べる存在は彼くらいだった。だから唯一の肉親を亡くしたエリックのショックが相当大きなものであろうことは私にも理解できる。
 きっと心労が溜まりすぎて、妙なことを言い出したのだろうと思ったのだが、エリックは首を横に振って否定した。
「信じたくないという義姉上のお気持ちは分かります。ですが、私は亡き兄に代わり、あなたに伝えなければなりません。兄上は、あなたを深く愛していました。初めて会った時にあなたに一目惚れし、それから亡くなるその時まで、あなただけを兄は愛し続けていたのです」
「……一目惚れ? 何よそれ」
 疑念に満ちた声が出た。
 嘘だ。そんなはずはない。
 だって、結婚式で初めて会った夫は、私を一瞥しただけで、あとは一度も私を見ようとはしなかった。政略結婚だからそれは仕方ないけれど、縁あって夫婦となったのだ。できれば仲良くしたいと思っていた私は、ひどく打ちのめされ、意気消沈した。あの日のことを未だに忘れてはいない。
 信じられないという顔をする私にエリックは「そうでしょうね」と頷き、寂しそうに笑った。
「結婚式の話は兄上から聞きました。兄上曰く『妻が可愛らしすぎて直視できなかった』らしいですよ。ふざけた話ですよね? ですが兄は冗談でもなんでもなく真面目に惚気ていました。義姉上が一生懸命話しかけてくれたことも兄は喜んでいましたよ。碌に話せない自分に話しかけてくれて嬉しいと。兄自身も応えたいと思っているようでしたが、なかなか上手くいかないらしく、よく私が相談に乗っていました。……結局、誤解を解く機会を得られないまま兄上はお亡くなりになってしまったわけですが」
「……嘘」
 無意識に零した声は震えていた。思わずギュッと己の身体を抱き締める。
「嘘に決まっているわ」
「……義姉上は嘘の方が良かったですか? ですが、これが兄の真実です。兄は義姉上を愛していました。それもとても深く。会う度にあなたの話を惚気られましたからね。そんなに好きならいい加減、私に言っていないで、あなたに直接伝えるべきだと何度も忠告はしましたが、兄にとってはあなたは初恋。照れくさくてどうすることもできなかったようです」
「……」
 信じられない思いでエリックを凝視した。彼は肯定するように穏やかに微笑んでいる。
 聞かされた話が衝撃的すぎて、頭がまともに働かない。
 ──夫が、私のことを愛していた?
 今まで一度も考えすらしなかった話に、ただ立ち尽くす。そんな私に、エリックはゆっくりと頭を下げた。
「──本当は、言わないでおこうかとも思ったのです。その方があなたの心の傷は浅いだろうから。ですけど、すみません。あれだけあなたを愛していた兄の気持ちを知っていて、無視したままでいることはどうしても私にはできませんでした。兄があなたを愛していたことを知って欲しい。あなたは愛されていたのだと知っていて欲しかったのです。今はもう──自分で伝えられない兄の無念を伝えたかった。……勝手で申し訳ありません」
 もう一度深々と頭を下げ、エリックは去って行った。それを何もできず、ただ見送る。
「……旦那様」
 のろのろと夫の墓に目を向けた。当たり前だが、何も返事はない。白い十字架は何も答えてはくれない。
「私は……愛されていたのですか? 本当に?」
 呆然と呟く。
 その声音は、夫が死んでから一番の絶望を孕んでいた。

◇◇◇

 雨が降っている。
 気づけば夜になっていた。覚えはなかったが、無意識に屋敷に戻っていたようだ。
 三階にある自室。その窓際に私は喪服のまま、もたれ掛かっていた。
 トークハットすら取っていない。手袋だって付けたままだ。けれども着替える気になれないのだから仕方ない。
 窓に頬を押しつける。ひやりとした温度に一瞬身体が震えるが、気にせずそのまま視線を外に向けた。
 外は真っ暗だ。雨音だけが響いている。窓には薄らと憔悴しきった私の姿が映っていた。
「……」
 無言で、手元に視線を落とす。両手で抱えていたのは、宝石がたくさんついた大きめの宝石箱だった。木箱に金属で細かな装飾が施されている。蓋を開けるとオルゴールが鳴る仕組みだ。これは結婚した時に夫からもらったもの。有名な職人の作品で、繊細な彫刻が美しい。公爵家の妻として、これくらいのものは持っておけということだろうかと有り難く受け取ったが、仕舞い込んで一度も使わなかった。何故これを今になって思い出したのか不思議だったが、確かに夫から直接もらったものなんてこれくらいしかないから、夫を想うのなら正しいと、自分の選択に納得した。
 もらってから一度も開けたことのない宝石箱を無言で開ける。
 聞いたことのない綺麗なメロディーがゆっくりと流れた。
 オルゴールの特徴的な高音が、何故か涙を誘う。
「う……ううう……旦那……様」
 宝石箱を抱えたまま、ずるずるとその場にしゃがみ込む。
 涙が溢れた。夫が死んでから、殆ど動くことのなかった感情が突如として爆発した。
「ああ……あああああ!!」
 泣くつもりはないのに止まらない。勝手に涙は次から次へと溢れ、結婚してからずっと抱え込んでいたものを解き放ってしまう。
「どうして? どうして旦那様が……!」
 涙を流しながら、ギュッと宝石箱を強く抱え込む。
 今、五日病が各地で蔓延しているのは知っていた。だけどその犠牲者が、何故夫でなければならなかったのだろう。
 言ってはいけないのかもしれないが、他の誰かではいけなかったのか。
 そしてどうして──。
「おっしゃって下さらなかったのですか」
 私を愛してくれているのなら、それをどうして。
 一言、一言でいい。言ってくれれば私は夫に近づくことを決して諦めなかったのに。
 夫のことが好きだった。
 無口だけれども真面目で誠実な夫。領民が幸せになれるよう、彼はいつだって心を配っていた。働き先のない民に働く場所を与え、子供たちが文字を学べる場所を作り、孤児院に多額の援助を行っていたことだって知っている。そんな彼のことを私はとても尊敬していたし、愛していた。だから、仲の良い夫婦になれればいいとずっと思っていたのに。
 あまりにもつれないから、私にはきっと興味がないのだと、努力することを諦めてしまった。
「馬鹿だわ……」
 どうして簡単に諦めてしまったのだろう。私がもっと頑張っていれば、夫もその本心を晒してくれていたかもしれないのに。私が諦めてしまっては、夫だって手を伸ばすことを躊躇うに決まっている。
「旦那様……」
 あり得たかもしれない未来を思い、絶望する。
 もう手に入らない未来。私には与えられない先。
 夫さえ生きていれば、『もう一度』は存在したのに。
 今、夫は冷たい土の中。手を伸ばしてもどこにも届かない。
「お慕い……しています」
 言えばよかった。私から。
 一言告げることさえできれば、訪れた別の未来もあっただろうに。
「う……うううう……」
 再び込み上げてくる吐き気のような絶望。
 屋敷の中はしんと静まりかえっている。聞こえてくるのは、雨音と私の啜り泣く声だけ。いつの間にかオルゴールも止まっていた。
 ひんやりとした床が足下から体温を奪っていく。
「旦那様」
 呼んでもその声に反応する者はいない。だって夫は死んでしまった。
 五日病の名前の通り五日苦しみ、帰らぬ人となってしまった。
「……あああ」
 夫の気持ちをエリックから聞いて、知ってしまったからだろう。感じている絶望は先ほどまでの比ではなかった。憎からず思っていた夫が私を愛していた。その取り返しのつかない事実に、胸をかきむしりたくなるほどの苦しみが際限なく襲ってくる。
 手を取り合えたのだ。そんな未来を歩めるかもしれなかったのだ。
 どちらかが少し頑張れば、それはきっとあり得たはずで、もしかしたら今も夫は私の隣で笑っていたのかもしれない。
 何かが少し変われば、未来は大きく変わった可能性があった。
 夫は病に罹ることもなく、今も私たちは幸せに暮らしていた。そんな未来もきっと──。
「どうして……どうして……」
 後悔が渦巻く。過去はやり直せない。それは分かっていたけれど、それでも思わずにはいられない。
「やり直したい……」
 そうしたら、きっと違う未来を手にするのに。
「……旦那様、愛しています」
 全身から力が抜ける。
 ──全てに疲れてしまった私は、そのまま静かに目を閉じた。

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