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紳士な魔王のプロポーズ
生贄花嫁はみだらに奪われて

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書籍紹介

愛している――俺の生きる理由は、君だ。

両親を喪い、修道院で暮らしていたセシリアは魔王ダリルに攫われてしまう。最初は怖かったけれど、彼の冷たい美貌に隠された優しさと誠実さに惹かれてゆき――。「ずっと、君を見つめ愛してきた」濡れた舌が白い肌を巧みに蹂躙し、悦楽を刻み込む。敏感な身体の奥深くに熱い飛沫を注がれ、新しい命を感じたとき、本当の幸せを知り……! 孤独な魔王と人間が起こす、愛の奇跡!

ジャンル:
西洋 | ファンタジー
キャラ属性:
クール
シチュエーション:
幼馴染・初恋の人 | 新婚 | 甘々・溺愛
登場人物紹介

ダリル

魔人の長で黒髪紅眼の美青年。セシリアを攫うが、優しく紳士的。

セシリア

子爵令嬢だったが、両親の死により修道院で過ごす。19歳のある夜、ダリルに突然攫われてしまい……!?

立ち読み

 セシリア・ヒューレットは、瑞々しいきゅうりを挟んだサンドイッチを頬張りながら、本のページをめくった。
 自分が生まれるよりも十年以上前に書かれた恋愛小説『塔の見える花園』を、十三歳のセシリアは、もう何度も、本に手垢がついてしまうほど読み返している。

【 令嬢は麗しき青年の瞳に囚われた。
  塔が見える花園は今、令嬢にとって恋の牢獄となった。 】

 ほう、と深く息をついて、ページを手繰った手を離す。顔を本から少し離すと、栗色の波打つ長い髪が眼の横で揺れた。
 子爵家の一人娘として、部屋にこもって物を食べながら読書など、行儀が悪いといわれても仕方ない。
 かつては乳母に散々注意されたが、父に付き添って他家に行っても、同年代の子女と馴染めなかったセシリアは、こうして一人でお茶をする方が気が楽だった。
 乳母も、なんだかんだでセシリアに甘く、「成人なさるまでですよ」と条件付きで見逃してくれるようになった。ヒューレット家当主の父も「いつまでも分別がつかないわけではないだろう」と、叱ることはなかった。
 乳母もメイドも、読書中は部屋に入ってこない。お茶とサンドイッチを置いて、時間がくるまでセシリアは物語に没頭できる。
 今日は、花を使ったハーブティーだった。一口含むと、ほどよい酸味が静かな興奮で渇き切った口の中を潤してくれた。

【 差し伸べられた手をとるか、令嬢は悩んだ。
  だが、拒む勇気が出ないでいると、黒い髪の青年はそっと令嬢の手を掴んだ。
  ひんやりと冷たい手だった。 
  ふと、青年の唇も、髪も、同じく冷たいのではないかと思った。
  令嬢は、カッと身体が熱く沸いたのを感じて、恥じ入った。 】

 美しい青年の体温が低く描かれている場面に、セシリアはいつも心を奪われる。
 黒髪に涼しげな目元。汗一つかかず、ぎらついていない。物語の中だけの貴公子。
 そんな男性に求められたら。この物語に登場する令嬢に自分を重ねながら、セシリアは何度目かわからないため息をついた。
 だが、夢から覚めるべき時間は迫っている。セシリアも年頃になった。
 このエルバウェイ公国では、貴族階級の女性は十五、六で成人となる。適齢期まではまだ余裕があるが、本格的な花嫁修業が始まるため、実質自由にできる時間はなくなるといってよい。
 成人するのは、早くて二年後。これをまだ二年あると考えるか、もう二年しかないと考えるか。
 セシリア自身は、後者だった。
 早い子であれば、成人よりも早く婚約が決定している。だが父は、今まで一度も縁談の話をしたことがない。成人してからだろうと、周りも、セシリア自身も思っている。
 それでも、恋愛結婚はできないとわかっていた。
 子爵家であれば、同等の爵位にある他家の子息になるだろう。
 セシリアは一人娘だ。母は三歳の頃に病死しており、父も再婚はしなかった。愛人がいる様子もない。父の弟である叔父は、すでにヒューレット家から離れて、近くの修道院の院長を務めている。
 このヒューレット家を継ぐためには、婿養子を迎える必要があった。そうなると、相手は次男か三男になるだろう。あるいはヒューレット家よりも格上の家に嫁ぎ、縁戚となってセシリアが産む男児に継がせるか。
 ともあれ、セシリアに選択の余地はない。
 せいぜい、同じ条件の縁談があれば、父なら選ばせてくれるかもしれないという程度だ。だが、子爵家に断れるほど縁談が持ち込まれることは稀だ。
(恋は物語の中だけね)
 だからこそ、夢中になるのかもしれない。
 歳を重ねるごとに、ときめきは苦しいものに変わっていった。
 この『塔の見える花園』は、母の愛読書だったという。十歳になった日、父が「お前のお母様が愛した物語だ。この物語が読めるだけの教養を身につけなさい」と、形見として渡してくれた。
 セシリアは、すぐに読めるようになった。読破した時は嬉しくて楽しくて、眠れずに夜を明かしてしまったほどだ。好きすぎて、文字を書き写したほどだ。手本を忠実に真似たおかげで、綺麗な文字が書けるようになった。
 何度も何度も繰り返して読んで、物語が読めるだけでなく、理解をした。
 世の中にはこんなに素敵な恋がある。この身がどうなっても構わないと思えるほどの、情熱的で素敵な恋。憧れずにはいられない。母もきっと夢中になったに違いない。
 父と結婚した時、母はどう思ったのだろう。二人は政略的な結婚だった。
 だが母は、父を愛していたに違いない。父もまた同じく。でなければ貴族である父が再婚もせず、愛人も迎えずに十年も過ごすはずがない。
 せめて、父と母のような夫婦になりたい。情熱的な恋でなかったとしても、相手を尊敬し、ともに過ごすことができる人との縁が欲しい。それぐらいは、望んでも罰が当たらないはずだ。
(でも……政略結婚だとしても、恋ができる相手だったらいいな)
 自分だけを見つめて、愛してくれる夫にして恋人。そうなれば最高だ。
 成人が近づくにつれて、今まで完全に物語だけに浸っていられたセシリアは、変えられない未来に対し、ほんの僅かな願望を託した想像に逃避するようになった。
 ふ、と、視界が滲んだ時だった。
「お嬢様、セシリアお嬢様」
 コンコンと、ドアを叩く音とともに名前を呼ばれた。乳母の声だ。
「あまり夢中になると、眼が悪くなりますわ。そろそろおやめあそばして」
「う、うん。いいわ、入ってきて」
 慌てて手の甲で、流れそうになった涙を拭った。ドアを開けて、白髪混じりの髪を結い上げた乳母がしずしずと入ってきた。
「まぁ、お茶が冷めていますわね。これだけでも淹れ直しましょうか」
「ううん、充分よ。飲みきれなかったけど、ハーブティー、とても美味しかったわ」
「ようございました。お亡くなりになった奥様も、よく飲んでいらっしゃいましたから。好みがそっくりですわね」
 乳母は、セシリアが生まれてすぐにヒューレット家に雇われた。我が子は実家に預けて、住み込みで働きに来ているため、セシリアは乳兄弟と滅多に会ったことがない。
 恐らく乳母は、実子よりもセシリアと接する時間の方が長いに違いない。
 母を喪ったセシリアにとっては、まさに母代わりの人であるが、乳兄弟への申し訳なさもあって堂々と甘えることはできなかった。
 乳母もその気持ちを理解してくれているのか、亡くなった母の話をよく聞かせてくれる。おかげでセシリアの寂しさは、そこまで深いものにならずに済んでいる。
「お父様はまだお戻りにならないの?」
 本を棚へ戻しながら、茶器と皿を片付けている乳母に訊ねた。
 父は仕事で、昨日の朝に都へ赴いた。簡単な用向きのため、早ければ今日の昼には戻るといっていたが、窓の外の陽が傾いても馬車の音は聞こえなかった。
「ええ、きっと思ったよりお仕事が難航しているのでしょう。これまでもそういうことはよくありましたでしょう」
「うん……そうね」
 父は勤勉で、真面目だ。他家との交流をないがしろにすることはないが、遊興に耽るのを良しとせず、また不正を許さない。
 たまたま赴いた同格の貴族の家で、父は堅苦しくて融通が利かないと噂されているのを、セシリアは柱の陰で聞いてしまったことがある。
 だが、セシリアにとって父は誇りだ。堅物だといわれ、口数は少なくとも、娘の自分への心配りは忘れない。
『塔の見える花園』を読み終えた時も「これだけ読めれば立派なものだ」と褒めてくれた。
 仕事で家を空けることが多くても、それは与えられた役目を果たしているからだと、セシリアも理解している。
 ただ、時々だが──父が、何かを堪えているような、苦渋に満ちた表情を浮かべていることがあった。そして食事中などにふと父を見ると、どこか悲しみを滲ませた眼でこちらを見ていたこともある。どうしたのかと問うと、決まって父は「何でもない」と、それ以上は答えてはくれなかった。
 その頻度が、この頃は高くなった気がする。
 血の繋がった娘だからこそわかるのかもしれない。周りの使用人達はもちろん、乳母もその変化に気づいた様子はなかった。
「遅くとも、明日にはお帰りになりますわ。いつものように、たくさんお土産を買って戻って参りますから」
 乳母は父を信頼している。セシリアだってそうだ。仕事で都へ行く時、父は必ずといっていいほど、土産を買ってくる。
 まるで普段、あまり構ってやれないことへの穴埋めのようだった。ドレスやお菓子だけでなく、新しい本も与えてくれる。セシリアにとって一番嬉しいのはもちろん本だ。
(そうよ。きっと本屋でどれを買うか悩んでおいでなのよ)
 だが、なぜか不安はつきまとう。今日に限って、乳母の言葉は右の耳から左の耳へと通り抜けていってしまうようだった。
 カタン、と、物音がした。窓の向こうからだった。
(お父様?)
 セシリアは、何かが動く気配を感じてとっさに窓の外を見たが、風の音だったようだ。遠くの木が揺れていた。気のせいか、と、ため息をついてセシリアは俯いた。

 父が帰宅途中で事故に遭い、すぐに息を引き取ったという連絡が届いたのは、月も高く昇った深夜だった。

***

『この娘は、魔に魅入られる。
 人に嫁がせれば、婚家にこの上ない禍いを齎す。
 家に残してもやがて断絶の憂き目を見るであろう。
 この子はおよそ二十歳まで、神のもとに託すがよい。
 すべては運命である。抗うなかれ』

 信じがたい内容だった。セシリアは、生まれたばかりだった頃の自分に、このような予言がされていたことを、急死した父が密かに作っていた遺言状で知った。
 エルバウェイ公国では、貴族の家に子が生まれれば、占術師がその子の行く末について吉凶を占う。
 しかし今日では儀礼化されており、家がますます栄える、容姿に恵まれる、学問で大成するなど、占いの結果で縁起のよい事柄のみを述べるに留まり、貴族は占術師に多額の謝礼を支払う。もはや一種の商慣習だ。
 だが、セシリアの時は違った。父が呼んだのは、その筋ではよく的中すると有名で、決して謝礼の額で結果を左右するような詐欺は行わない、実に真っ当な占術師だった。
 遺言状には『この占術師は嘘を決していわない。私は何度も確かめた。どうして私達の娘が、こんな不幸な運命を辿らなくてはならないのか』と、父の苦しみと怒り、そして悲しみが、やや乱れた文字で綴られていた。
 この結果を正直に伝えた占術師も、あまりの不幸に滂沱の涙を流したという。それで父は、この運命は紛れもなく本物なのだと悟ったらしい。

『これまで与えられた役割を全うしてきた私は、初めて抗うことを決意した。
 二十歳まで育てきれば、きっとこの子の運命は変わる。
 私はそう信じてきた……』

 父がこの遺言状を作成したのは、母が死んだ年のことだ。葬儀で、父の忠実な従者だった男が話してくれた。
 母もまた、父に従って運命を変えようとしてくれていたが、病魔には勝てなかった。
 妻が死んだのは娘を手放さなかったからかと、父の苦悩も綴られていた。

『愛している。私達のセシリア。
 この遺言状をお前が読んでいるということは、運命に抗えなかったということだ。
 だが私には、たった一人の愛しい娘を手放すことはできなかった。
 父と母は魂だけとなっても、
 お前の行く末に祝福があることを願わずにはいられない』

 託された遺言状は、そう締めくくられていた。
「……お父様、お父様ぁ……!」
 遺言状を読み終えた後、セシリアは一晩中泣き続けた。
 本を読まなかった日は、十歳から数えてその日が初めてとなった。

***

 葬儀はあっという間に終わった。聖職者である叔父が、セシリアに代わって一切を仕切ってくれた。
「セシリア、生前に兄上からお前のことを頼まれていたのだ。よく聞け」
 葬儀が終わると、喪服をまとったセシリアに叔父が告げた。
 叔父はでっぷりと肥えていて、丸い顔の全体からじわじわ汗が滲んで常にハンカチを手放せない男だった。スマートな体型でハンサムだった父と実の兄弟だが、あまり似ていない。
「まず、お前は他家に嫁がせられない。占いの結果は、いくら口止めをしても知っている者は知っている。お前の父の手前、箝口を拒まなかっただけだ。だから兄上からは、自分が死んだら私の運営する修道院に入れろといわれていた」
「……私はシスターになるのですか?」
 叔父と向き合って、セシリアは嗄れた声を絞り出して訊ねた。叔父が運営するのは女子修道院だった。
 異性の修道院長は稀なケースだが、ヒューレット家が経営を支援した縁で、先代の院長が亡くなった際、特別に公爵家の許可も得て就任した経緯がある。
「まぁ、そうなる。二十歳までは、ということだが、こうなった以上は正式に出家をした方がいいだろう。適齢期を過ぎてお前をもらってくれる子息はいまい」
「……っ」
 ずきっと、胸の奥が痛んだ。
 出家をするということは、神に嫁ぐも同義だ。還俗しない限り、結婚はできない。もちろん恋も禁じられている。
 それどころか、院長である叔父を除けば、異性と対面することも憚られる。
 政略結婚といえどもせめて、尊敬できる人と夫婦になりたかった。そんな淡い夢すら、打ち砕かれてしまった。
「セシリアよ。あんな予言が下り、なおかつ両親のいないお前を娶ろうとするような男に碌なやつはいない。私のもとで静かに世俗を忘れて暮らす方が絶対にいい。先輩のシスター達は皆、心根の優しい者ばかりだ」
 叔父が、汗を拭きながら猫なで声で語る。どうあっても、セシリアを他家へ縁づかせるつもりはないらしい。優しく甘く、しかしじわじわと追い詰めるような言葉だった。決して、有無をいわせない。
「……わかりました」
 セシリアは頷いた。叔父がぱあっと喜色を浮かべ笑った。
「そうか! よし、よし。では早速今から来るといい。なぁに、荷物は全部置いていけ。こっちで服も家具も用意する。それが親代わりというものだ」
「えっ、でも……せめて本だけでも。お母様の形見なんです!」
「本? ああ、お前の母親は読書家だったな。だが、あんな世俗的な読み物は出家するお前には必要ない。修道院にも蔵書はある。それをたーんと読むといい」
 そんな、とセシリアは声をあげようとしたが、叔父は喜色を一瞬で引っ込めて、顔と同じく丸い目玉でぎょろりと睨んできた。
「セシリア。お前はもう大人になるんだ。いつまでも甘えていてはだめだ」
 抗うなかれ。
 父の遺言状に書かれた予言の一節が脳裏をよぎった。

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