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愛の試練を乗り越えて最強ラブラブ夫婦になりますっ!

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書籍紹介

俺様帝国皇太子×ピュア公女
二人の絆が試される!?

帝国皇太子ベルンハルトに求婚された公女フィオナ。嬉しいけれど結婚する前に二人の絆を示せだなんて!? 突然の試練に戸惑うものの、彼に抱きしめられ、一途な愛をぶつけられればもう怖くない――。「おまえのすべては俺のものだ」重なり合う唇から伝わる熱。執拗な愛撫が与える深い愉悦に、身体の最奥から蕩けて。募る愛しさを素直に伝えたら、最高の大団円が待っていて……!

ジャンル:
西洋 | ファンタジー
キャラ属性:
王子・王族・貴族
シチュエーション:
幼馴染・初恋の人 | 甘々・溺愛
登場人物紹介

ベルンハルト

フロートブルグ帝国皇太子。トナツィア留学中にフィオナに出会い、立太子されるとすぐに求婚した。

フィオナ

小国トナツィアの公女。身体の弱い姉のことばかり気に掛けて生きてきたが、留学してきたベルンハルトと仲良くなり……。

立ち読み

 今日もフィオナは、まだ夜の気配が色濃く残るうちに目が覚めた。夜着のまま寝室を出て、姉のリアナの部屋に向かう。
 雪解け水がいよいよ山あいを流れだす季節で、早朝ともなれば吐く息は白い。
 陽の光を束ねたようなまばゆい金色の髪が、さらさらと揺れる。透きとおった琥珀色の瞳は聡明さを宿し、起き抜けでも溌剌とした輝きを放った。
「おはよう、姉さま。今日は元気だった? 早く春にならないかしら。こんな山の上に城を建てたご先祖様が、恨めしいわ」
「おはよう、フィー。大丈夫、調子は良かったわよ。毎日たしかめなくてもいいのに、心配性なんだから。それより、見てみて」
 リアナの肌は生まれつき光に敏感で、特に太陽光に弱い。浴びると湿疹ができるため、リアナは昼夜逆転の生活をしているのだ。その肌を朝一番に確認するのが、フィオナの習慣である。
 しかし、今日は挨拶もそこそこに窓際へ手招きされた。フード付きのローブで肌をすっぽりと覆い隠す姉に並び、フィオナはわずかに開いた窓から中庭を見おろす。そこでは、ひとりの青年が剣術の鍛錬をしていた。
「どなたかしら? フィーは知ってる?」
 青年はシャツとズボンという軽装だ。肘までまくりあげたシャツの袖から、引き締まった腕が覗く。栗色とおぼしき髪は襟足で短く揃えられ、こざっぱりとした印象である。
「いいえ、覚えがないわ」
「こんな場所で鍛錬をなさるだなんて、おかしな方」
 剣先が閃くさまはうつくしく、空気を裂く音も小気味良い。しなやかな腕から繰りだされる動作は大胆かつ無駄のないもので、ついじっと見入ってしまう。
「お強そう。姉さまもそう思わない?」
 山に囲まれたトナツィア公国は、武力を持たない中立国である。城に仕える者は護衛のために帯剣するが、彼らの鍛錬場は中庭ではない。いったい誰だろう。
「新しい護衛の方かしら。でもそれにしては雰囲気に華があるわね。あら、見て。鳥だわ」
 姉の指す場所を注意して見れば、たしかに朽葉の色をした鳥が青年の動きのあいだを縫うようにして飛んでいる。鷹だ。鷹は青年の右手首あたりを狙っているらしい。青年の剣をかわしながら、ためらいなく突っこんでくる。
「だめ! 傷つけないで!」
 こちらを見上げた青年と目が合う。ほとんど同時に鷹が斬りつけられ、芝生の上に墜落した。青年が視線を外して鷹に近づく。
 フィオナは姉と顔を見合わせると、行ってくる、と中庭へ駆けだした。


 剣を振るっていた青年は、昇りかけた朝日を背にしてベルンハルトと名乗った。
「驚いた。こんな朝早くに、それも姫君に見られていたとは思わなかった。で、どちらの姫だ? 第一公女で十六歳のリアナ姫か、はたまた第二公女で十四歳のフィオナ姫か」
「フィオナと申します。……でもどうして、姫だと思われたのですか?」
「ここはディアード城で、目の前の少女は立ち居振る舞いに品がある。とくれば、カルフレン公の掌中の珠とも深窓の姫君とも言われる、公女殿下よりほかにいないだろう?」
 ディアード城は、トナツィア公国の君主カルフレン公爵の居城である。ベルンハルトの弁になるほどとうなずきつつ、フィオナは姉付きの侍女に持ってこさせた包帯をみずから翼の付け根に巻く。ところがいくらもしないうちに、フィオナは奇妙に思い手を止めた。
 見間違いでなければ……広げた翼の付け根に走った傷が、じわじわと塞がっていっている。
 ひっ、と後ずされば、鷹はなにごともなかったようにベルンハルトの肩に止まった。
 鷹の双眸がなにも言うなとばかりにフィオナをにらむ。フィオナが口をつきかけた疑問を飲みこむと、ベルンハルトがへえ、という風に目を細めた。
 白み始めた空の下でよく見れば、その瞳は鷹とおなじ珍しい紺碧の色をしている。フィオナは少し迷ってから、代わりに別の疑問をぶつける。
「……ベルンハルト様は、フロートブルク帝国の皇子殿下ではないですか? 殿下はお怪我はありませんでしたか?」
 フィオナはあらためてベルンハルトに目を走らせた。
 堂々とした立ち姿に、精悍な顔立ち。細身のわりに骨格はがっしりとして、フィオナより頭ひとつ分は背が高い。彫りが深く、鼻梁はすっきりとととのっている。切れ長の目は自信に満ち、眉は凜々しい。無駄なくついた筋肉は、しなやかながら強靱そうだ。 
 そして公女であるフィオナにもへりくだらず、ひとの上に立つ者特有の風格がある。
 さらにフィオナは父親から、十九歳になる帝国の第一皇子の留学を受け入れる予定だ、と聞いてもいた。
「これはなかなか……聡明な姫君だな。ああ、怪我はない」
 ベルンハルトは昨晩遅くに着いたという。父への謁見もその際に済ませたらしい。そのとき、フィオナはベルンハルトの顎下の血に気づいた。怪我がないなら鷹のものだろうか、とフィオナはつま先立ち袖口で血を拭う。
 ところが、ベルンハルトのぎょっとしたような視線に気づき、フィオナは慌てて手を離した。
「このような格好で、申し訳ございません……! 血がついてらしたので」
 急いで駆けつけたので、夜着一枚の心許ない姿である。せめてショールを羽織ってくれば良かった。
「服を汚してすまない。いや、助かった。聡い姫君は、優しくもあるのだな」
 ベルンハルトは喉の奥で笑うと、鷹に手で合図を送る。鷹が二、三度、翼をばたつかせれば、フィオナが巻いた包帯がほどけた。
 ところが、さっきはたしかにあった傷口が見当たらない。フィオナがあっけにとられるあいだに、鷹は悠然と飛び去った。
「では、その聡明さと優しさを見こんでフィオナ姫に頼みがある。今の一件は、秘密にしておいてくれ」
「え? ……わかりました。そのようにいたします」
 フィオナはベルンハルトの視線に気圧され、おずおずと首を縦に振った。一大帝国であるフロートブルクの第一皇子からの頼みを、小国の公女が断れるはずもない。
 すると、ベルンハルトが朝露に膝が濡れるのにも構わず、フィオナの前にひざまずいた。尊大な態度から打って変わって、恭しく右手を差しだす。
「俺のことはベルンと呼べばいい。しばらくトナツィアに滞在する」
 大きな手に、フィオナもそっと左手を乗せる。骨ばった手は力強く、そしてフィオナより熱い。
「私は、……お好きなようにお呼びください。家族はフィーと呼びます」
「家族とおなじではつまらないな。それにフィオナ、のほうが好みだ。響きがいい」
 フィオナをまっすぐに射貫くまなざし。口の端を上げる笑みが不遜に見えるのに綺麗で、フィオナは思わずぼうっと見惚れる。
「よろしく頼むな、フィオナ」
 ベルンハルトが口にする「フィオナ」の響きが、深くお腹の底にまで染みこんでくる。
 その呼び声をフィオナは、いいな、と思った。とても。
 心がふわふわする。
「よろしくお願いします」
 大国の皇子をいきなり愛称で呼ぶのは恐れ多くて、フィオナは心のなかでだけ「ベルン」と言い添える。その名前は、フィオナには特別なものに聞こえた。
 手の甲に、ゆっくりとベルンハルトの唇が寄せられる。
 その瞬間から、それまで城でひっそりと暮らしていたフィオナの毎日は、きらきらと光り輝くものに変わった。

    *

 ベルンハルトは偉ぶったところはあるものの、かといって横柄ではなく、いたって気さくな青年だった。フィオナが物怖じしない性格だったのもあり、ふたりが打ち解けるのは早かった。
 ベルンハルトは流暢にトナツィア語を話したが、フィオナは帝国語を耳にするのも初めてだった。だからフィオナはベルンハルトの勉学の合間を縫って、直接本人から帝国語を習った。そのおかげもあるかもしれない。
 出会って一年が過ぎた今では、ふたりは幼馴染みと間違われるときもあるほど、親しくなっていた。
 この日もフィオナは、ベルンハルトを探して庭を突っ切り、白い漆喰の壁がうつくしい離れの重い扉を押しあけた。
「ベルン、いる?」
 初対面のときの緊張はどこへやら、今やフィオナもベルンハルトを愛称で呼ぶ。だが、ここでは大声は禁物だ。
 離れは上から見ると鍵穴の形をした二階建ての建物で、その全体が書庫である。開架棚のある一、二階と別に地下にも書庫を備え、読書の好きなリアナも夜中に足繁く通う場所だ。
 フィオナは桜色のドレスが衣ずれの音を立てないよう、静かに足を踏み入れる。
「ベルン」
 広い書庫内はひっそりとしているが、ちらほらとひとの姿も見える。指示を受けて書物を取りにきた使用人や、調べ物をする文官たちだ。彼らはフィオナと目が合うと、心得た顔で奥の書架を指し、敬礼して出ていく。
 ここでうたた寝をする客人と、その客人を探しにくる第二公女の姿は、彼らにもすっかりなじみの光景であった。
「……ベルン」
 ベルンハルトは、書架にかけた木製の梯子の段に腰を下ろしていた。手すりに背を預け、長い脚を下の段に投げだしている。
 起こそうか少し迷い、フィオナも梯子の下から二段めに腰かけた。行儀は悪いが、人目はないので気にしない。
 肩に提げた若草色の布鞄を広げる。布鞄の裏は、画板になった面と紙を綴じた面に分かれており、外でスケッチをするのに重宝しているのだ。
 木炭筆をとり、フィオナは斜め下から見たベルンハルトを写しとっていく。少し無防備な、やわらいだ顔。
「フィオナ?」
 かすれ気味の声が頭上から届き、フィオナは慌てて布鞄を閉じた。ベルンハルトを描いていたと知られたら、見せろと言われるに違いない。それは大いに困る。
「ベルン! 起きた? 探してたのよ。会議じゃなかったの?」
「とっくに終わった。頭の固いお偉方とやり合うのは疲れるな。あいつら、文句だけは一人前だが、文句を言うなら代案を用意しておけよな。落としどころを用意してやったから、今ごろ意見が通ったと思って気分良く休憩してるだろうが」
 はたから見れば若造の生意気な発言だが、フィオナは笑って立ちあがる。ベルンハルトはその明晰さで、父親の臣下に一目置かれているのだ。
「フィオナの父君は、お人好しだな。周りにいいように使われそうで、口出しせずにはいられなくてな。……ところで、今日はどこに行きたいんだ?」
「エーデルシュタインの丘に。タンポポやシロツメクサが咲くころだと思うの」
 花を摘み姉に見せるのも、フィオナの習慣のひとつである。
 ほとんど城から出ず、公務の経験もない姉のために、フィオナは花以外にもさまざまなものを持ち帰った。
 四つ葉のクローバーや小川で見つけた綺麗な形の石、濡れたような光沢を持つ鳥の羽根。街の娘たちがこぞって買い求めるという、レースのリボンや鼈甲の髪飾り。手のひらよりも小さなからくり箱など。ひとつひとつはささいなものだ。屋台で、肉汁の滴る串焼きや揚げ菓子を求めたときもある。
 姉に陽の下にあるものを見せたい一心だった。絵を描き始めたのもおなじ理由である。
 両親は、国内外から選りすぐりの医師を呼び寄せた。何人もの医師が治療に訪れたが改善の兆しはなく、姉が疲弊していくのを、フィオナは近くで見ていた。
 症状が体質によるものだと知れてからは、両親はその症状を少しでも軽くするために、効くと耳にした薬を片っ端から集めた。民間療法にも耳を傾け、ありとあらゆる方法を試した。城内の見事な薬草園も、大陸随一の蔵書を誇る書庫も、その表れである。
 両親の関心はリアナに向けられたが、かといってフィオナが放って置かれたわけではない。気弱な父としっかり者の母、ふたりの愛情のおかげで、フィオナは素直な気性に育っていた。
 自分も家族の一員として姉を守るという気概から、少々勝ち気なところはあったが。
「行ってくれる?」
 梯子を降り、手にしていた本を書棚に戻すベルンハルトについて歩きながら、フィオナはそっと横顔をうかがう。当然だ、という表情が返ってきた。
「姉君思いのフィオナの頼みだからな。姉君が抱えきれないくらい摘んでやるか」
「ありがとう、ベルン!」
 フィオナはベルンハルトに駆け寄り、伸びあがって首に腕を回す。あっけにとられたベルンハルトに気づくまもなく腕を放し、厩舎に向かう。
「あまり時間がないわ、行きましょ!」
 返ってきたベルンハルトの笑いは、呆れがまじりつつもやわらかくて。フィオナもとびきりの笑みを返した。


「──それでね、最初は花冠にするつもりだったけど、やめてくれって言われたから、腕輪にしたの。でもベルンの手を通らなくて! ベルンったら手がとっても大きいのよ。骨がごつごつして、お父さまの手より大きいかもしれないわ」
 就寝間際にリアナの部屋を訪ねるのも、フィオナの日課だ。
 その日にあった出来事を話しながら、フィオナは用意された花瓶にシロツメクサとタンポポを生ける。およそ城を飾る華やかな花ではないけれど、姉はフィオナが摘んだ花を飾るのを、いつも喜んでくれる。
「ベルンに作るなら、花がたくさん要るんだって学んだわ」
 リアナが寝台の上で身体を起こして笑い、フィオナはその横に潜りこんだ。リアナの部屋はカーテンが閉めきられ、燭台の火も一灯しか点いていないので薄暗い。
「最後はちゃんとお渡しできた?」
「ええ! 戻りが遅くなって、お父さまに泣かれたけど……お父さまはすぐ泣くんだもの」
「お父さまは、過保護だものね」
 夕食の席でも、ベルンは左手にその腕輪をはめたままだったとフィオナがつけ加えると、リアナがまたくすりと笑う。
「殿下はきっと、今も腕輪をはめたままね」
「それはないんじゃないかしら? ベルンだって湯浴みも終えただろうし」
「じゃ、賭ける? 私はまだはめておられると思うわ。私が勝ったら、フィーの絵を見せてくれる?」
「じゃあ私は外したほうね! 私が勝ったら、姉さまのお話を聞きたいわ。……でも、どうやってたしかめる?」
 フィオナはリアナと顔を見合わせる。どちらからともなく、忍び笑いが漏れた。
「……そうね、夜だったわ。つい自分に当てはめて考えてしまったわ」
「でも、ベルンもまだ寝ていないでしょう? ちらっと見てすぐに戻るわ。大丈夫、慎みのない行動はいたしません」
 ベルンハルトは客間のひとつを与えられている。フィオナは足音を忍ばせてベルンハルトの部屋の前までくると、ほんのわずか扉を開けて中をうかがった。
 ベルンハルトはひとり掛け用のソファで読書をしていた。その手首には、フィオナがあげたシロツメクサの腕輪。
 頁をめくるたびに、ベルンハルトは腕輪を見つめてくつくつと笑う。その目はなんともいえず優しげで……フィオナの胸の奥が、むず痒くなった。
 見てはいけないものを見た気がしてしまい、そそくさと引き返す。
「姉さまの言ったとおりだったわ」
 天蓋の幕を開けると、リアナが「ほらね」と穏やかに笑って場所を空ける。
「あんなに嬉しそうにしてくれるなんて……もっと丁寧に作れば良かった」
「フィー、頬が熱いのではない?」
 どきっとして、フィオナは頬を触る。言われてみれば、いつもより熱いかもしれない。隣に腰を下ろしながら、フィオナは今になって胸がとくとくと鳴るのを持て余す。リアナが意味ありげにくすりと笑った。
「賭けは私の勝ちだけど、特別に今日はこの寝台で寝るのを許してあげる。フィーの絵もあとで見せてね。今は殿下の出身国、フロートブルク帝国のお話をしてあげる。子ども向けの本を見つけたの」
 昼夜が逆転した生活をするリアナは、本来ならこれからが活動時間だ。しかし今夜はフィオナにつき合ってくれるらしい。
「フロートブルク帝国が海洋国家なのは、知っているでしょう? トナツィアの二十倍もの国土を誇る国ね。でも謎の多い国でもある……ヴェーレン海の海流は複雑で、たどり着くのも難しいから。帝国は神獣によって守護されていて、神獣が海流を操るのですって」
「神獣……?」
 ベルンハルトは自国の話をしたがらないので、リアナの話は新鮮である。しかし、神獣の守護と聞いても、フィオナにはいまいちピンとこない。
「神獣は皇帝とその家族を守っていて、外敵も内乱もないから皆が安心して暮らせる。だから別名を『栄華の国』と言うのですって」
「あっ……」
 フィオナはふと、ベルンハルトとの初対面のときを思い出した。あのとき一緒にいた鷹は、傷口の治りが異常に速かった。そしてそのことを秘密にしてくれ、とベルンハルトに言われたのだ。もしかして、あの治癒力も神獣の加護を得たからかもしれない。
「どうしたの? フィー」
「あ、ううん。なんでもないわ。それで?」
「その加護を得るために、皇帝となる者は、即位する前に神獣と契約の儀式をするのですって。その辺りはほとんど書かれていなかったけれど……伴侶と決めた相手とふたりでその儀式にのぞむそうよ」
 おとぎ話みたいで想像がつかない。けれど、フィオナにはベルンハルトが急に遠いひとに思えた。
 フィオナ自身は、一生をトナツィアで過ごすつもりだ。姉の代わりに女公として立つ覚悟もしている。ベルンハルトとは生きる場所が違った。
 唐突に胸にかすかな痛みが走って、フィオナはあれ? と胸を押さえる。
「いつかは、殿下もその儀式にのぞむのかもしれないわね。生まれの順は帝位の継承に無関係だそうだし、弟君もいらっしゃるそうだから、殿下が帝位を継ぐかはわからないけれど。……寂しい?」
「寂しいけれど、……ベルンなら良い皇帝になると思うわ」
 心がすっと重くなる。ついさっきまで、むず痒くもくすぐったい気分だったのに。
 胸の奥がざわついて、フィオナは眉を曇らせた。

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