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ティアラ文庫溺愛アンソロジー④ 愛欲覚醒

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書籍紹介

抱かれるほどに、もっともっと欲しくなる。
最上の濡れ甘ラブ6編!

好きな人に触れられて、秘めた官能が花開く。情熱的な囁き、甘い口づけ、劣情を刺激する巧みな愛撫。悦楽に震えながら、もっと欲しいと願ってしまう。身も心もすべて、あなたに溺れてゆく――。

無垢な身体が快楽に染め上げられる、
絶品ラブ&エロスなアンソロジー!!

(掲載順)

『薔薇色のプロポーズ』沢城利穂
『大正軍人緊縛恋獄』せらひなこ
『怜悧な薬師の悩ましき獣性』蘇我空木
『愛は密室で育むモノ!?』永谷圓さくら
『悪魔伯爵と無垢な乙女の淫らな求婚事情』なつきしずる
『私が誓ったことのすべて』桜しんり

登場人物紹介

レイモンド

陶器メーカーを経営する実業家で男爵位を持つ。家督を失ったジュリアの後見人となる。

北条院雪矢(ほうじょういんゆきや)

端整な海軍省のエリート軍人。元使用人の櫻子を娶り溺愛するが、そのやり方は加虐的で……。

来儀(らいぎ)

高名な薬師。皇子の学友でもある。無愛想でぶっきらぼうだが、使用人として働く凜風には優しい。

ライモンド

強靱な体躯を持つ、赤い髪の国王。豪放磊落な性格で笑顔が眩しい。

ロイ

冷酷そうに見えるほどの美貌で『悪魔伯爵』と恐れられる青年。ミリアの想い人。

アルベルト

アルタウス公国の次期領主で、エミーリアの幼なじみ。昔は泣き虫だったのに凜々しく成長して――。

立ち読み

「それではこちらでしばらくお待ちください」
 退室した執事を見送り、ジュリアはウェイティングルームを改めて確認する。
 決して広くはないが来客を歓迎するに充分な室内は居心地がよく、調度品はどれも美しいのに控えめで、このマナーハウスの主の趣味の良さが窺えた。
(あまり派手な方ではないようね……)
 これから面会する人物が自らの栄華を誇示するような人間ではなさそうで、ジュリアはホッと胸を撫で下ろして用意された紅茶に口をつける。
「美味しい……」
 久しぶりに薫り高い紅茶を口にして心が解れたジュリアは、今日までの目まぐるしい出来事を思い返す。
 ジュリアは由緒あるドルーマー伯爵家の一人娘として、優しい両親の許で今まで何不自由なく暮らしていた。
 このまま平穏な日々を送り、父が決めた結婚をして、母のように友人を招いてお茶会をしたり芸術家の卵の援助をしたりするのだとぼんやり思い描いていた。
 しかし先進的な父は今の生活では満足せず、これからの貴族は領地を治めているだけでは成り立たないと貿易事業に携わり、二ヶ月前に母を伴ってインドへ旅立った。
 旅行を兼ねた航海は順調で、インドでの素晴らしい体験が綴られた手紙を受け取り、ジュリアも安心して両親の帰りを待っていたが、帰国予定日を過ぎても両親は一向に帰ってこなかった。
 嫌な予感がしつつもそれを否定して、努めて明るく振る舞いながら両親が帰ってくる日を心待ちにしていた。
 そんなジュリアの許に簡素な手紙が届いたのは、つい先日のことだった。
 両親の乗った船が嵐に遭い、沈没したという手紙を読んだ瞬間、ジュリアはあまりのショックで倒れてしまった。
 しかし兄弟のいないジュリアはそのまま寝込むこともできずに、両親の葬儀を執り行わなければならなかった。
 とはいっても両親からは蝶よ花よと甘やかされて育てられてきた為、周囲が言うまま動いていただけで、たいしたことはなにひとつしていない。
 しかも葬儀が終わった直後に父が多額の借金を負っていたことが判明し、長年住み慣れたロンドンの屋敷を手放さなければいけなかった。
 今までお金の心配などせず暮らしていたのに、父が保有していた貴族の称号も剥奪され、ジュリアはたった一夜にして平民になったのだ。
 しかしながら貴族の生活しか知らないジュリアには、それがどういう意味を持つのかいまひとつわかっていなかった。
 もちろんこれからはたった一人で生きていかなければならないのはわかっているが、両親の死から感覚が麻痺しているせいで自らの今後を憂う余裕もないのが現状で、管財人に言われるまま動いているだけだ。
 今日ここへ来たのも言われた通りにしただけで、自らの意志ではない。
 管財人からは、ここの主がジュリアの後見人となり、今後の生活の面倒を見てくれると聞かされただけだった。
(いったいどんな方なのかしら……?)
 広大なウィンダミア湖を一望できるマナーハウスは外観からして美しい屋敷で、庭に咲く薔薇との調和が素晴らしかった。
 室内も心から寛げる落ち着いた雰囲気なので、父と同年代くらいの貴族かもしれない。
(とにかく心からの感謝を伝えないと)
 一人で生きる術もない自分を引き取ってくれるだけでもありがたいので、心を尽くして感謝を伝えようと改めて思った時だった。
 正面の扉が開く音がしたのでジュリアは居住まいを正し、入ってきた人物へ視線を向け精一杯の笑みを浮かべようとしたのだが──。
(え……?)
 入室した男性と目が合ったところでジュリアは笑顔を作るのも忘れて息をのんだ。
 なぜならそこに立つ人物は想像していたよりもずっと若く、端整な顔立ちの青年だったからだ。
 年の頃は二十代後半といったところだろうか。後ろへ撫でつけた明るいブラウンの髪はサラサラで、濡れたように輝くグリーンの瞳はとても穏やかに微笑んでいる。
 屋敷と同じ落ち着いた雰囲気からしてここの主のようだが、こんなに若い男性がウィンダミアの一等地にマナーハウスを所有しているとは思わなかった。
「ようこそジュリア。よく来てくれたね」
「は、はじめまして。ジュリアと申します」
 青年に見とれていたせいで名乗ることしかできずに顔を上げると、青年は複雑な表情を浮かべている。
 なにか失敗してしまったかと内心で焦りを感じていると、青年はとても残念そうにため息をつく。
「はじめましては酷いな。久しぶりの再会なのに……」
「え……?」
 意外な言葉に驚いて、ジュリアは大きな目をさらに見開いた。
 これまでの記憶を辿ってみるが、こんなに美しい男性と知り合いだった記憶はなく、思い出そうとしても誰なのかわからない。
「わからなくても仕方ないか……昔はこんなにきちんとした格好はしてなかったからね。無精ひげを生やして絵筆を持ってたら思い出せたかな?」
 苦笑を浮かべて顎に手を添える男性をまじまじと凝視め、そこでようやくジュリアに八年前の記憶が蘇った。
「もしかして……画家のレイモンドなの……?」
「良かった、覚えててくれたんだね」
 恐る恐る名前を口にすると、レイモンドは満面の笑みを浮かべる。
 言い当てたというのに、ジュリアの中でまだ過去の記憶のレイモンドと目の前に立つ青年が同一人物として重ならない。
 なぜならあの頃のレイモンドはまだ売れない画家で、ジュリアの母が援助をしてなんとか食べていた状態だった。こんなに上等な服など着ていなかったし、作品に打ち込みすぎて無精ひげを生やしていたのだ。
 まったく別人のような変わりようなので、見違えても仕方がないと思う。
「ごめんなさい、まさかこんなに立派になられていたなんて……」
「しばらく会わないうちにさらに美しくなったね。モデルを頼みたいくらいだよ」
「人物画は描かないって言っていたわ……」
「そうだった。うっかりしてた」
 冗談っぽく笑うレイモンドを見て、ようやくジュリアの中で過去と現実が繋がってきた。
 今から八年前はレイモンドもまだ無邪気な笑みを浮かべる少年で、夢を叶える為に努力している最中だった。
 風景を専門に描いていて、レイモンドと初めて会った時も、このウィンダミア地方の美しい景色を楽しそうに描いていた。
 毎年夏になると母と一緒にこの地に所有していたマナーハウスで過ごすのが恒例行事になっていたジュリアは、レイモンドに会うのが楽しみだった。
(あの頃と笑顔は同じだわ……)
 初めての出会いからレイモンドは誠実で優しく、八歳も年下で子供だったジュリアをレディとして扱ってくれていた。
 それが嬉しくてウィンダミアにいる間はレイモンドのアトリエに日参しては、母に創作の邪魔をしてはいけないと窘められるほどだった。
(まさか初恋の相手が後見人になってくれるなんて……)
 ませた友人たちにからかわれるほど奥手だったジュリアにとって、優しくて大人っぽいレイモンドは憧れの存在で、一緒の空間で過ごせるだけで幸せだった。
 なので想いを伝えることすら思いつかず、初恋だったことも後になって気づいたほど淡い想いだったせいもあり、レイモンドになにも告げずに終わってしまった。
 両親がウィンダミアのマナーハウスを五年前に手放してからはいい思い出として残っているだけだったのに、まさかその初恋の相手が後見人となってくれるなんて想像もしていなかった。
「あの、今も画家をされているのですか……?」
「もちろん……と言いたいところだけど、今は陶器メーカーを経営しているんだ。このティーカップも僕がデザインしたんだよ」
「え、ケンドールのローズシリーズを!?」
 テーブルにあるティーセットはイギリス王室でも愛用されているティーカップとして、イギリスは元よりヨーロッパ中に知れ渡っているとても有名な陶器ブランドだ。
 目が覚めるほど鮮やかな色使いでありながら、季節の花を取り入れたデザインが美しく、コレクターも存在するほど人気がある。
「まさかレイモンドがこのティーカップを作っていたなんて知りませんでした」
「ここまで有名になれたのもドルーマー伯爵とマリアン夫人のおかげだよ。僕を援助してくれて、ティーカップのモチーフにするアイデアをくれたから」
 両親の援助でこの土地から小さな陶器工房を始め、デザインの良さから噂が次第に広がって男爵の地位まで獲得することができたのだと教わり、ジュリアも感心してしまった。
「美しいデザインと誠実な物作りをしているおかげですね」
「マリアン夫人がお茶会の度に僕のティーカップを宣伝してくれたおかげだよ」
「宣伝だなんて……母は本当に気に入って使ってました」
 代表作のローズシリーズだけでなく、母は季節に合わせたティーカップをお茶会の度に嬉しそうにセッティングしていた。
 もちろんティーセットに描かれた花に合わせて飾る花も揃えたり、テーブルクロスもそれらが映えるように選んでいた姿が思い出される。
「マリアン夫人が一番のファンでいてくれたからね。今年発表するリリーシリーズも真っ先に手に取ってもらう予定だったんだ。でもまさかあんなふうにお別れすることになるなんて……ジュリアも辛かったね」
 沈痛な面持ちでため息をつくレイモンドを見て、ジュリアは言葉もなく首を横に振る。
 レイモンドが両親の死を悲しんでくれているのがわかり、なにか声を発したら泣いてしまいそうなのだ。
 もう既に葬儀も終えている。かつての友人だった貴族も大勢参列してくれたが、その間も聞きたくない噂話ばかりが聞こえてきて、誰も悲しんでいるように思えなかった。
 突然のことで、ジュリアも心がどこかに置き去りになっていたせいでそう見えてしまったのかもしれないが、もしかしたら両親の死を本当の意味で悼んでくれたのは、レイモンドが初めてかもしれない。
「あ……」
 気づいた時には涙が溢れ、堪えようとしても次から次へと零れていく。
 葬儀からすっかり涸れてしまったのだと思っていたのに、まるで堰を切ったかのように涙が止まらない。
「よく耐えたね。でもこれからは僕が傍にいるから一人きりで背負わなくていいよ」
 慌てたように隣に移動したレイモンドが、壊れ物を扱うように肩を優しく包み込んでくれる。
 久しぶりに感じる温もりが優しくて、慰めてもらっているのに泣き止むことができない。
 それでもレイモンドは急くことはせずにジュリアを包み込み、涙を優しく拭ってくれた。
「どうしてここまで優しくしてくれるの……お父様とお母様への恩返しのつもり?」
「もちろんそれもあるけど、ジュリアまで失いたくなかった」
「私は生きているわ……」
「うん、そうだね。けれど美しく成長したジュリアとドルーマー伯爵の抱えていた負債を考えるとね。ここぞとばかりに狙っていた奴らにだけは渡したくなかった」
「……言っている意味がわからないわ」
 レイモンドの言葉は理解できなかったが、どういうことなのか考えようとしたおかげで涙が止まってくれた。
「ようやく涙が止まったね。このまま美しい瞳が溶けてしまうかと心配したよ」
「取り乱してしまってごめんなさい……」
 ごく自然と目尻に溜まる涙を口唇で吸い取られ、くすぐったさと照れくささにジュリアはつい目を逸らしてしまった。
 胸の鼓動も速くなり、このまま密着していたら伝わってしまうのではないかと心配になるほどドキドキして、身体を僅かに捩ってレイモンドから距離を置いた。
「ごめん、慰めるだけのつもりだったのに……悲しさにつけ込むつもりはないから誤解しないでほしい」
 そのままレイモンドも抱擁をやめて身体を後ろへずらしてくれたので、ジュリアは涙を拭う振りをして俯いていた。
 それでもまだ抱きしめられた感触が残っていて、心が動揺したままだった。
(いくら初恋の相手だったとしても、なんでここまでドキドキするの?)
 男らしく成長したレイモンドは眩しいくらい凜々しくなっているが、だからといってここまで心が騒ぐなんて自分でも意外だ。
 友人達に清楚すぎるとからかわれるほど奥手だから、もしかしてあの頃の初恋がまだ醒めていないのだろうか?
(だとしたら、私はあの頃からずっとレイモンドに恋をしているの? 初恋はまだ終わってないのかしら……?)
 そう思ったら余計にレイモンドを直視できなくなり、なんだかそわそわしてきた。
 それでも必死になって普段通りに振る舞おうと努力していると、レイモンドが頃合いを見計らって顔を覗き込んでくる。
「少し落ち着いてきた? ジュリアにこのマナーハウスと信頼できる使用人たちを紹介したいんだ。ジュリアもきっと気に入ってくれると思うよ」
「は、はい……」
 ようやく落ち着いてきてホッとしていたのに、間近から瞳を覗き込まれたせいでまた心が騒いでしまう。
 それでも自らの気持ちを探るよりもこれからの生活に慣れるほうが優先だと自分に言い聞かせ、動揺していることを悟られないようにレイモンドを凝視める。
「私にできることならなんでもします。これからいろいろ教えてください」
「ジュリアを召使いにするつもりはないから安心して。さぁ、僕の家を紹介するよ」
 覚悟を決めて伝えたのに笑顔で手を差し伸べられて、ジュリアは戸惑いつつもレイモンドにエスコートされる形でゲストルームを後にした。
(私はここでなにをすればいいのかしら……?)
 ここで暮らしていくにあたりなにをすべきか悩んだものの、それを含めこれからしっかり考えてレイモンドの助けになるよう過ごそうと改めて思う。
 そしてそこまで考えたところでふと、前向きな自分に気づいた。
(私、いつの間にかきちんと考えてるわ……)
 ここへ来るまでは緊張の連続で無気力だったのに、レイモンドと会ってからは不安な気持ちは一切なくなっている。
(初めてのことばかりなのに、どうしてこんなに落ち着いているのかしら……?)
 隣に並ぶレイモンドの気配を感じるだけで、どういう訳だか心強い。
 両親を敬愛してくれる理解者だからだろうか?
 ようやく心を許せる相手が現れてくれたのが嬉しい?
 自分でもよく理解できないが、これからの生活に少しだけわくわくしている自分にも気づき、なんだか呆れてしまう。
(いくら初恋の相手だからって調子が良すぎるわ……)
 自分を抑えようとするが、やはりレイモンドが後見人だったことは純粋に嬉しくて、使用人を紹介される頃にはジュリアも本来の笑顔を取り戻していたのだった。
(『薔薇色のプロポーズ』沢城利穂 より)

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