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竜騎士王の花嫁

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書籍紹介

まっすぐな愛を、あなたに注ぎたい

勇敢な竜騎士王アウグストと婚約させられた王女シャーロット。兄からスパイ行為を強要され苦悩しつつも、彼に優しく抱きしめられれば心が甘く蕩けてしまう。「あなたを俺のものにします」情熱的な深い口づけ。白い肌は巧みな愛撫に震え、注がれた快感を身体の最奥で受け止めて。想いを募らせる中、兄に連れ戻されそうになるけれど、彼が名誉と愛にかけて守ると言ってくれて――!

ジャンル:
西洋
キャラ属性:
王子・王族・貴族
シチュエーション:
政略結婚 | 甘々・溺愛
登場人物紹介

アウグスト

ノースライド国の騎士王。馬上槍試合で優勝するほど武芸に秀でる。シャーロットと婚約し、二人でノースライドへと向かうことに。

シャーロット

アストリア国の王女。咲き始めの薔薇のような美しさ。兄王に逆らえず、命じられてアウグストと婚約するが……。

立ち読み


【おそろしのノースライドに、麗しの姫が嫁ぐとき──
 ドラゴンの騎士の剣が切り開きしはノースライドの闇と光
 姫の優しき涙が騎士を勇気づけ、魔物なる獣は大地に血を流し息絶える】
 アストリアの吟遊詩人の歌話より

【豊かなるアストリア、かの地には清らかな乙女が暮らす
 乙女こそは妖精王の末裔──
 この大地に根付いたすべての命を慈しむ白い指に宿るは光の魔法
 ドラゴンの王ですらかの乙女には頭を垂れる】
 ノースライドの古きおとぎ話より


    ──そして騎士と乙女は恋に落ちる
         それが運命なるかな────

 

 

 

 城の長い廊下に一定の間隔で突きだし燭台が置かれ、松明の火が灯っていた。炎が天井や壁に明るい光を投げかけている。
「ねぇ、シャーロット姉様? 僕も、もうちょっと大きくなったら剣をもらえるかな。辺境の騎士王みたいな大きな剣──」
 やっと八歳になったばかりの弟のジョンが、シャーロットを振り返って首を傾げ心配そうに聞いてきた。金色の髪が蝋燭の炎に照らされ、きらきらと輝く。
「そうね。きっともらえると思うわ」
 ジョンはアストリア国の王子だが、王位にはあまり興味がなくひたすら騎士を崇めている。この年頃ならそれは仕方のないことだ。男の子の興味は、わかりやすく強いものに向けられる。
 シャーロットの返事に気をよくしたのか、ジョンはその場でくるくると回りだした。
「剣!! 僕の剣!!」
 普段なら就寝している時間を超えて、ずっと起きて客人たちの様子を眺めているうちに、気持ちが高ぶってしまったようだ。子どもにはありがちなことだ。
 困ったものだと思いながら、シャーロットはジョンを優しくたしなめた。
「あまり飛び跳ねては危ないわよ。転んで怪我をしたらどうするの?」
「怪我なんて怖くないよ。だって僕はいつか立派な騎士になるんだから。勇敢な男なんだから」
 そのまま勢いよく自分の部屋に続く階段を駆け上がる。
「もう……待ってよ」
「待てないよ。だって僕は騎士になるんだから」
 まったく理由にならないことを言い張って走りだしたジョンが、階段の踊り場に飾られているひとそろいの甲冑の前で足を止めた。
 中味は空洞の、甲冑の騎士だ。
 ぴかぴかに磨かれた防具を身につけ腰から立派な剣を下げ、ずっとこの階段を守護している。過去にこの城を守り抜いた騎士の栄誉を称えて設置されたと聞かされているが、どこまで本当なのかはシャーロットには不明だ。
 真偽は別として、弟はこの空洞の甲冑騎士を崇め、慕っている。
 その騎士の剣帯の布が弱り、切れかけていることに気づいたのはジョンの方が先だった。
「……っ。ジョン。あなたなにをしているの!?」
 ジョンは、甲冑の騎士が腰に下げていた剣を、剣帯を引きちぎって両手で抱え持った。
「だって僕は騎士になるんだ。立派な騎士に。そして母様も姉様も守るんだ。悪い奴の手から絶対に守ってやるんだ」
 子どもの手には大きすぎる剣だった。
 ──剣の刃はつぶしてあるから平気だって言うけど。
「お父様とも約束したんだ。僕は母様と姉様を守るって」
 いまはもう天に召され、空の高いところから皆を見守ってくれているだろうエドワード王のいまわの際の言葉だ。三年前に、父王の寝室でささやかれたその言葉は、幼いジョンにとっては絶対的なものだった。
 剣を両手で肩に担ぎ上げ、意気揚々と胸を張って、自室に向かって走りだす。
「駄目よ、ジョン。そんなふうにしては危ないわ」
 シャーロットのドレスは美しいが、動きまわることに向いていない。たくさんのフリルとリボンで重量が増し、ドレスの下に身につけている鯨の髭と鉄とを取り混ぜたパニエがかさばって、追いかけようとしても身動きが取れない。
 あっというまにジョンの姿が目の前から消えていった。
 ドレスの裾をつまんで階段と廊下を必死で走る。
 ジョンの部屋のドアが開いている。
「ジョンッ!?」
 入室し、目の前に飛び込んできた光景に、シャーロットは思わず悲鳴を上げた。
 ジョンが、鞘から剣を引き抜いていた。ジョンの手のなかにあるそれは、甲冑の騎士が腰に下げていたときの何倍も大きく見える。
「それをこっちに寄越してっ。その剣はあなたには大きすぎるわ」
「大きすぎるもんかっ!!」
 詰め寄ったシャーロットから逃れようと、ジョンが後ずさり、開け放したままの大きな窓の桟に飛び乗った。
 片手で窓枠を捕まえ、片手で剣を持ち、シャーロットのほうを見る。
 窓の外には銀色の月。
 月の光を受けてジョンの手元の剣の刃がきらりと輝いた。
「ジョン……やめて。落ち着いて。降りてきて」
 普段はここまでやんちゃではないし、シャーロットの言うことをよく聞く弟だ。でも今宵は違った。騒いで駆け寄ると、よけいにジョンを刺激してしまいそうで躊躇する。
 シャーロットは胸の前に両手を組んで、はらはらして見つめる。
「これくらい平気だよ」
 誇らしげにジョンが笑った。自分はいっぱしの騎士なんだよと言うように顎を持ち上げ、胸を張って──。
 途端、ジョンの身体がぐらりと傾ぐ。
 シャーロットが悲鳴を上げるのと、背後から荒々しく重たい足音が響いたのはほとんど同時だった。
 シャーロットを押しのけて黒い影がジョンへと走り寄る。稲妻みたいに素早い動きだった。
 大きな黒い影は、落下しかけたジョンの腕を掴んで引き寄せ、すっぽりと抱えて床へと降ろす。そしてジョンの手から剣を取り上げ、その前に膝をつき、ジョンの顔を覗き込んだ。
 動転するあまり、大きな黒い影としか捉えられなかったそれは、黒いチュニックに身を包んだ長身の男性の姿だった。
「ジョン王子。立派な騎士はレディに悲鳴を上げさせてはいけない。それに刃をつぶしていても剣は、剣だ。剣は戦うべき相手がいるときにだけ抜くものだ」
 男がくるりとこちらを振り向き、立ち上がる。
 ──アウグスト・フォン・レストコ。
 彼は、ノースライド国の騎士王だ。
「……大丈夫ですか? マイ・レディ」
 気遣わしげにそう言い、シャーロットの頬にアウグストがそっと触れた。
 今日はじめて会った男性にこんなに近づかれ──しかも頬に触れられるなんて。
 近づいてくるアウグストの端整な顔がぼんやりと滲む。黒い睫に縁取られた漆黒の双眸は、怖いほどに綺麗だった。
 びくりと身体をすくませたシャーロットは、けれど彼の指に拭われて、初めて自分が泣いていたことに気づく。
 驚きと恐怖。その後にジョンが無事に助けられた安心感で、感情が爆発してしまったようだ。膝から崩れ落ちそうになる身体を懸命に立て直す。
「マイ・レディ」
 遠慮がちに自分を抱きしめて支えてくれた彼の体温に、シャーロットの心臓が跳ねた。近すぎる彼との距離に頬がかっと熱くなり、どうしたらいいのかわからなくなって、うつむいてぎゅっと目を閉じた。

 

 

 

 その日──アストリア国の王都、ペンローズの城には各国から王と騎士たちが集っていた。
 フィリップ王のお気に入りの吟遊楽士が奏でる妙なる調べがいつまでも続き、贅沢な食事と美味しい酒が振る舞われ、招かれた男たちは底なしに酒を飲んでいた。壁の突きだし燭台の上で松明が燃えている。色鮮やかなタペストリーが壁を飾っている。
 白いテーブルクロスの上には磨き抜かれた銀食器が並ぶ。花と甘い菓子。笑い声と、ダンス。男たちに手を取られてくるくると回る華やかなドレスの婦人たちは、目に鮮やかで美しい。
 シャーロット・ペンローズは高い場所にあるきらびやかな椅子に座り、踊る男女を微笑んで見守っている。
 金色の巻き毛の長い髪を高く結い上げ、生花の薔薇を使った冠を頭に載せたシャーロットは誰が見ても美しい。滑らかなクリーム色の肌。わずかに上気した頬がピンクに染まっている。どこまでも澄んだ蒼い瞳。十八歳になったばかりの彼女は、蕾が開きかけた薔薇の花によく喩えられる。
 遙か遠くからでも若さが香り、男たちが誘い込まれてしまうような美姫だった。
「シャーロット姉様?」
 シャーロットのすぐ隣の椅子には、弟のジョン王子が居心地悪そうにしていた。たまに足をぶらぶらと揺すり、シャーロットに「お行儀が悪くてよ」とそっとたしなめられている。
「なあに? ジョン」
 ジョンはまだ八歳で、背の高いその椅子に座るには飛び上がらないとならない。体格に合わない椅子の存在が、彼を実際以上に華奢に見せている。
「祝宴って、つまらないね」
「あら……そんなことを口に出して言うものではないわ。小さなジョン王子」
「小さくない」
 シャーロットによく似た、たまご型の顔がしかめられた。
「どうかしら。“大きなジョン王子”なら、本心を飲み込んでその椅子に座って、にこにこしてくれるはずだわ」
「……うん。してるでしょ?」
「そうね」
 澄まして言われ、くすりと笑う。
 ジョンの興味は、あちこちで談笑している騎士たちにある。いまのところ王位継承権一位である弟のジョンは、しかし、王位というものに一切の関心を持たない。どちらかというと、甲冑を着込んで剣や槍を手にし、馬を駆る、騎士たちに夢中だ。少年の胸を躍らせるのは、戦場とそこでくり広げられる戦いだ。玉座に座って各国の大使たちと交渉する王の仕事は、どうしたって地味で、退屈だと思っているらしい。
 しかも今日の昼に、馬上槍試合が行われたばかりだった。この場はその勝利者のために設けられた宴である。
 強い騎士たちの戦いぶりを見せつけられたジョンにとって、今宵の英雄は兄のフィリップ王ではない。
 馬上槍試合の優勝者であるノースライドの国の騎士王だ。
「あ……ねえ、姉様。あそこ、見て。今日の槍試合で優勝した騎士だよ」
 両開きの巨大なドアを開けて入ってきたひとりの男の姿に、シャーロットとジョンの視線が縫い留められる。
 ──黒い男。
 漆黒の髪を持つ長身の男は粗野な黒いチュニック姿だ。チュニックの下に着ているのは白いシャツだ。他の男たちが派手な色合いのビロードの衣装を身につけているなかで、地味さが逆に目立つ。
「アウグスト様ね。彼はノースライド国の騎士王よ」
 アウグスト・フォン・レストコ。
 王で──かつ騎士。
「昼間に見たときみたいに剣は下げてないんだね。槍も持ってない」
 ジョンが小声でつぶやいた。
 シャーロットもなぜか声を小さくし、ジョンへと答えた。
「……こういった祝宴では武器は身につけないものよ」
「でも、なにも持ってなくてもすごく強そうだね。……っていうか、本当に強かったよね」
「ええ」
 昼の槍試合で、彼は漆黒の馬を駆って次々と他の騎士たちをうち破った。力尽くでの勝利もあれば、巧みな技で相手の槍を振り払ってのけた試合もあった。剣をふるったことのないシャーロットですら、彼の計り知れない強さは理解できた。彼は、飛び抜けた技と力を持った無敵の騎士だ。
 ──しかも無駄な血は流さない。
 ノースライド国の騎士王は、怪我をさせない程度に相手を痛めつけて馬から転落させていた。相手が立ち上がるのを待ち、その首元に槍の刃先を突きつける。彼の兜は一度として頭から落ちることはなかった。
 あまりに華麗な戦いぶりに、普段はそういう荒事に興味のないシャーロットですら、夢中になった。こんなに優雅で、強い騎士は見たことがないと思った。彼の優勝を願い、胸元で両手をあわせて真剣にその一挙手一投足に息をつめて見入っていた。
 すべての試合を終えた後、人びとに讃えられるためだけに彼は兜を脱いで、その顔を露わにした。
 それまで漠然と、シャーロットは彼は自分よりかなり年上の男なのだと思い込んでいた。こんなに手練れで落ち着いた戦いをするのは、よほどの経験がないと無理だろう。だとしたら四十代か五十代なのでは、と。
 が、兜を脱いで露わになったアウグストの顔は、思っていたよりずっと若く──まだ二十四歳なのだと後になってから知った。
 そして、彼は、美しかった。
 漆黒の髪と漆黒の双眸。高い鼻梁。少し厚めの唇は心持ち口角が上がっていて、情熱的で優しそうに見えた。
 強く光る黒曜石の双眸が、壇上にいたシャーロットを見上げた瞬間、シャーロットの胸がとくんと脈打った。そんなふうに、特定の男性を見ることで心臓が高鳴ることがなかったから、シャーロットは戸惑って、アウグストから視線を逸らした。
 あのとき見つめあった時間はほんのわずかだったけれど、耳のあたりまでぽうっと赤くなって火照ってしまったことが、ひどく恥ずかしかった。いまもシャーロットは、彼の姿を直視できずにいる。じっと見てしまうと、胸の奥がもやもやと居心地が悪い感じに疼くのだ。
 こんな気持ちは、はじめてだった。

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