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心をなくした皇帝とお飾り皇妃
~結婚二年目にして溺愛生活始まりました~

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書籍紹介

呪いで言えなかった陛下の甘すぎる本音は!?

冷酷な皇帝メレディスと政略結婚したリリアーヌ。ずっと慕っていたけれど、ろくに顔を合わせないまま一年が過ぎた。夫に嫌われているのかも――世継ぎのために涙をのんで公妾を勧めたら、「リリーたん、マジ可愛い☆」本音を語る魔法の指輪で、メレディスが隠していた心の声が明らかになって!? 「愛しているよ。淫らな僕の白百合」こんなに愛されていたなんて予想外すぎます!!

ジャンル:
西洋 | ファンタジー
キャラ属性:
王子・王族・貴族
シチュエーション:
甘々・溺愛 | 政略結婚
登場人物紹介

メレディス

『心をなくした皇帝』と恐れられるベルガイル帝国の君主。政略結婚でリリアーヌが嫁いできて1年経つが、夫婦らしいことはしていない。けれど冷たい態度には理由があって……。

リリアーヌ

アズナヴール王国第三王女。メレディスに救われて以来、慕っていたが冷たい態度を取られ続けている。メレディスの本音を知ってからややツッコミが上手くなった。

立ち読み

 リリアーヌははじめて訪れる異国の景色を、馬車の中から眺めていた。
 大陸の西側に強い影響力を持つアズナヴール王国の第三王女である彼女は、東のベルガイル帝国皇帝に嫁ぐため、旅をしていた。
 窓の外にはオリーブ畑が遠くまで続いている。祖国ではあまり栽培されていない植物が作り出す景色が、ここがすでに異国であるのだと彼女に教えている。
「ついに帝国領に入ってしまいましたね……」
 同行してくれている侍女・マリオンは浮かない表情だ。
 リリアーヌの祖国と帝国はここ百年ほど戦こそしていないが、ずっと敵対関係にあった。
 そんな国に嫁ぎ、おそらく一生帰れないのだから、不安になるのも頷ける。
「ええ。でもここはまだ帝国の支配地域とは言えないわ。ペウレア公国は、帝国から自治を許されていて、独立性を重んじているそうですから」
 リリアーヌを乗せた馬車が現在走っている場所は、ペウレア公国という小さな国だ。
 帝国の属国という位置づけではあるものの、一国家として認められている。
 今回、中立地帯としてこの地で花嫁の引き渡しが行われる予定となっている。
 アズナヴール王国から同行してくれている護衛とは、ペウレア公国の都で別れる。
 そのあとは、帝国側の責任で、帝国軍の護衛がリリアーヌを都まで護送する。
 嫁ぎ先まで一緒なのは、侍女のマリオン。そして、嫁入り道具の詰まった三台の荷馬車だけだった。
「心配ご無用です。いくら“心をなくした皇帝”と呼ばれる冷酷無慈悲な方であっても、歴史あるアズナヴールの王女殿下を傷つけるような──」
「マリオン、その名は使わないで。夫となる方を噂だけで決めつけて悪く思うようなことはしたくないの」
 リリアーヌは語気を強めて侍女の言葉を遮った。
「失礼いたしました」
 帝国皇帝には“心をなくした皇帝”という異名がある。
 彼は臣民の前で一切笑わず、他者の失敗を許さない冷酷な独裁者だという。
 自分の地位を脅かす存在を無慈悲に粛正したという話もある。具体的には、先代皇帝が迎えた二番目の妃──皇帝にとっては義母にあたる女性を殺害し、異母弟を幽閉したというのだ。
 ただし、公的な記録には謀反をくわだてて失敗した妃が、追い詰められて自害したと記載されている。なにが真実なのか、リリアーヌにはまだわからない。
 それでも、一つだけ確かなことがある。
 彼の即位後、ベルガイル帝国は国力を増しているという事実だ。
「心配しなくても大丈夫。皇帝陛下は私に贈り物をくださいましたし、お手紙も誠意あるものでした。なにより、善政を敷いておいでですから」
 リリアーヌは侍女を安心させようと、ほほえんでみせた。
「お手紙……? あの、求婚相手を賞賛することさえしない、素っ気ない文面の?」
 皇帝との縁談が持ち上がったのは、今から一年半ほど前。それから今日に至るまで五通の手紙が送られてきている。
 どの手紙も、この婚姻が政略的にいかに有効であるかという内容がびっしりと綴られていた。甘さは一切ないが、理路整然としていて清々しい印象だった。
「美化されている肖像画の私をほめ称えられても、しらけてしまうわ。髪も瞳もありきたりな色ですから。……きっと誠実な方なのでしょう」
 リリアーヌは二十歳で、波打つ栗色の髪と榛色の瞳を持つ王女だ。
 よく手入れをしているから艶はあるが、ふわふわと広がりやすい髪にも、落ち着いた印象の瞳の色にも、少しだけ劣等感を抱いている。
 輝く金髪や、まっすぐなブルネットの髪だったらよかったのに。瞳にサファイアやエメラルドに例えられる煌めきがあればよかったのに……。つい、そう考えてしまう。
 だから彼がリリアーヌの容姿について手紙で一切触れなかったことにも、誠実さを感じていたのだ。
 社交辞令で絶賛されたら、実際に会ってがっかりしないだろうかと心配になるところだった。
「なにをおっしゃいます。美しく聡明でお優しい……、リリアーヌ様はアズナヴールの至宝であらせられます」
「ありがとう、マリオン。皇帝陛下は即位後すぐに医療や教育、農業の分野で大きな改革をされているわ。二十四歳……私とたった四つしか変わらないのに、実績を残されている名君が冷酷な方であるはずはないもの」
 リリアーヌは皇帝との婚姻が決まってから、帝国の現状について学んでいる。
 皇帝は、貧困層の暮らしを底上げするような政策を打ち出している。
 彼個人がどんな人物かはまったくわからないが、王女として名君に嫁ぐというのはとても幸福なことに違いない。
「ですが、先ほどからリリアーヌ様の顔色がお悪いような気がして」
 マリオンは二十七歳で、十年以上リリアーヌに仕えてくれている。長い付き合いのため、不安を見抜かれていたのだ。
 リリアーヌはこの輿入れに侍女を連れていくつもりはなかった。
 けれど、マリオンは「どうせ私には結婚の予定もないですし、一人で異国に嫁がれるのは不安でしょうから」と言って、同行を申し出てくれた。主人思いの、優しい女性だった。
 彼女が結婚しなかったのには理由がある。親が決めた婚約者が結婚直前に浮気をして、それ以来、男性不信になってしまったのだ。
 マリオンが疑り深いのは、リリアーヌには同じ目に遭ってほしくないという思いが強いせいだ。
 けれどリリアーヌは本当に、皇帝の人となりに不安を感じていたわけではない。
「……私の不安は皇帝陛下との婚姻ではなく、この地の危険性を──」
 ちょうどそのとき、遠くで怒号のような声が響いた。
「なんでしょう?」
「──マリオン、落ち着いて聞いて。おそらく何者かの襲撃を受けているのだわ」
「襲撃!?」
「ええ……。大国同士の結びつきを快く思わない者はいくらでもいるわ。嫁入り道具を狙っての盗賊が現れる可能性も否定できない」
 長いあいだ、冷戦状態であった二つの国が政略結婚によって新しい関係を模索しはじめた。
 それぞれの国内にも、この婚姻を壊そうとする勢力は存在する。また、周辺国も大国同士の結びつきに危機感を抱いているはずだ。
 高額な嫁入り道具を載せた馬車を狙っている者に襲われる可能性だってあるのだ。
 そしてアズナヴール王国の支配下にない地域に入り、長旅による疲労が蓄積されている護衛交代直前の今、危険性が最も高いのは当然だった。
「そんな……」
「心配しないで。護衛も十分わかっているのだから、──大丈夫」
 急いでカーテンを引いて、姿勢を低くする。
 貴人を乗せていることを隠すため、リリアーヌの馬車は華美な装飾を取り払い、荷物用の車両も含めすべて似たような外観になっていた。
 悲鳴を上げなければ、集中攻撃を受けないはずだ。
 リリアーヌは争いとは無縁の、安全な王宮で育った。
 旅が危険なものであるという認識はあっても、命を脅かされる事態に遭遇した経験は一度もなかった。
 大丈夫、父がつけてくれた護衛は強い──そう自分に言い聞かせながら侍女の手を握るが、どうしても手が震えてしまう。
「リリアーヌ様……」
 マリオンの手も震えている。
 馬の嘶き、誰かの悲鳴、それから剣のぶつかり合う音が聞こえる。
 馬車の外でリリアーヌを守るために、誰かが犠牲になっているのかもしれない。もし護衛が敗北したら、きっとリリアーヌも殺されてしまうのだろう。
 それだけではなく、どの勢力がくわだてたかによっては、国同士の戦に発展してしまうことだってありえる。
 一人の人間としても、責任ある立場の王女としても、この状況が恐ろしくてたまらなかった。
「王女の馬車はどこだ!」
 だんだんとざわめきが大きくなる中、男の叫び声がした。
(やはり私の命を狙って……?)
 せめて高価な荷が目当ての盗賊だったら交渉の余地があったのではないか──そんな期待は裏切られる。
 ──ドン、と二人の乗る馬車に衝撃が走る。
「矢……?」
 側面に矢が刺さったのではないか。そんな予想にリリアーヌは戦慄した。
 車外では怒号や悲鳴が飛び交い、馬車への攻撃の回数が増す。
 リリアーヌを乗せた馬車に矢が刺さったことがきっかけとなり、護衛が彼女を守るために集まってしまったのだろう。
 その行動が重要人物が乗る馬車がどれなのか、敵に教えるかたちとなった。
 ガシャン、と音を立てて窓ガラスが割れる。
(もう、だめ──)
 王女として、最後はどうあるべきか。リリアーヌが本気で自身の死に際を考えはじめたとき、声が響いた。
「王女を守れ!」
 同時に馬が駆けてくる音が聞こえた。それも、大軍だ。
「援軍……?」
 車内からでも第三の勢力の凄まじさが感じられた。
 撤退を促す敵の叫び声が響く。周囲が静寂を取り戻すのに時間はかからなかった。
「第三王女はここか?」
「……はい、私はここにおります」
 リリアーヌが答えた直後、勢いよく扉が開かれた。
 閉ざされた空間に急に光が差し込む。
 逆光で見えづらいが、声をかけてきたのは軍人──帝国の軍服を身にまとう青年だった。
 長身で黒髪、瞳の色は深い青だ。戦闘直後ということもあるのかもしれないが、眉間にしわを寄せ、不機嫌そうな印象だった。
「……ひっ」
 マリオンが返り血で染まる軍服を見て、思わず声を上げた。
 リリアーヌは、そんな侍女を後ろに追いやり、扉のほうへ近づいた。
「ベルガイル帝国軍の方ですね? 危ないところを助けてくださってありがとうございました。私はアズナヴール王国第三王女リリアーヌと申します。あなた様のお名前をうかがってもよろしいでしょうか?」
 狭い車内ではきちんと立ち上がることもできず、不格好な挨拶となってしまう。
「……メレディスだ」
 ボソリ、と低い声でつぶやいた。
 メレディス──メレディス・ブレイン・ベルガイル。それは、間もなくリリアーヌの夫となるはずの、帝国皇帝の名だった。
 皇帝が自ら軍を率いて、リリアーヌの窮地を救ってくれたという状況だろうか。
 予想外の事態にあっけに取られる。
「大変失礼いたしました。元帥の位にあるお方は皇帝陛下お一人でしたのに」
 王族として無様な姿を晒さぬように努めていたが、リリアーヌも恐ろしい体験をした直後だったため、動揺していたのだ。
 教わっていたはずの帝国軍の階級章を見逃すという失態を犯す。
 髪の色、目の色は肖像画のとおりだった。太めの眉が凜々しく、精悍な顔立ちの青年だ。
 けれど残念なことに、今は深く刻まれた眉間のしわのせいで、他者を遠ざける冷たい印象になっていた。それで、すぐに彼が肖像画で見た皇帝だとわからなかったのだ。
「よい。ガラスが散らばるこの場は危険だ。別の馬車を用意するから同行願おう」
「かしこまりました、陛下」
 促され、リリアーヌはマリオンと共に車外に降り立った。
 まず広がっていたのは、敵と思われる男たちが血を流し、倒れている光景だった。
 祖国から同行してくれている護衛数人も、怪我をして苦痛に顔を歪めていた。
 思わず目を背けたくなるが、リリアーヌは王女だ。腰を抜かしてその場で泣き出すような真似はできない。
「……味方の被害について教えていただけませんか?」
「命を失った者はいないようだが、重傷者が数名いる……。軽傷者は数えきれない」
「陛下、私にも侍女にも応急手当ての心得がございます。どうか我が国の兵を助けるため、少しだけお時間をいただけないでしょうか?」
「そなた、恐ろしくはないのか?」
「恐ろしいです。それでも、守ってくれた兵に対し私は責任があるのです」
 この中立地帯で護衛の交代が行われるまで、状況をどうにかするのはアズナヴール王国の責任だった。
 すでに帝国の手を煩わせてしまったが、アズナヴール王国には、王国のプライドがある。
 それをすべて捨ててしまうつもりはなかった。
「許可……できない。まだ……っ。く、……なんだ?」
 メレディスが突然言葉を詰まらせた。そして喉のあたりを苦しそうにしながら押さえる。
「どうなさいましたか?」
 先ほどの戦闘で怪我をしたのだろうか。そう思ったリリアーヌが確認しようと彼に手を伸ばす。
 ところが手が触れる前にメレディスがスッと身を引いて、リリアーヌを拒んだ。
「そなたらは邪魔だ。安全な馬車に籠もっていろ! くだらないプライドで事態を悪化させるな」
 なにが彼を怒らせてしまったのだろうか。
 リリアーヌには理由がわからない。それでも投げつけられた言葉はしっかりと彼女に届いていた。
 夫となる人の言葉は、とても重くて、たった一言でリリアーヌの心を傷つけた。
「そんな言い方……」
 弱々しい声で、マリオンが抗議する。
 ジロリ、とメレディスが視線を送るだけで、マリオンは気絶するのではないかと心配になるほど顔色が悪くなった。
「……煩わせてしまい、申し訳ありません。私が浅慮でございました」
「わかればいい」
 リリアーヌが深々と頭を下げると、メレディスは視線を前方に向けて、用意された馬車のほうへと歩き出す。
 リリアーヌとマリオンは、大人しく彼に従った。
 押し込められるようなかたちで馬車の中に入ると、すぐに扉が閉められた。
「リリアーヌ様」
「陛下のお言葉はもっともだわ。婚姻を潰そうと考えている勢力が一つとは限らないのだから。私が甘かったの……守られる状況を今は受け入れるべきなのでしょう」
「ですが! あんなふうに言わなくても」
「命のやり取りをされていた直後ですもの」
 その後、メレディスが直接リリアーヌのところへやってくることはないものの、部下が逐一情報を持ってきてくれた。
 今回の襲撃犯は、国境付近を縄張りにしている盗賊団だった。けれど、婚姻を邪魔しようとする勢力が依頼し、糸を引いていた可能性が浮上している。
 疑わしきは、両国が争いをはじめ潰し合いに発展するのを望んでいた第三国。
 リリアーヌはこの事件にベルガイル帝国とアズナヴール王国の人間が関わっていないという推測に安堵した。
 少なくとも自国の民には、二人の婚姻を歓迎してほしいと願っているからだ。
 メレディスが襲撃の現場に駆けつけることができた理由も判明した。
 もともとメレディスは、アズナヴール王国に対し、花嫁一行が狙われる可能性について懸念を伝えていた。
 けれど、中立地帯まではそれぞれの国が責任を負うという取り決め上、派手に動けない。
 だから花嫁一行が国境を越えるのと同時に、少し距離を置いて見張っていたのだという。
「帝国の都で対面する予定だったのに、心配して迎えに来てくださったのよ。……本当は強くて、優しいお方なのでしょう。これからたくさんお話をすれば、きっと……」
 言葉は厳しかったが、リリアーヌは彼に好感を抱いた。
 政略結婚の相手だからとか、そんなことは関係ない。恐ろしい場所から救ってくれたメレディスは、リリアーヌにとって英雄だった。
 もっと彼を知りたい、好きになりたいと素直に思える。
「ええ、荒事の直後だったからに違いありません。我が国の重傷者がペウレア公国に留まって治療ができるように手配してくださいましたし」
 出会いの直後こそ、怯え、反発していたマリオンも、すぐにメレディスに対する評価を変えた。それくらい帝国軍と合流してからの旅路は、安全で配慮の行き届いたものだった。
 けれどペウレアの都に滞在した日も、帝国領内を旅している最中も、リリアーヌのもとをメレディスが訪れることはなかった。
 揺れの少ない馬車、最高の宿と食事など快適な旅を提供してくれる一方で、彼との距離を縮める時間はほとんどない。
 それでもリリアーヌは前向きだった。
 都に着けば、夫婦となるのだ。これからいくらでも会話の時間を持てる。

 そんな期待を胸に抱いて、祖国を出立してから十日。リリアーヌはベルガイル帝国の都に辿り着いた。
 小さな花が咲きはじめる、春のはじまりの季節だった。

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