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悪女(と誤解される私)が腹黒王太子様の愛され妃になりそうです!?

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書籍紹介

お前は子種がほしい、俺はお前がほしい、利害が一致したな

婚約破棄された武門貴族の一人娘アンジェリカ。跡継ぎだけでも作らねばと相手を探すも、冷たい美貌から悪女と呼ばれ敬遠されているため全く見つからない。困っていたら憧れの王太子エルヴァンに「子種は俺がやる」と押し倒され!? 甘く痺れるほどの愛撫に蕩け、逞しい杭で穿たれれば火照った身体が歓喜に震えて――。「ずっとお前が欲しかった」本気の王太子からは逃げられない!?

ジャンル:
西洋 | ファンタジー
キャラ属性:
王子・王族・貴族
シチュエーション:
幼馴染・初恋の人 | 新婚 | 甘々・溺愛
登場人物紹介

エルヴァン

アルディバラ王国王太子。さわやかな美形だが軍事に関心が強く未だ独り身。アンジェリカが子種をくれる男性を探していると聞いて名乗りを上げる。

アンジェリカ

武門貴族ブロンナー家の一人娘。冷たい美貌ゆえに「氷の悪女」と呼ばれ敬遠されている。家同士が決めた婚約相手から破棄を言い渡され……!

立ち読み

「あ、あ、あぁ……あぁっ……」
 淡い明かりに照らされた部屋の中、広い寝台が軋む音を立てている。
 絹のしとねの上で大きく脚を開いたアンジェリカは、王太子の『寵愛』を全身で受け止めていた。
 青銀の長い髪が広がり乱れて、汗ばんだ肌に貼り付く。
 アンジェリカは王立軍の将軍、リッカルト・ブロンナーの一人娘だ。
 正式な地位は侯爵令嬢である。
 三ヶ月ほど前、婿入り予定の婚約者に逃げられ、家を継ぐ子を作らねばという一心で『後継者製造活動』を始めようと考えた。
 ──そんな活動自体が、今思えば間違っているのですけれど……!
 そして何の間違いか、お仕えするべき王太子殿下を射止めてしまったのである。
 怜悧冷徹で誰よりも美しい王太子エルヴァン。常に理性的なはずの彼に囁かれたとんでもない言葉を思い出すたび、気が遠くなる。
『お前は子種がほしい、俺はお前がほしい、利害が一致したな』
 思えばあれが運命の分岐点だった。
 この腹黒王太子は、アンジェリカと光の速さで肉体関係を持ち『俺の妃にする』と宣言したからだ。
 周囲は当然絶句した。
 アンジェリカ本人もまだ呆気にとられたままだ。
 それをいいことにエルヴァンはアンジェリカを片時も離さず、腹に我が子が宿るようにと毎晩励んでくださるのである。
 あの運命の夜から半月も経っていない。
 今夜も一度では足らず、再びアンジェリカを求めてきて……。
 アンジェリカは無意識に濡れて汚れた顔を拭った。
 ──私、日に日に……エルヴァン様に溺れていく……。
 どんなに淫らな体位を取らされても、抗えない。もう身体に力が入らないのだ。
「これでもまだ、俺がお前に何度も会いに行った理由、お前に贈り物を欠かさなかった理由を『将軍の娘だから優遇していた』と思うのか?」
 意地悪な問いにアンジェリカは首を横に振る。
「あ……いいえ……あ、あ、エルヴァン様は……私に会いにきて、っ……あぁ……っ」
 先刻吐き出された精とあふれ出す蜜がアンジェリカの淫洞をぐちゅぐちゅと音を立ててこする。
 腰が浮き、喘ぎ声が漏れた。問いにまともに答えることすら出来ずに、アンジェリカはあまりの快感に自ら腰を浮かせ、背を反らせる。
「い、いや……こんなに……何度もいくの……っ……」
 激しく呼吸が乱れ、目尻からまた涙が伝い落ちる。エルヴァンは身体を離すと、アンジェリカの火照った乳嘴に口づけた。
「あぁぁぁ……」
 新たな快感が身体を走り抜け、おびただしい量の雫が尻を伝って流れ落ちていく。
 繰り返される口づけを受け止めながら、アンジェリカは抽送のたびに腰を動かす。
 身体に教え込まれてしまったからだ。愛し合うことはこれほどの快楽を伴うのだと。
 ──ああ……だめ……動くとまた私だけ……いっちゃ……。
 曝け出されたアンジェリカの乳房の先がぎゅっと尖る。男の汗で濡れた肌が、快感にうっすらと粟立った。
「あ……あ、エルヴァン様……あぁ……」
 ぐちゅぐちゅと淫靡な音が室内に響く。
 柔らかで未熟な身体に雄杭を繰り返し打ち込みながら、エルヴァンは汗に濡れた顔で笑った。
「早く孕めるといいな」
 直接的な言葉に、アンジェリカはびくりと身体を震わせた。
「あ……あの……」
「俺の世継ぎとお前の実家の跡継を作りたい。それが俺たちの望みだろうが?」
 耳元に形のいい唇が近づく。豊かな乳房の先が引き締まった胸に触れ、肉杭を咥え込んだ秘部がひくりと震えた。
「ん……私……あぁ……」
 愛しい鉄杭で貫かれた蜜洞が、男の息づかいに反応してきゅっと収縮する。
 襞全体で、雄の証を抱きしめようとするように。
 アンジェリカの灰色の目がぼんやりと王太子殿下の姿を映し出す。
 緑の瞳に、室内灯の弱い光でもきらめいて見える金の髪。
 生きて動いているのが信じられないほど綺麗な男だ。なのにこの絶世の美男子であるエルヴァンが口にすることときたら……。
「ほら『毎晩私と番って、お腹に子種を注いでください』といってみろ」
「あ……あ……嫌……」
 あまりに卑猥な言葉にアンジェリカの目に涙が浮かぶ。
「何が嫌なんだ。俺たちの子を一日も早く作るんだろう?」
 薄い唇が紡ぐ言葉に、アンジェリカの初心な身体が震えた。
 肉杭を咥え込んだ裂け目からたらりと滴が伝う。
「違うのか」
「ち……ちがい……ませ……ん……」
 アンジェリカの脳裏に『王宮から出られなくなった理由』が浮かんだ。
 思い切り腹に『尊いお方の種』を注がれたからだ。
 国王夫妻も側付の役人も侍女も衛兵も、そして何よりアンジェリカ自身が油断していたのだ。
 王太子でありながら二十五歳を過ぎても独身を貫く、気高く美しい変わり者が、女を強引に抱こうとするはずがない、と。
 ──こ、この方……ただの変わり者じゃなくて……計画犯でした……っ……!
 ぎゅっと目をつぶるアンジェリカの耳元で、声がした。
「これからも俺の側にいて、俺に抱かれていればいいんだ、分かるな? それで全てがうまくいく」
 耳を噛まれ、頬にからかうように口づけされ、最後に唇に接吻され、アンジェリカはエルヴァンの広い背中に縋り付く。
「そ、それは……あ……」
 不意に一番奥をぐりぐりと突き上げられ、アンジェリカの目尻から涙が零れた。
「やぁ、やだぁ……っ、急に……っ、ああ……あぁぁっ」
「ほら、もっと脚を開いて、俺の身体にこすりつけてこい」
 エルヴァンの声と共に、つながり合った部分を守る和毛がさりさりと音を立てた。
 逞しい杭に奥を押し上げられ、アンジェリカの喉から快楽のうめきが漏れる。
「ひ……っ……」
「可愛い声だ」
 かすれたアンジェリカの嬌声が愛しくてたまらない、とばかりにエルヴァンが言う。
 アンジェリカは身もだえしながらも首を横に振った。
「そ、そんな……嘘……嘘、あぁ……」
 この低く迫力のある声のせいで何人の人に誤解されたか。
『怒っていませんか……?』と。
「俺は、お前の理性的で抑揚のない声が、俺と寝るときだけ乱れるのが好きだ、可愛くてたまらん。その気位の高そうな声で、もっと卑猥なことをねだってくれ」
「な……んで……こんな声を好きだなんて……あぁ、あ……」
 反論しようとしたが、言葉が途切れてしまった。熱杭で穿たれた身体が火照り、疼いて、まともにものも考えられないからだ。
 真っ赤な顔で逞しい裸体に縋り付きながら、アンジェリカはエルヴァンと同じように身体を揺すり、淫らな場所をこすりつけ合う。
「どうだ、俺と寝るのも悪くない……だろう? 俺の可愛いアンジェリカ」
 一瞬エルヴァンの息が乱れたが、アンジェリカには気づく余裕もない。
「あ、エルヴァン様……これっ……これ以上、なさったら、わた……くし……」
 快楽に泣きじゃくりながらアンジェリカは腰を揺する。
 身体中汗だくだ。でもこの汗は自分のものなのか、エルヴァンのものなのか。
「ほんとに、だめ……また、いっちゃ……っ……いやぁ……っ……」
「可愛いな、もっと啼かせたくなる……ほら、その俺好みの声で孕みたいと言え」
 淫猥な命令と共に、アンジェリカを抱きしめる腕に更に力がこもる。
「その可愛い声で俺の命令を復唱しろと言った」
「……っ、あ……はい……はい、エルヴァン様……あの、私、孕、あ……あぁ……」
 言われたとおりに恥ずかしい言葉を復唱しようとしたのに、声にならなかった。
「エルヴァン様……これ、だめ……んぁ……っ……」
「何が駄目なんだ?」
 意地悪な口調で問うと、エルヴァンは中に収めた肉茎をゆっくりと前後させた。
 ぐじゅ、ぐじゅと淫らな音が響く。
 一度目の性交で注がれた白濁があふれ出し、アンジェリカの柔らかな尻を伝って敷布にしみを作る。
「は……あ……」
 身体の下で、アンジェリカは必死に声を殺し、唇を噛む。
「脚を開け。俺にしか見せない恥ずかしい格好をしてみろ」
 エルヴァンの腕が膝裏にかかり、脚を開かせた。より深くまで彼のものが入ってくる。アンジェリカは無我夢中で、握られた両手をぎゅっと握り返した。
「ああ、お前はいつ抱いても本当に綺麗だな」
 満たされた声音でエルヴァンがつぶやいた。
「初心なくせに貪欲な身体で、本当に可愛いよ、顔と声に似合わず」
「エルヴァン様……何を……」
 再び接合部を優しくすりあわせながら、エルヴァンがアンジェリカに頬ずりする。
「可愛いと褒めてやったんだ……少しは喜べ」
「……っ……あ……恐れ多くて……ンッ!」
「俺から散々搾り取っておいて、今更何が恐れ多いんだ?」
「や、やだ、わざとじゃ……あ、あぁ……」
 逆らうなとばかりに、執拗に剛直の付け根をこすりつけられて、アンジェリカの目の前に星が散った。
「私は……可愛く……な……んぁっ」
「俺が可愛いと思っているんだ。逆らわず、俺とまぐわっているときは『私は可愛い』と言え、いいな?」
「む……無理……ん、っ、んんっ……」
 アンジェリカは嫌々と首を横に振る。
 生まれつき冷たく可愛げがないはずの声が、媚まみれになって喉の奥からあふれ出してくる。自分の声が知らない女の声に聞こえる。
 半身を起こし、身悶えるアンジェリカの表情を確かめると、エルヴァンは満足げに笑った。
「お前だけは他の男に抱かせたくなかった」
 ──え……?
 自分を悦楽に溺れさせ、甘く責めさいなむ男の言葉を理解できないまま、アンジェリカはぎゅっと歯を食いしばる。
「ん……んっ……」
 脚の震えを止めようと、アンジェリカはつま先で不器用に敷布を掴もうとした。
 だが絶頂が近いアンジェリカの様子にエルヴァンはめざとく気づいたようだ。
「アンジェリカ、もっといやらしい体位にしていいか?」
 開いた脚の間に割り込んだ男が、甘くほの暗い声で告げる。
「い、いや…………きゃぁっ!」
 大きな両手がアンジェリカの膝頭にかかり、肩の上に担ぎ上げた。
 密着感が深まり、アンジェリカの唇から熱い吐息が漏れる。身体を離し、やや半身を起こした姿勢で、エルヴァンは再びゆっくりと杭を前後させた。
「お前くらいだぞ、俺の前でこんなに破廉恥に脚を広げても許される女は。俺は女に媚を売られるのが、昔から反吐が出るほど嫌いだったからな……」
「ん、く……ぅ……」
 ──深い……。
 己の指さえ届かない奥深くまでエルヴァンを呑み込む。もう完全に捕まった、彼が情を遂げるまで……アンジェリカのお腹の中が白い欲望で満たされるまで逃げられない。
 けれど逃げられないという認識すら、甘美な喜びを伴う。
 ──ああ、私……エルヴァン様になら何をされてもいい……。
 そう思った刹那、熱かった身体がますます火照る。
 自由を奪われ深々と貫かれた姿勢で、アンジェリカは無意識に腰を揺らした。
 蜜洞が身体を穿つ肉棒に吸い付いていく。
「ああ、やぁ……」
 恥ずかしさと快感に涙が止まらない。かすれた声で啼くアンジェリカを見下ろし、エルヴァンは笑って、濡れそぼち泡立つ接合部を再びぐちゅぐちゅとこすり合わせる。
「ひ……」
 アンジェリカの目の前にまた白い星が散った。空に投げ出されたつま先が掴めるモノもないのにむなしく曲がる。
「そんなに締めるな、食いちぎる気か」
 エルヴァンの喉に汗がつたう。
 咥え込まされたモノが質量を増し、アンジェリカの中で硬く反り返っていくのが分かる。
 大きな両手と己の手がしっかりとつなぎ合わされた。
「今頃何人の男が地団駄を踏んで悔しがっているだろうな……こんなに美しい、いい女を俺に独占されて……」
 エルヴァンの呼吸も、いつしか激しく乱れていた。
「だ、誰も……悔しがってなんか……あぁ……」
「馬鹿……、気づいていないのはお前だけだ……くっ」
 言い終えたエルヴァンがかすかに声を漏らす。同時に昂りがアンジェリカの深い洞の奥に絡みつくような劣情をほとばしらせた。
 どくどくと多量の熱液が腹の中を満たしていく。
 アンジェリカの脚を肩から下ろし、エルヴァンが身体を倒してアンジェリカの震える身体を抱きしめる。
 汗の匂いと激しい鼓動が、もうろうとするアンジェリカを包み込む。
 アンジェリカの乳房が厚い胸板に押しつぶされる。
 彼を受け入れた場所全体がヒクヒクと震えうごめき、ひとしずくの精も逃さない、とばかりにぎゅっと狭窄する。
 声も出せずに、ぐったりと身を預けるアンジェリカの耳に唇を寄せ、エルヴァンが言った。
「もう一回しようか?」
 エルヴァンのとんでもない提案に、一瞬気が遠くなった。
 今ので二度目だというのに、信じられない。アンジェリカは彼の大きな身体の下に組み敷かれたままイヤイヤと首を横に振る。
 そしてすぐに後悔する。
 自分に出せる中で一番優しい声で『今日はもうお休みくださいませ』と言えばよかったのだ。
 ──どうして私は、こうなのかしら。
 愛想も素っ気もない冷たい女と言われ続け、いつしかその名にふさわしい言動しか出来なくなってしまった。
 そっと唇を噛むアンジェリカを抱く腕に力がこもった。
 ──え……今の答えで喜んでいらっしゃる……?
 驚くアンジェリカの耳元で、甘く艶やかな声が響く。
「……ふん。まあいい、分かった。どうしようもないほど可愛いお前だから許す」
 隙間なく肌を押しつけ合い、エルヴァンが小声で笑った。
「早くお前と結婚したい。毎日お前が『王太子妃』として俺を待っているというのは最高だろう。いや絶対に間違いなく最高だ」
 ──大変に変わったご趣味……です……エルヴァン様……。
 ご機嫌なエルヴァンに抱きしめられたまま、アンジェリカは目をつぶる。
「今度リッカルトが王都に戻ってきたら、散々目の前でいちゃついてやる。そうすればあの冷徹男も、俺とお前の仲の良さを認めるだろう。甘い時間を過ごす相性ぴったりの仲良し新婚夫婦になれることを見せつけてやろうな」
「え? 今なんと……父に何を見せつけるのでございますか?」
 アンジェリカは思わず目を開け、エルヴァンの顔を覗き込む。
 彼の切れ長の美しい目が、エメラルドのようにきらめいた。
「俺とお前のイチャイチャ仲良しぶりだ」
「私と……エルヴァン様……の……?」
 アンジェリカの頭が真っ白になった。
 鬼将軍と呼ばれる父にそんな物を見せたらどんな事態が起きるのだろう。
「何を不思議そうな顔をしている。俺は最近、お前のことを一日中のろけまくっているんだぞ? 同じのろけ話をリッカルトにも聞かせてやろうと思っているだけだ」
 エルヴァンの胸に抱かれたまま、アンジェリカは尋ねた。
「あ、あの、聞くのが恐ろしいのですが、のろけとはどのような……」
「そうだな、例えば……お前が何をしていても可愛いこと、綺麗なうえに賢いこと、あとは、お前が美人過ぎてなんでも似合うから、宝石をかき集めて指輪と首飾りを山ほど作らせている話かな。俺がのろけるたびに、皆口を開けて絶句するから笑えるぞ、今度お前もあいつらの阿呆面を見物に来い」
 ──な……予想外……過ぎます……!
 心の中にむずむずと得体の知れない感情が湧き出す。
 声にするなら『やめてー!』となるだろうか。だが高貴な彼に向かってそんな言葉を吐くわけにはいかない。
 恥ずかしい。顔面の筋肉が不随意運動を始める。だが普段、完璧な無表情を貫いてきたお陰で、アンジェリカの顔がビキビキと引きつった。
 ──い、痛い……動かし馴れていないから顔が痛い……。
 そう思いながら、アンジェリカは小さな声で言った。
「おやめください、そのようなおふざけを、臣下の皆様の前で」
 恥ずかしいのだ。多分顔には出ていないのだが……恥ずかしい。
「事実だからやめる気はないな」
 そう言ってエルヴァンがからかうようにアンジェリカの火照った耳を噛んだ。
「エルヴァン様が急にそのような冗談を仰ったら、皆驚きます。殿下は知的で落ち着いた方と皆思っておりますのに」
「褒めてくれるのか、かわいい女だ」
「違います。エルヴァン様が皆から敬意を払われているのは事実です。褒め言葉でもお世辞でもございません」
 アンジェリカの頬が熱くなる。
 ──い、痛い……顔に血が通うと……痛い……。
 気が遠くなってきた。
 アンジェリカは諦めて再び目をつぶる。
 ──殿下、私は『殿下を騙した氷の悪女』と言われているのです。
 エルヴァンが『アンジェリカ・ブロンナーを王太子妃に迎える』とお触れを出したあと、阿鼻叫喚のるつぼと化した社交界の様子を思い出す。
 ──更に申し上げれば『殿下の女の趣味は最悪だ』と言うものまでおりまして。殿下を侮辱するのは許しがたいのですが、言っていることは真実です……ああ……私はいったいどうしたら……。
「眠いのか? お前は眠そうな顔まで可愛いな」
 ──可愛くありません。エルヴァン様のご趣味が変わっておられるのです……。
 額に口づけを受けながら、アンジェリカはゆっくりと眠りに吸い込まれていった。
 そして、夢を見た。
 ここは、父とともに半年ほど滞在した北部駐屯軍の本拠砦の中だ。
 足元に淡い紫のシャガの花が咲いているから、多分間違いないだろう。
 殺風景な石の砦に、綺麗な花が咲いているのが嬉しかった。
 この世界には、本来こうやってたくさんの命が懸命に息づいている。
『戦争』したり『国境』を作ったりしているのは人間で、自然はただ人間たちのすることを受け入れているだけだ。
 父はいつもアンジェリカに同じ話をした。
『いつか、国境砦が全部なくなり、王立軍も存在しなくなる日が来ればいい。それが父様の目指す平和だ、アンジェリカ』
 シャガの花を見ていると、父と共に軍事拠点を転々としていた幼い日々が浮かぶ。
 ──ああ、あのシャガの花は、北の砦に咲いていたものだわ、多分……。
 夢の中のアンジェリカは、今よりもはるかに視点が低い。
 おそらく四、五歳頃の夢を見ているのだろう。
『リッカルトはどこに行った?』
 アンジェリカの目の前に、まばゆいほどに美しい金髪の少年がかがみ込んだ。目の色は緑色で、身体中きらきら輝いていてとても綺麗だ。
『あっ、おうじしゃま!』
 幼いアンジェリカは、その少年をうっとりと見つめる。
 この綺麗な人は、『みやこ』から『しさつ』にやってきた『王子様』だと父に習った。
 偉いお方らしい。
 アンジェリカは、大きくなったら父と一緒にこの王子様にお仕えするのだ。
『こんにちはでございましゅ』
 張り切って挨拶すると、王子様が微笑んだ。
 質問にちゃんと答えたら褒めてもらえるに違いない。
 そう思いながら、アンジェリカは小さな胸を張って元気よく答えた。
『おとうしゃまは、かいぎ。おしごと。アンジェリカは、ぐんじくんりぇ……ぐんじ、くんれんを、していま……す』
 手に棒を握った幼いアンジェリカにそう言われ、少年が笑い出した。
『それは勇敢なことだ。お前は、そんなに小さいのに軍に興味があるのか』
『うー……きょうみ……ってなに……』
 質問が難しいので正直に答えると、王子様は少し考えて分かりやすく尋ねてくれた。
『リッカルトのようになりたいか?』
 もちろんだ。アンジェリカの父は世界一強くて格好いい。アンジェリカも大きくなったら父のようになりたい。
 アンジェリカは、父が大好きなのだ。
 早く大きくなって、父のお手伝いをいっぱいしたい。
『そう、アンジェリカは、おとうしゃまといっしょに、くに、まもりましゅ』
 幼いアンジェリカの意外としっかりした答えに驚いたのか、王子様は目を丸くしたあと、鮮やかに微笑んだ。
『そうか』
『うん、はい、そうでしゅ。アンジェリカは、おとうさま、てつだう……ましゅ』
『なあアンジェリカ、お前大きくなったら俺の妃になるか?』
 王子様に尋ねられ、アンジェリカはきっぱりと答えた。
『いいえ。アンジェリカは、りっぱなへいたいしゃんになります』
 アンジェリカの答えに、少年が張りのある声で大笑いする。華奢な容姿に似合わぬ力強い声だった。
『俺の妃のほうがいいと思うぞ』
『アンジェリカは、へいたいしゃんのほうがいいです! だって、そしたら、おとうしゃまと、ずっといっしょにいられる』
 そう答えると、少年はアンジェリカの小さな頭に手を置いて、先ほどとは打って変わった優しい声で言った。
『そうか、お父様が一番好きか。可愛い奴だ。ではお父様の次に俺を好きになれ』
『うん』
『俺は、俺についてきてくれる女がほしい。お前がそうなってくれたらいいな』
 ──ああ……懐かしい……これ、エルヴァン様と私だわ……。
 眠っているアンジェリカの唇がかすかに綻ぶ。
『棒を持って走ったら危ない。転んだときに刺さったらどうする』
 少年姿のエルヴァンが、幼いアンジェリカが大人の目を盗んで振り回していた棒きれを取り上げる。
『かえちて! けんを、かえちて』
 やんちゃなアンジェリカをものともせず、エルヴァンがさらりと話を変えた。
『そうそう、俺は馬を見に行きたいんだ。どこにいるか教えてくれないか』
『おうまはこっち!』
 あっさり気を逸らされたアンジェリカが、元気よく走り出す。その手を捕まえ、エルヴァンが笑いながら言った。
『お前は足が速いぞ。俺の弟より速いかもしれない』
 ──小さな頃から……私をおからかいでしたね……妃になれ……なんて……。
 そう思いながら、アンジェリカの意識は更なる眠りの底へと引きずり込まれていった。

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