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極上王子、運命のつがいを拾う

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書籍紹介

愛しいおまえに、とことん快感を味わわせたい

奴隷市から逃げ出したシャルエルは、美貌の王子モデストロの馬車に飛び込む。助けてほしい一心で縋ると、力強く抱きしめられて。「発情期なのか? たまらない匂いだ」硬く凝った胸先をねっとりと舐られ、腰の奥が強烈に疼く。熱杭を迎え入れた愛蜜塗れの身体は歓喜に震え……。身分差のせいでつがいになれないけれど、せめて傍にいたいと願う。すると意外な真実が明らかに――!?

ジャンル:
西洋 | ファンタジー
キャラ属性:
王子・王族・貴族
シチュエーション:
玉の輿・身分差 | 甘々・溺愛 | 幼馴染・初恋の人
登場人物紹介

モデストロ

ブルタニア王国の第二王子。横暴な兄の迫害を避けるために隠遁生活を送っていたところ、乗っていた馬車に突然シャルエルが飛び込んできて……?

シャルエル

容姿に優れ発情期があり、売買されやすいギューフ族の娘。奴隷市から逃げ出してモデストロに出会い、保護される。

立ち読み

 はぁ、と吐き出した息がひどく熱かった。
 全身のいたるところが、長い時間焚き火にでもあたったかのごとく火照っている。それは、ただ熱いだけのものとは何かが違っていた。
 特に変な感じがするのが、腹部だ。
 へその奥のほうがどろどろに溶けだしたかのように、じゅくじゅくとうずく。最初は病気なのかと思ったが、それとは明らかに違うとだんだんとわかってきた。
 何故なら、そこは痛いどころか、甘い感覚を秘めていたからだ。そのうずく部分に手を伸ばして、思いっきり擦りあげたならば、どんなにスッキリするだろう。
 それがどうしてもできなかったのは、シャルエルは今、人通りの多い市街地にいるからだ。
 ブルタニア王国の王都、ロンディウム。このブルタニア島の南部を流れる巨大なアムレカ河の河端に位置し、古くから栄えた重要な都市だ。
 生糸の王立取引所もあり、市街地には立派な建物が立ち並ぶ。目の前の道には、馬車が行きかっていた。
 広い道路は立派な石畳で覆われていたが、疾走する馬車の数に補修が間に合っていないようだ。ところどころ石畳がめくれていて、剥き出しになった泥を次々と馬のひづめが蹴り上げる。
 その細かな泥で、もともと粗末な布でしかなかったシャルエルの服は穀物袋みたいになっていた。
 ──ここが、ロンディウム……。
 シャルエルの住んでいたウェールズの森から、馬車で三日もかかる巨大な街。ブルタニア王の宮殿があるところ。
 道路の左右に立ち並ぶ立派な家は、シャルエルを拒むように高い柵で囲まれていた。
 門の前には武装した兵がそれぞれに立っているから、見知らぬものをかくまってくれそうにない。勇気を出して近づいたところで、その槍先で追い払われるのがオチだろう。
 ──逃げ切るためには、もっと小さな家のある、ゴミゴミとしたところに行かないと。
 いくら山で育ったシャルエルであっても、それくらいは理解できた。
 もっと見通しの悪いところに逃げこまないと追っ手に見つかってしまうのに、方向の感覚もなく走り回っているうちに、こんなお屋敷街に紛れこんでしまった。
 焦りの中で、シャルエルの身体の熱も増していく。
 靴は、逃げ回る最中に脱げてしまった。
 急速に伸びた背に、ふくらみを増した乳房。この奇妙な身体の成長に、何より戸惑っているのはシャルエル自身だ。
 そのあげくに生じた熱っぽいうずきに、もはやどう対処していいのかわからない。こんなことがもうじき起きるはずだと、隣の檻にいたギューフ族のメスに、教えてもらってはいたのだが。
 ──これが、発情期なの?
 少し前まで、シャルエルは檻の中にいた。馬車で運ばれていったのは、街はずれの倉庫街だ。今夜、ギューフを売買する市が開かれ、シャルエルはそこに売り物として出されるはずだった。
 ──だけど、冗談じゃないもの。
 自分がギューフ族だという自覚など、ほんの二週間前まで、シャルエルにはなかった。
 そのときまで、シャルエルはブルタニアの大多数を占めるマン族の一人だと思いこんで育ってきたのだ。
 だが、ギューフを売買する奴隷商人が、ウェールズの深い森にある掘立小屋の戸口に現れた。そのときに、すべては引っくり返された。
 かつてブルタニアにいたのは、たった二つの種族だけだったと、シャルエルは物知りの爺から幼いころに聞かされている。
 その二つとは、アンズス族とギューフ族だ。
 アンズスというのは、すでに姿を消した神の血を継ぐ種族だ。最高神であるオーディンを信仰しており、このブルタニアの支配階級でもある。オーディンは戦争と死をつかさどり、知識に対して非常に貪欲な神だ。
 アンズスたちは皆長身で、身体能力も高く、知能も優れていた。各州に州長官を置き、王の支配を全土に行き渡らせている。現在、王をはじめ、州長官や州の重要な役職を占めるのは、すべてこのアンズス族だ。
 もう一つがギューフ族であり、こちらは精霊の血を継ぐといわれていた。
 二つの種族はかつてこの広大な島であるブルタニアの別々の場所で、互いに干渉することなく暮らしてきた。
 そのバランスが崩れたのは、旺盛な繁殖力を持つマン族がエウロパ大陸で増えすぎて、このブルタニア島まで押し寄せてきたためだ。
 そのため、マン族と、もともといたアンズス族とギューフ族との間で戦争になった。マン族は数では勝っていたが、屈強で賢いアンズス族に勝つことは不可能だった。それでも、次々と押し寄せてきたマン族はアンズス族と契約を結び、被支配階級としてブルタニアに住むことを許された。
 生命力にあふれ、旺盛な繁殖力を見せるマン族は、それからブルタニアを劇的に変えていった。土地は切り開かれ、人口が爆発的に増えていく。
 アンズス族とギューフ族は、いつしかそのマン族に呑みこまれる形となった。アンズス族の支配階級の一部は依然として純血を保っているが、ギューフたちは今や独自の都市や集落を持たない。自分たちがギューフ族であるという自覚すらないまま、この社会の最下層として存在している。
 それが、ブルタニアの大まかな歴史だ。
 ──だけど、この話の中に、ギューフ族はあまり出てこないのよ。マン族との戦争のときに、ギューフ族はいったい何をしていたの?
 単に役に立たなかった、ということだろうか。屈強なアンズス族に比べて、精霊の血を継ぐというギューフ族は、シャルエルが考えてみてもあまり役に立ちそうにない。
 三つの種族は、交配が可能だった。長い年月の間に種族の血は混じり合い、今では誰がどの種族なのか、外見だけで判断するのは困難だ。
 ただ、子は成長していくにつれ、三つの種族の特徴のどれかを身体に宿すようになる。
 特にそれが顕著に現れるのが、性においてだった。
 ギューフに特徴的なのは、発情期だという。発情期が来るとギューフの身体からは驚くほど甘い匂いが放たれ、アンズスやマン族を強烈に惹きつけ、生殖行為へと誘いこむ。
 その発情期が三ヵ月ごとに訪れ、一週間ほど働けなくなるために、特に食うや食わずの困窮世帯では、ギューフは役立たずの厄介者だと疎まれることが多かった。
 それもあって、貧しい親は自分の子がギューフとしての特徴を現さないようにと願い、情が湧かないほど早期にギューフだと判明した場合には、ギューフを専門に扱う奴隷商人に売り払うことがある。
 普通の子は発情期が来るまで、ギューフだとわからないことが多い。だが、熟練の奴隷商人には見分ける眼力があるらしい。
 奴隷商人は幼いころにギューフだと見こんだ子を親元から買い取り、それぞれの養い親に発情期まで育てさせ、年頃になったら回収に来るそうだ。
 売り払われたギューフの子は、発情期が来るのに合わせて性奴隷として高値で売買される。その容姿が優れていればいるほど、価値は高い。
 シャルエルが住んでいた森の掘立小屋の戸口に現れたのが、その奴隷商人だった。
 ずっと自分の身内だと思いこんでいた爺は、奴隷商人に養育を委託されただけの養い親に過ぎないのだと、シャルエルはそのときに初めて知った。
 自分がギューフだということもだ。
 爺は奴隷商人の出現に、ひどく驚いた顔をしていた。
『まさか』
『まさか、ってのは、こっちのセリフだよ。こんな森の奥に住んだら、逃げ切れるとでも思ったか? あいにく、俺たちは鼻が利くんでね』
 シャルエルを捕まえようとする奴隷商人の腕に、爺はすがりついて拒んだ。
『ダメだ! 私の大切な娘だ! 連れていくな……!』
 だが、奴隷商人は持っていた杖で爺の頭を強く殴った。爺は地面に倒れ、その隙にシャルエルは回収された。爺の頭から血が出ていたが、無事だったのだろうか。
 ──じぃじ……。
 爺のことを思い出すたびに、シャルエルは泣きそうになる。
 爺は金で頼まれただけのはずなのに、そうとは思えないほど、シャルエルを大切に育ててくれた。
 吹雪が続いて食べ物が調達できなかったときには、自分は食べずともシャルエルには食べさせようとしてくれた。皺だらけの手で大切そうに本をめくり、シャルエルにいろいろなことを読み聞かせ、知恵を授けた。
 奴隷商人に回収されたシャルエルは、このロンディウムに運ばれ、その倉庫で発情期が来るまで動物のように飼われたのだ。
 そこには、同じく回収された若いギューフのオスとメスが、ずらりと並んだ檻に入れられていた。発情期を迎えた子から引きずり出され、二度と戻ってこなかった。競売に出されて、高値で売り払われたのだという。
 ──だけど、そんなの、冗談じゃないわ。
 まだシャルエルは、自分がギューフだということにも納得していない。
 性的なものにも、嫌悪感があった。
 奴隷商人の倉庫にまでギューフを見定めにくるような脂ぎった金持ちの男に、裸にされてべたべた触られるなんて、想像しただけでも鳥肌が立つ。
 だが、シャルエルの身体には日に日に発情期の兆しが現れていた。
 体温が上がり、白い肌がぼうっと赤らんでくる。
 乳房も張って、乳首も尖るらしい。シャルエルの身体を無遠慮に服の上から触って確認した奴隷商人は、今夜、シャルエルを市で売り払うことに決めた。
『ようやく、このじゃじゃ馬も片づくな』
『嫌よ。売られるなんて、冗談じゃないわ。早く私を、ここから出しなさいよ!』
 シャルエルは檻の中から叫んだ。さんざん暴れ、一度は檻を壊したせいで、シャルエルの手はずっと檻につながれていた。だからこそ、胸を触られても振り払えなかった。その屈辱を思い出すだけで、今でも涙が浮かぶ。
 それに、身体に現れだした変調も不愉快でしかなかった。
『せいぜい、高値で売れてくれ。おまえは見かけは綺麗だが、じゃじゃ馬だからな。発情期になったら、少しはおとなしくなるか?』
『いい声で鳴くかもな』
 彼らはゲラゲラと笑った。
 どうしてギューフを売るのを発情期まで待つのかよくわからないでいたが、奴隷商人が言うにはその最中にギューフが発する匂いと深く関係しているらしい。
 ギューフの発情期の匂いは、適合する相手だけを特に強く惹きつける。それは、理性を狂わすほどに強烈で、運よくその相手が見つかった場合は、相手は金に糸目をつけずにギューフを買い求める。
 ──発情期の真っ最中に競りにかけられるなんて、性奴隷としてしか、ギューフを必要としていないってことよね。
 そう思うと、シャルエルは憤慨せずにはいられない。
 もっと自分は、いろいろできる。
 上手にパンを焼くことができるし、森で果物や食べ物を見つけるのも得意だ。
 森をうろつけば、果物やキノコ、木の実が採れる場所がわかる。土の中にある芋の位置まで感じとれる。
 何より得意なのは、ハチミツを採ることだった。
 だが、奴隷商人たちはシャルエルのそんな能力など知ろうともしなかった。
 ギューフは人として扱われていない。檻に入れられ、動物のように食事も排泄もその檻の中でしろと命じられた。
 ショックだった。
 悔しいし、理不尽だし、どうしてギューフだけがひどい扱いを受けるのかわからない。好きでギューフに生まれたのではないのだから、もう少しまともに扱ってほしい。
 だからこそ、ギューフ市の会場に檻ごと運びこまれ、全身を洗って磨かれた後で一人にされたときに、シャルエルは隙を狙って檻の鍵を外し、必死で逃げだしたのだ。
 ──ざまぁみろだわ!
 鍵は複雑に金属を折り曲げた作りだった。ギューフにそれを外せる知能はないと、奴隷商人たちはたかをくくっていたようだ。だが、シャルエルはその手の鍵を玩具として爺から与えられて育った。
 自分でも笑ってしまうほど鮮やかな手つきで、鍵は外れた。
 それから夜の闇にまぎれて、追っ手から逃げているのだ。
 帰る場所は爺と住んでいた森の掘立小屋しかないのだが、あの場所には戻れない。
 何せ奴隷商人に、知られている。戻ってまた見つかることがあったら、爺は今度こそ殺されてしまうだろう。
 だから、どこかかくまってもらえる場所を、探しながら走っている。下働きでも何でもする。だから、助けてほしい。
 森でもあれば逃げこめるのだが、ロンディウムの市街地は信じられないほど広く、走っても走っても街の突き当たりに達しない。
 それどころか、自分はどんどん中心部に向かって走っている気がするのだ。
 ふと足を止めれば、立派な建物ばかりが立ち並び、馬車の行きかう大きな道に立っていた。ここから早く抜け出したいのに、迷路のような作りになっているのか、どれだけ走っても同じあたりをうろついている気がする。
 不安ばかりが募っていく中で、シャルエルは乱れた息を整えようと暗い空を見上げた。
 そのとき、不意に声が響いた。
「あそこだ……!」
 自分を追っている奴隷商人の声だと認識するや、シャルエルは再び振り向きもせずに走り始めた。
 足の裏に砂利の混じった冷たい石畳の感触が伝わってくる。小石で足の裏を傷つけたのか、地面に足がつくたびにズキズキと痛んだ。
 ──誰か、……誰か、だれか……!
 走りながら、シャルエルは必死で周囲を見回し、無意識に空気の匂いを嗅いだ。そうせずにはいられない。
 この身体のうずきを癒やしてくれる人を本能的に探しているのだ。
 誰でもいいわけではない。自分に適合する誰かだ。それが誰なのか、どんな姿をしているのか、シャルエルにはわからない。
 猛烈な勢いで疾走する馬車に跳ね飛ばされそうになりながら、シャルエルは太い道を渡り終え、暗闇に身を紛れこませようとする。
 そのとき、シャルエルはぞくりとするほどいい匂いを嗅ぎ当てた。
 反射的にそちらのほうを向く。
 立派なお屋敷があった。屋敷をぐるりと取り囲む鉄柵が一部だけ開いていて、その内側の道路に近いところに四頭立ての馬車が停められている。
 馬車のドアは大きく開かれ、屋敷から出てきた立派な服装をした誰かが、馬車に乗りこむために踏み台に足をかけたところだった。
 ──あの人だわ……!
 そちらからひんやりとした風が吹いてきた。匂いに誘われるまま、シャルエルはその馬車に向かって懸命に走った。
 急がなければならない。馬車が走りだしてしまえば、シャルエルに追いつくすべはない。
「っは……!」
 息が上がった。
 近づいていくにつれ、馬車が立派で大きなことに驚かされる。側面には大きな金の龍の紋章が彫りこまれ、チラリと見える内装の内張も豪華だ。
 鉄柵の内側に走りこみ、虚を衝かれた形の警備の男の前をシャルエルはすり抜ける。
 御者が馬車の前から、踏み台を外そうとするところだった。その寸前に、シャルエルは一気に駆け上がり、馬車の中に飛びこんだ。
 座席に、彼が座っている。
 すぐそばから見た顔立ちが、見惚れるほどに整っていることに驚いた。
 鼻梁が高く、くっきりとした二重の目だ。灰色の、どこか厭世的な目の表情が見てとれる。その鋭く切れ上がった目で、彼は闖入者をとがめるようにきつくシャルエルを見据えた。
 整った顔のラインを縁取るのは、赤銅色の長い髪だ。
 ──綺麗。……こんな綺麗な人を、初めて見た……。
 いつまでも、ただ見ていたくなるような、非の打ちどころがない顔立ちだった。見ているだけでも、心の奥がぞくっと痺れる。
 さらに彼の匂いを間近で嗅いだことで、何もわからなくなった。
 ──もうダメ。……たまらない。
 頭の中がぼうっとする。息を吸うたびに、鼻孔から入りこむ香りが下腹まで痺れさせ、身体の中で何かが爆発する。
 もっとその匂いを嗅ぎたくて、シャルエルは顔を彼の胸元に押しつけた。思いっきり濃厚な匂いを吸いこむと、目までチカチカした。シャルエルはさらに全体重をかけてのしかかり、顔を押しつけた。
 自分が初対面の人に、どれだけ非礼を働いているかもわからない。
「……おい……っ」
 抗議するような声が上がったが、止められなかった。
 このすごく気持ちのいい匂いを、ひたすら嗅いでいたい。
 一度、彼に頭をつかまれて、強い力で引きはがされた。だが、その口から漏れる甘い匂いに気付いた途端、何も考えられずにその匂いの元に噛みついた。
「っぐ!」
 びっくりしたように、彼が声を上げる。それでも、シャルエルは彼の頬を両手で包みこみ、その口をがむしゃらに求めた。
 最初はガチガチと歯が当たったが、だんだんと彼の力が抜けていく。口腔内で舌と舌がからんだ。その舌を互いに擦り合わせるのが気持ちがいいとわかってからは、シャルエルのほうから積極的に舌をからめていくようになった。
 彼の舌は、とても熱かった。いくら食べても食べ足りないような、強烈な飢餓感が掻き立てられる。手や頬に触れる彼の頬はなめらかで、髪からもとてもいい匂いがした。
「おま、え……っ」
 しがみついてくるシャルエルを払いのけようと、何度も彼の手が動いた。
 だが、押しのけられても、シャルエルは角度を変えて唇を押しつけるのを止められない。それくらい彼の唾液は甘く、それをもっと飲みたいという欲望が抑えきれない。
 すでに理性は吹き飛んで、どれだけ自分が動物じみた衝動に身を任せているのかも、自覚できずにいた。
「っふ」
 次第に彼の抵抗が弱くなり、目から強い光が消える。だんだんと、シャルエルの舌の動きに応えて舌が動き始めた。彼のほうからも積極的にシャルエルの舌をむさぼってくる。
「ふ、……ん、ん……っ」
 ぬるぬるとした舌の感触が気持ちいい。
 ずっとキスを続けていたい。
 そんなふうに思ったシャルエルが不意に現実に引き戻されたのは、遠くから奴隷商人らしき声が聞こえてきたからだ。
「どこだ! あいつ!」
 その声が聞こえるなりシャルエルは慌てて開けっ放しだった馬車のドアを閉じ、彼にすがりついて懇願した。
「助けて……っ!」
 それしか考えられない。
 こんなにも身体が熱く、力が抜けた状態ではもう走れない。それに、彼とこんなふうにもっとくっついていたい。
 彼は呆れた顔で、シャルエルを見た。
 最初はひどく冷ややかに見えた灰色の瞳が、今はどこか熱を帯びているように見えるのは、気のせいだろうか。
 切れ長の形のいい目だけではなくて、唇の形も好みだ。いつまでも口づけていたくなる、ちょうどいい厚さの唇。その唇がどれだけ気持ちがいいか、シャルエルはすでに知っている。
 顔の端整さもそうだが、自分がしがみついていた彼の衣服が、高価そうなことにも驚いた。
 その服を汚したり、破損させたりすることにおびえて、シャルエルは身体を起こそうとした。
 だが、彼は逆にシャルエルの腰に腕を回して引き寄せると、馬車の前方に向けて声を放った。
「出せ!」
 その声の鋭さに飛び上がりそうになったが、御者に向けてだったらしい。
 声に呼応して、鋭く鞭が振られる音が聞こえた。直後に、馬車の大きな車輪がごとんと音を立てて動きだす。
 揺れる馬車の中で、彼はシャルエルにまっすぐ視線を向けてきた。
 そこには、側面にかけられた暗いランプしかない。その光が彼の目に反射して、ぬめるような輝きを放つ。こんな弱い光の中でも、彼の顔立ちの良さは際立っていた。
 じっくりと彼はシャルエルの顔を見定めて、納得したとばかりにつぶやいた。
「ギューフが発情して、飛びこんできたというわけか」
 冷静にふるまおうとしているようだが、彼の声はかすれている。何らかの身体の変調を、強引に抑えこんでいるようにも思えた。
 それはシャルエルも同じだった。彼と触れ合っているだけで、下肢が溶け落ちていくような甘い痺れを覚えていた。
 気がつけば、またシャルエルのほうから顔を寄せていた。

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