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完全版 ヴァンパイア・ホリック
永遠にあなただけ

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書籍紹介

彼らの「その後」を描いた書き下ろし番外編収録!

それは、恋という名の呪い。

孤独な吸血姫ファウスリーゼを激しく抱く、
傲岸不遜な屍鬼・真木名逸輝。
彼の胸に秘められた究極の愛とは――!

優しかった婚約者が豹変? 屍鬼と化した鳴瀬に
処女を奪われた真冬。執拗な愛撫と剥き出しの獣欲は
憎しみなのか、純愛なのか――?

ティアラ文庫で人気を博したヴァンパイアシリーズ2作に
その後の彼らを描いた書き下ろし番外編を収録した永久保存版!


★Contents★
『ヴァンパイア・プリンセス』
『ヴァンパイア・エロティクス』
書き下ろし番外編「ヴァンパイア・エクスタシー」

ジャンル:
ファンタジー
キャラ属性:
オレ様・S系 | クール
シチュエーション:
登場人物紹介

真木名逸輝(まきな いつき)

ファウスリーゼの屍鬼で元傭兵。傲岸不遜な性格で、ファウスリーゼと躰の関係を持つ。

ファウスリーゼ

千年の時を生きるリリスの少女。自らの感情をあまり表には出さず、毅然とした態度を守っていたが……。

繻宇司鳴瀬(しゅうじ なるせ)

真冬の幼馴染みのクールな青年。ファウスリーゼにかしずく屍鬼となっていた。冷徹な性格で屍鬼たちを差配するが……。

内藤真冬(ないとう まふゆ)

不死になる研究をしている科学者。人を寄せつけない物静かな性格。かつての恋人・鳴瀬と再会したけれど、彼は豹変していて……?

立ち読み

 目の前に死体がある。
 ファウスリーゼ・フォン・ザワークシュタインにとって、それはかつてありふれた日常だったが、今は事情が違った。ここは日本で、今が二十一世紀である以上、死体の始末は以前ほど容易ではない。
 ファウスリーゼは細い眉を顰め、傍らに立つ男を責めた。
「なぜ拾ってきたのですか」
「敷地内に死体があったらまずいだろ。まあ別に、てきとーに埋めてきてもよかったんだけどな」
 男は煙草を銜えたまま、肩を竦めてそう言った。埋めればいいとわかっているなら、なぜ持ち帰ったのかという理由は明らかだ。ファウスリーゼに対する嫌がらせである。それが被害妄想でないことは、ファウスリーゼにはよくわかっている。
 その証拠に、たった今気づいたような口ぶりで男が呟く。
「ああ、あんた、ガキの死体だけは苦手なんだっけ」
 その指摘に、ファウスリーゼは答えなかった。ファウスリーゼの周囲に侍る男たちの中で、彼女にこんな『嫌がらせ』をするのは彼こと真木名逸輝だけだ。
 自分が子供の死体だけは苦手としていることを、いつ知られたのかも曖昧で、ファウスリーゼにとって真木名は得体が知れない存在だ。確かに自分が造った屍鬼であるはずなのに、真木名は他のどの屍鬼とも違っていた。
 死体を前にして、真木名はファウスリーゼを急かした。
「どうする? そろそろ二十四時間経過するんじゃないのか? そしたら埋めるか燃やすかするけど」
 ファウスリーゼは、青白く褪色した死体の顔をじっと見た。天蓋つきのベッドに寝かされた死体は平凡な学生服姿で、ゴシック調のこの部屋では浮いた存在に見えた。緋色の絨毯もレースのカーテンもファウスリーゼ自身の好みではないが、ファウスリーゼの服装や雰囲気はこの部屋によく似合っていた。
 暫しの逡巡の後、ファウスリーゼは言った。
「子供は、屍鬼にはしない」
「子供ってほどの年じゃねーだろ。ほら」
 真木名が死体のポケットを漁り、手帳を取り出す。手帳は、写真つきの学生証だった。名前と住所、氏名、所属が記されている。
 内藤波留。十五歳。私立繻司高校一年二組。それが死体のプロフィールだ。
(繻司高校……)
 その学校名も、ファウスリーゼにとっては初耳ではない。真木名がこの死体を拾ってきた本当の理由は、もしかしたらそこにあるのかもしれなかった。
「あんたと同じくらいの年か。役に立つかもしれないぜ」
 真木名の指摘通り、ファウスリーゼ自身の見た目も十五歳ほどだ。実際に彼女の時が止まった時、彼女は十五歳だった。
 それでも彼女が死体を『子供』と評したのは、死体こと内藤波留の顔が少し幼かったのと、自身が長く生きすぎているためだろう。内藤波留は体も小さく、十三歳くらいにしか見えない。
 ファウスリーゼの指が、死体の首をそっと探り、頸椎が折れていることを確かめた。縊死なら残るはずの縄の痕がない。恐らくは事故か他殺だろうと推察された。
 躊躇っているいとまはなかった。
 ファウスリーゼが死体を屍鬼として蘇らせられるのは、死してから二十四時間以内に限られる。二十四時間以内なら、どれほど損壊の激しい死体でも蘇らせることができる。たとえそれが、千の肉片に刻まれていたとしてもだ。
 しかし二十四時間を経過したら、どれほど保存状態のよい死体でも屍鬼にはできない。千年の間、その原則だけは変わらなかったし変えられなかった。
 死体を前にして、ファウスリーゼが躊躇っているのは、これ以上屍鬼を増やしたくないからだ。
 ファウスリーゼ・フォン・ザワークシュタインは、千年前にこの世に生を受け、十五年間を人間として生きた。彼女が人間でいられたのはわずか十五年で、以降、彼女は屍鬼を造り出すリリスの母胎として生きた。彼女をそのような存在に変えた者は、すでにこの世にはない。ファウスリーゼがリリスとなった直後、その者は人間によって滅せられた。
 千年もの永きに亘り彷徨し続けながらも、ファウスリーゼが造り出した屍鬼はわずか六十六体。そのうち五十体は歴史の陰で人間によって滅せられ、またある者は屍鬼同士で殺し合い、現存しているファウスリーゼの屍鬼は、目の前にいる真木名を含めて十六体のみだ。
(いっそ他のリリスを見つけて、その家の庭に捨ててきてくれたらよかったのに)
 ファウスリーゼは甚だ身勝手なことを考えた。そうすれば運良く、そのリリスによって蘇らせられることもあるかもしれない、と。屍鬼として蘇ることが幸せであるかという命題について、ファウスリーゼはあえて今考えることをやめた。
 屍鬼を生み出すリリスは、ファウスリーゼの他にもいるはずだった。その証拠にファウスリーゼは千年の間、何度も自分が造ったのではない屍鬼に遭遇した。
 が、その母胎たるリリスには、未だ一度も相見えたことがない。そのことがファウスリーゼにはずっと不思議だった。
(探しても見つからないということは、意図的に姿を隠しているんでしょうね)
『他のリリス』を見つけ出すことが真木名の仕事だ。なのに現在まで、真木名が掴んできた情報は何もない。屍鬼の一人である繻宇司鳴瀬によって周到に用意された隠れ家に移動してきて一ヵ月、真木名が初めて起こした行動が、この死体を拾ってきたことだった。
 屍鬼は、母胎たるリリスから一ヵ月以上離れては生きられない。そのため、なるべくリリスのそばにいようとする。生きるための本能がそうさせるのだ。
(屍鬼になるのは、幸せなことなんかじゃない)
 死にたくないと願う人間にとって、一度でも死から免れるのは僥倖に思われるだろう。しかしそれには、対価を要求される。とてつもなく大きな対価を。
 その対価を、目の前に横たわった死体に背負わせるべきか否か。ファウスリーゼが迷うのは、まさにその点だった。
 ファウスリーゼに蘇らせられた屍鬼は、一見しただけでは生前となんら変わりない外見と行動を保つ。が、その内面には一点だけ、決定的な変化を生じさせる。
 ファウスリーゼはじっと、金色の眸で内藤波留を見つめた。内藤という、日本ではありふれた名前が、ファウスリーゼの心を掻き乱す。
(確かに、この街だった)
 北関東に位置する、繻司市。盆地に囲まれ、夏は暑く冬は寒い。工場地帯と田園が入り交じる、平凡極まりない地方都市だ。
 平凡な町並みは二十年前に一度、灰燼に帰した。戦後史上最大最悪の大火災は、今でも人々の記憶に新しい。その火災の現場に、ファウスリーゼは居合わせた。火災の発生原因は児童養護施設からの不審火と断定されたが、真実は違っていた。
 焔は、ファウスリーゼと敵対する屍鬼との戦闘で生じたものだった。結果、小さな町はほぼ壊滅した。人が死んだのは、火事のせいばかりではない。屍鬼たちが殺戮し、喰らい尽くし、燃やし尽くしたせいでもある。
 遅れて現場に駆けつけたファウスリーゼが救えたのは、わずか一名の子供だけだった。
(あの子に似ている)
 屍肉の焼ける施設の外れに、その子供、《ナイトウケイ》はいた。戦闘の開始地点となった児童養護施設内で生き残っていたのは、その子だけだった。ファウスリーゼは彼を連れ出し、それから一ヵ月ほど、ともに過ごした。痩せた、小さな男の子だった。
 ナイトウケイは、ファウスリーゼと暮らすことを望んだ。自分の造り出した屍鬼以外の生命体と暮らすことなど、リリスにはあり得ない。なのに一ヵ月だけとはいえファウスリーゼがその願いを聞き入れたのは、贖罪のつもりだった。ケイが住む街を燃やしたことへの。
 ケイは漢字が書けないらしく、片仮名で名前を書いた。幼くして天涯孤独となり、施設にいたという生い立ちを感じさせない、天使のように優しい子供だった。
 人間の子供と暮らすのは初めてで、当初は戸惑ったものの、ケイは無邪気な優しさでファウスリーゼの心を和ませた。
 一ヵ月を隠れ家で過ごした後、ファウスリーゼはケイを薬で眠らせて、里親のもとへ届けさせた。そうすることがケイの幸せにつながると信じてのことだった。自分のような化け物といれば、またいつか必ず危険な目に遭う。そうでなくても、年を取らない自分に対してケイはいつか違和感と恐怖を抱くに違いない。だったら、別れは早いほうがいい。そう信じてのことだった。
 里親は屍鬼の一人が通じている資産家で、子供一人育てるのになんの不自由もない環境が整えられていた。なのにケイは、三日と経たずにその家から逃げ出した。ファウスリーゼが慌てて捜させても、二度と見つからなかった。
 ケイの意思を無視して別れたことを、ファウスリーゼは悔やんだ。謝罪しようにも、ケイは行方不明だ。屍鬼たちを使い、全力を尽くしても見つけられない以上、ケイはもう死んでいる可能性が高かった。
 思い出すたびに、今でもファウスリーゼの胸は痛む。ケイと過ごした日々が穏やかであったことが、逆に彼女の心を傷つけた。
 最初から何も持たなければ、失うこともなかった。一度手にしてしまった温もりから引き離されるのは、千年の時を生きて尚、こんなにも哀しいものなのかとファウスリーゼは絶望した。
 だからこそファウスリーゼは、子供を屍鬼にしてそばに置きたいとは思えない。
(この子は)
 冷たい頬に、それよりさらに冷たい指が触れる。
(生きたいと、願うだろうか?)
 あの子供と同じ苗字を持つ子供。もしやナイトウケイは生きていて、この街に戻り、幸せに暮らしているのではないか。ファウスリーゼは、そんな甘い夢を見たくなる。
 屍鬼になることは、決して幸せなことではない。そのことはファウスリーゼも確信している。
 それでも、終わる命をつなぐことに意味があるとしたら。
(せめて、『呪い』が解ければ……)
 幸せに、なれるかもしれない。
 そう願わなければ、千年もの時を生きるのは不可能だった。自分を保つことができなかった。
 長い髪を床に垂らして、ファウスリーゼはベッドの脇に跪いた。顔を傾けて、少年に顔を近づける。
 氷のように冷たい死体の唇に、同じく絶対零度の薔薇色が重なった。瞬間、死体が青白く発光した。
 一縷の願いが、唇を介して死体に流れこんでいく。
 真木名がそれを、無表情に見守っていた。

 

 

 

 業火が町を覆った。乾ききった冬の風は焔を運ぶ絶好の遣い手となり、小さな集落を焼き尽くした。焔が人を、建物を、すべての命と造形物を貪欲に呑みこんでいく。
 昭和六十三年十二月十四日午前二時、北川児童養護施設から発生した火災は、吹き荒れる空っ風に乗じて、凄まじい速度で拡大した。
 集落はもともと、高度経済成長の頃に高い稼働率を誇った工場に勤める者たちのベッドタウンとして発展し、当時すでに寂れていたとはいえ、古い木造家屋はもたれあうように密集していた。生まれた当初はほんの小さな種火だったそれを、大災害へと至らしめるにはあまりにも条件が揃いすぎていた。
 発火地点となった児童養護施設は、森の奥にあった。立ち枯れて乾ききった木々は防火壁にはなり得ず、ただ火を熾すための薪と化した。かつては緑に覆われていた森を枯らしたのは、工場から溢れ出す汚水だった。
 命の枯れた森の奥に、子供は一人で座っていた。じわじわと肌を炙る火は、真冬の折、温かくさえあった。少なくとも施設内の薄い毛布よりは、ずっと。
 子供は、迫り来る焔に手を翳してみた。手のひらの静脈が、淡く透けて見えた。小さな手には、幾つもの傷があった。幾つかは古く、幾つかは新しい傷だった。古い傷は様々な実験によって刻まれたもので、新しいのはさっき、『あれ』と対峙した時に負った傷だ。

『あれ』はなんだったのだろう?

 子供は乏しい知識の中から、『あれ』の正体を突き止めようと考えた。子供とはいっても彼はすでに、夢物語をすべて信じられるほど幼くはなかったし愚鈍でもなかった。だから、純粋に不思議だった。
 あんなものが、目の前に現れたことが。
(ああいうのは、テレビとか本の中にしかいないんじゃないのか)
 施設ではあまりテレビを見せてもらえないから、彼のささやかな娯楽は図書室で本を読むことだった。廃品の中から拾ってこられたものや、一般家庭の不用品の中から寄付という形で投棄された本たちは種類も数も多く、難解なものから猥雑なものまであって飽きなかった。
 閉鎖的な環境下で育った彼が、彼なりに身につけた常識の中でも、あんなのは実在しないものとして認識されていた。
 おかしいな、と彼は焔の中で何度も首を傾げた。が、その思考自体、長く続く状況ではなかった。
 多分、というよりほぼ確実に、自分は今ここで死ぬのだろうと彼はわかっていた。すでに右肩に、大きな火傷を負っている。ここまで逃げる途中で、火の粉をかぶったのだ。
 だからそれ以上考えるのをやめた。生きていくのに無関係な、無駄なことをするゆとりは、彼の短い人生の中にはなかった。
 生きているという『状態』がなんなのかは終ぞ理解できなかったが、生きているのはそれ自体がしんどい作業だった。心臓や呼吸器が、頼んでもいないのに勝手に動くのは、彼にとってはありがた迷惑以外の何ものでもなかった。
 やっと終わるのだと、子供は安堵した。焼け死ぬのもなかなかしんどそうだが、終われば続きはないとわかっていれば怖くない。もしも万が一、死後の世界なんてものがあったらどうしようかとそれだけが心配だった。頼むからそんなものは存在しないで欲しいと願うばかりだ。
 死んだら灰になって、無に還る。絶無とか皆無とか、とにかく物理的にも形而上的にも何も残らない状態にして欲しい。でないとせっかく苦しいのを我慢して死ぬ意味がないじゃないかと、そこまで考えた時。
 冷たい何かが、後ろから子供を抱きすくめた。
 また『あれ』が襲ってきたのかと、子供は瞬時に身構えた。火に焼かれるのには耐えられても、あんなものに喰い殺されるのだけはご免蒙りたかった。
『あれ』は火よりも怖ろしい何かだと、子供の本能が叫んでいた。
 焼き殺されるよりもずっと怖ろしい、生存本能そのものを脅かす、異質の何かだ。そんなものに捕まるくらいなら、自ら首を掻き切って死んだほうがマシだとさえ思えるほどの恐怖だ。
 子供は、先刻逃げる際に施設の台所から失敬してきた包丁で自分を包む何かを刺した。刺してから子供は気づいた。
 それはおぞましい異形の何かではなく、白くなめらかな人の手だった。
 白い手が、刺されたことで赤く血に染まった。血塗られた手で抱き寄せられて、子供は顔をあげた。
 白銀が、焔の赤を背にして揺らめいていた。白銀の髪だった。老人の白髪とは明らかに違う、プラチナ色だ。
 子供は、自分はもう死んでいて、夢でも見ているのかと暫し呆然とした。夢でもなければ、こんなものには会えないはずだと彼なりに認識していた。
 白銀の髪に、黒猫のような金の瞳。動いて喋る、精巧な人形が自分を助けに来たのかと子供は思った。もしかしたらどこかの工場で、そういう人形が造られていたのかと。
 人形の頬は白磁のようで、明らかに東洋人のそれではなかった。白銀の髪、金の虹彩、紅い唇。どのパーツに着目しても、子供の目には人形にしか見えない。
 人形の性別は、女だった。これも、童話に出てくるような華美なドレスを着ている。
 子供は手を伸ばし、その頬に触れてみた。焔の中にいるのに、その頬は死者のように冷たかった。やはりこれは生きてはいないものなのかと子供が訝ったその時。
 人形の口から、声が漏れた。

「ごめんなさい」

 弱く、小さな声で人形は謝罪した。謝罪しながら子供を抱き寄せた。密着しても心音はせず、肌や髪からはなんの匂いもしなかった。
 子供は人形に抱かれながら、今度はその髪に触れてみた。
 こんな綺麗なものを見るのは、子供には初めてだった。辛うじて彼が知っている美しいものと言えば、写真で見た花や森や水くらいのもので、しかもそれらは子供の生きている世界には存在しない。美しいものは写真かブラウン管の中にしかなく、恐らく自分はそれらを実際に見ることもなく一生を終えると確信していた。子供の手が届く範囲内に存在するのは、枯れた森と汚れた水と仏前に供えられた菊くらいのもので、それが世界のすべてだった。
 死ぬ間際、人形に出会えてよかったと子供は思った。花よりも水よりも森よりも綺麗なものが見られてよかった、と。
 抱きしめられたまま鼻孔を押しつけると、薄いレースのブラウス越しに密着した胸は、微かに膨らみ、柔らかかった。子供は奇妙な高鳴りを感じた。心臓と下腹部の辺りが、じわりと熱くなった。

「ごめんなさい」

 もう一度人形が、震える声で謝罪した。その声を、子供はもっと聞いていたかった。この先千年でも聞いていたいと願った。
 初めて、死にたくないと思った。

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