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白薔薇の花嫁 異国の貴公子は無垢で淫らな令嬢に溺れる 4

第四話

 

 ルルが困惑していると、オラントはルルの希望の通り、トスケ古語で喋り出す。
「ルル、君は本当に可愛いな……。やはり決めた、君の無垢は俺が奪ってしまおう。今どき純潔を要求するような矮小な婚約者などにやるものか」
「え、え? 今の、聞き取れませんでした。すみません、もう一度」
「ふふ……いいんだ。少し難しい言い回しを使った。もう国民すら大半が忘れ去ろうとしている我が国の礎を作った言葉を、君がそんなにも好んでくれるのは嬉しいよ」
 流れるようななめらかな発音に、ルルは今の状況も忘れてうっとりした。
「ああ……、やはりトスケ古語は美しいです。何というのでしょう、まるで蜜のような響きです。まろやかで、竪琴を弾くようで、どこまでも甘美で……どうやったらその発音ができるのでしょう……」
「直接教えてやる。自分で感じた方が早い」
 オラントはずいとルルに迫り、間近で金色の目を細める。オラントの甘くエキゾチックな香りが強く鼻先に漂い、ルルは思わず陶然として瞼を閉じる。
 すると、柔らかで温かな感触が唇に押しつけられ、敏感な唇に触れられたルルはビクリと大きく震えたが、オラントの大きな体と長椅子の背もたれに挟まれて動けない。
「あ……ふぁ……っ?」
「例えば……愛、や馬、の発音だ。舌を……ここで弾くんだ。上顎の、歯茎の裏で……」
 オラントの肉厚な舌がルルの歯の裏の部分をべろりと舐める。それだけで経験したことのないようなゾクゾクとした強い感触がルルの背筋を駆け上り、感覚過敏な少女は激しく痙攣した。
「あぅぅ、ふ、うぅ」
「今度は、夜の発音……舌全体を上顎の舌に張りつけて、離す……」
 口の中で、低い掠れた声でオラントが喋るだけで、ルルは涙が出るほど体が逆上するような感覚を覚えた。
(せっかく、オラントがトスケ古語の発音を教えてくれているのに……何も頭に入りません……唇と、舌の、口の中の感触が鮮やか過ぎて……他が、何もわからなくなってしまいます……)
 オラントはルルが激しい反応を示している間も乳房を揉んでいる。その人差し指が乳頭を潰すようにレースの生地にめり込んだとき、ルルは必死で口を離し、悲鳴を上げた。
「あやあぁっ! だ、だめです、それはっ……」
「ん……? どうだめなんだ? 痛いのか?」
「あ、あ、なんだか、お腹が、お腹が変になるんです。ギュッとするみたいに……」
 オラントは甘美な微笑を深くして、ルルの頬に優しくキスをする。
「それは正しい反応だ。感じやすい人はここに触れられるとそうなる」
「えっ……、正しい……? 普通は、そうなのですか……」
「そうだ。自分では触らないのか?」
「さ、触りません……自分の肌に触れるのは、体を洗うときくらいで……、あう、あっ! そ、そんな、ぁ、やあぁ」
 オラントの太い指がくりくりと乳頭を転がす。ルルはこれが正しいと聞いても、体がどんどん熱くなってきて、そこに触られているだけでまるで真夏の日向を歩いているときのように汗を噴いてしまう。
「少し触っただけなのにすごい声だな……君はかなり感じやすいらしい」
「あ、あの、声は、おかしいのですか。出てしまうの、ですけど……」
「いいことだ。思うままに声を上げてくれていい……ほら、こんなにここが硬くなっている」
 ルルのドレスの生地をずらし、勃起した薔薇色の乳頭があらわになる。そんな形になったものを見たことがなかったルルはギョッとした。
(わ、私の胸、どうなっているんです……? 寒いときにも肌が硬くなる感覚はありますが、もしかしてアルコールを飲み過ぎるとこうなってしまうのでしょうか……)
 オラントは恍惚としながらルルの乳房に顔を埋める。
「美しい……冷たささえ感じる雪白の肌に、淡く色づいた乳輪……心も体も紛れもない純白……君のような女性が今まで無垢でいられたとは……変わり者として認識されていたことが幸いだ。お陰で、俺がすべて手に入れられる」
 何を言っているのか、と問おうとした矢先、乳頭がオラントの温かな口内に包まれ、勢いよくジュルルと啜られて、ルルは目の前に火花が散るような衝撃に驚愕した。
「ひぃ……っ、あ、な、何……、あ、お、お腹がぁ」
「強過ぎるか? 受け入れてごらん。体の力を抜いて……」
「で、できませ……ひゃ、はああぁ……!」
 オラントは貪るようにルルの乳頭を乳輪ごと吸いながら、もう片方の乳頭も指で散々に転がし、摘み、擦り上げる。
 ルルは全身の毛が逆立つのを覚えた。下腹部が何やらおかしい。
(あ、熱い……何かお湯のようなものが、腰の奥からあふれ出ていくようです……胸を触られているのに、どうして腰がこんなにももどかしいのでしょう……?)
 声も止まらない。不格好で醜い声が、まるで腹の奥から押し出されるように漏れてあふれてしまう。
「ひゃあぁ……あふあぁ……、あ、ぁ、な、なにか、出てしまって、あ、漏れ……」
「ん……? ふふ、ここか……?」
「あ、だ、だめです、汚、あっ……」
 オラントがドレスの裾を捲り上げ、ガーターベルトとストッキング以外何も身につけていないルルの露わな下肢に目を瞠る。
「下着をつけていないのか……」
「あ、わ、私、そこに布が張りつくのが嫌で」
「なるほど。元々相当に敏感な質らしいな……いい眺めだ」
 ルルは他人の接触も苦手だが、繊細な場所に布の感触を感じるのも嫌いだった。なので、せいぜいガーターベルトでストッキングを吊り上げるくらいで、股に何も触れないよう、他の下着を身に着けていなかったのだ。
 しかし、その敏感な場所を守っているささやかな茂みの奥に、オラントは無遠慮に指を這わせてしまう。ルルはビクリと震えて刺激に耐えた。
「ひぃ……」
「すごい……ずぶ濡れだな」
「えっ!? わ、私、まさか」
「漏らしたんじゃない。気持ちいいとここが濡れるのは正常だ。しかし、こんなにあふれているとは……たまらないな」
 オラントはそのまま指を蠢かす。ひときわ強烈な刺激が弾け、ルルはガクンとバネのように腰を跳ねさせた。
「あああ! あ、や、そこ、だめです、怖い、怖いっ……」
「大丈夫だ。怖くない……指だと強過ぎるのか? じゃあ、優しく……」
 そう言うやいなや、オラントはルルを長椅子へ横たえ、裾をからげてそこへ逞しい舌を押し当てた。
「ふぁ……っ、あ、ああああぁ」
「この小さな突起はいちばん敏感な場所だ。ルル、君のは少し大きくて口に含みやすいな……ほら、どんどん漏れてくる。快感にこのまま身を委ねて……」
 オラントは花芯を口で愛撫しながら、太い指をぬちゅりとルルの秘処に挿し入れた。痺れるような僅かな痛みと、体の中を探られる感触に、ルルは身悶える。
「ひぁ、あやぁ、あ、あの、そこ、指、私の、父に、禁じられて」
「大丈夫だよ。この体は君のもの……君が楽しむことは君の権利だ」
「へ……? で、でも、あぁあ、やぁ、らめれす、あ、中と、外の、あ、また、たくさん、出てきちゃ……っ」
 オラントに内部にあるしこりのようなものを指の腹でコリコリと擦られて、舌で突起を舐め上げられ、吸われ、扱かれて、ルルは涙をこぼしながら叫んだ。
「やぁあ、あ、ひゃあぁあぁあああっ、……ぁ……あ」
 ガクガクと痙攣し、腹の奥にぽっと赤い光が灯ったようだった。頭が蕩け、腰が浮き、皮膚が痺れ、ルルは自分がなにかビシャビシャと音を立ててこぼしているのを感じた。
「すごいな……ルル……潮まで噴いて、絶頂に達して……君は、常人の何倍も感じやすいんじゃないか……」
 オラントの声が震えている。ルルはぶぷっととろみのある蜜をこぼし、ぬかるんだ花びらのあわいをオラントの指が執拗に擦っているのを感じている。
(何でしょう、これは……気持ち、いい……嫌ではないです……もっと、欲しいほど……。私の体が……別物みたいに……)
 全身が蕩けてしまったのではないかと思った。小さな痙攣がいつまでも続いている。どんどん脚の間になにかをこぼしてしまう。ルルはうっとりとしながらオラントにされるがままになっている。
「こんなに柔らかくなって……もう、大丈夫だな……」
「はぁ……あの……何が……」
「ツイを飲むか? もっと体が柔らかくなるように……」
 オラントは酒を口に含み、それを口移しにルルの唇に注ぎ込む。同時に開かれたルルの脚の間に体を入れ、そして軽く腰を捻り、ルルに埋没した。
「はっ……、ぉ……あ……」
 アルコールの目眩の内に、激しい衝撃がルルを抱き締める。
(何かが、私の中に……蛇、のような……とてつもなく大きなものが……)
 巨大な蛇はたっぷりと潤って熟したルルの膣肉を掻き分けながら、ぐじゅりぐじゅりと深々と埋まってゆく。
 苦しい。体が裂かれるようだ。だが、その何倍も、燃え上がるように体が興奮している。
「ぁ……あは……あ……な、何れすか、あ、こ、これは……お腹の底が……あぁあ……」
「ルル……可愛いな……君は俺の至宝だ……何にも代えがたい宝石……」
 オラントは低い美しいトスケ古語でルルに囁く。その甘い旋律にルルは恍惚とし、涙をこぼす。
 がっちりと押さえ込まれて動けないルルの体は、オラントの熱い体温と芳しい香りに包まれている。ぐぬ、と腹の奥に巨大なものが押し込まれる感覚があり、鈍い痛みと全身の毛穴が開くような心地よさに、ルルは体を戦慄かせた。
「ぁあ、ああぁ、何か、奥、に」
「辛いか? 痛い?」
「痛い……れす……苦しい……でも……あぁ……もっと……もっと、中を……」
「こうしてもいい……? 動いても……?」
 オラントが腰を揺すぶり始める。ぐちゅ、ぐちゅ、と濡れた音を掻き鳴らしながら、巨大な蛇がルルの媚肉を捲り上げ、太い頭が子宮の入り口を押し上げる度、ルルは野蛮な声で叫び出しそうになる。
「はぁあ……やあぁ……、いい……、いいれす……あぁ……頭が蕩けてしまいま……あぁあああ……」
「どんどん、濡れてくる……万力のように締めつけて、こんなに感じて……ルル、君は最高だ……初めてなんだろう? 信じられないほどだが……」
「これ、これは……男女の……交合、なのですか……、わ、私、父の言いつけを……はあぁああ、あ、あうあああ」
 オラントが突然、遠慮のない動きでルルを犯し始める。
「何も考えられなくしてやろう……そうすれば、君も自ずと知る……俺との交わりと、父上の命令、どちらが尊いのか……」
 もうすでにルルにはオラントの言葉がわからなくなっている。
 あまりに強烈な、鮮烈な刺激。初めて味わう快楽、絶頂。他人に触れられることすら厭わしかったのに、今ではオラントの体の一部を体内に受け入れている。そして、それがとてもとても心地いいのだ。
(誰かに触れられるのは、ゾッとして本当に気持ち悪くて、嫌だったのに……オラントにこんなに密着されてあらゆるところで繋がっても、気持ち悪いどころか、体が喜びでどうにかなってしまいそうです……これが快感というものなんでしょうか……)
 体が直接的に感じる快感というものを、ルルは知らなかった。新しい言語を学んだときや好みの発音、文法に出会えたときなど、知識欲が満たされる喜びならば知っていたが、肉体的な接触を避けてきたルルにとって、突然降って湧いたこの刺激の洪水はあまりにも甚大で、暴力的な影響を与えた。
 オラントが深く入ってくると、稲妻が脳天まで突き抜けるような快楽を覚え、目の前が真っ白になった。乳房を分厚く硬い胸板で押し潰され、しこった乳頭をやたらめったらに転がされると火照るような疼きが全身を駆け巡り、口を吸われて舌で口内を舐め回されると、脳が蕩けてなくなってしまいそうだった。
 何より、オラントの官能的なトスケ古語の響きは、ルルを容易く絶頂へ導いてしまうほど、扇情的な魅惑にあふれていた。
 すでに生きた言語ではないはずの古(いにしえ)の言葉が、オラントの口から紡がれる唯一無二の麗しい響きとなってルルを酔い痴れさせる。
 トスケ王国。砂漠の国々と森の国々の境に建つ様々な文化が入り混じった独特な、エキゾチックな国。その歴史は古く、今も昔も多種多様な人種が自分たちの国から品物を持って商いのために訪れ、トスケは何者も拒まず、どの神々をも否定せず、豊かに栄えてきた。
 トスケ古語は元々文字を持たなかった現地の人々が、周辺国の文字を借りて組み合わせ作ったものだと言われている。言語や発音もそれにつれて文法を再構築され微妙に変わったようだ。
 現在のトスケ語はそれをトスケ独自のものに洗練させ、整えたものだった。それゆえか、トスケの古語は周辺の国々の、それぞれの古の響きをすべて持ち合わせ、ルルを遠い昔の浪漫に浸らせてくれる。
「ルル……可愛いな……気持ちいい、最高だ……俺の美しい宝石、ルル……」
 トスケ古語で囁かれる甘い言葉たちは、容易くルルを快楽に沈め、法悦の泉に溺れさせる。

 

 

 


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