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とにかく顔がいい上官(じつは魔王)に結婚を迫られてます! 3

第三話

 

 ――こんなことって、ある!?
 文官たちの集う執務室に戻ったケイティは、呼吸を整えて自席に着く。
「あら、ケイティ、戻ってきて大丈夫だったの?」
 先輩文官に声をかけられ、自分が戻ってきてはいけない理由があっただろうかと首を傾げた。
「いつも、イーヴ大佐はあなたを重用しているから。紅茶談義をお客さまにも聞かせたかったのかと思って」
「そんなことないです。大佐は……大佐、は……」
 あの人は、ほんとうに大佐なのだろうか。いや、リアム・ドゥ・イーヴという人物はこの世に存在しない。彼は魔王であって、人ではないのだ。
 ――大佐が魔王だということを、いったい誰に相談すればいい? 報告する相手としては、大佐よりも上の階級の……
 佐官より上級となると、将官だ。当然、新人文官が直接話す機会などありはしない。突然訪ねていって「イーヴ大佐は魔王です!」なんて言おうものなら、ケイティの精神状態のほうを疑われかねない状況だろう。
 リアムを告発したいが、自分が職を失うのは避けなければいけない。では、どうすればいいか。彼をこのまま放っておくという選択肢もあるけれど、それはこの国に危険を蔓延らせることにほかならない。
 つまり、誰もがケイティの言葉を信じてくれる必要がある。
 ――そのためには、論より証拠!
 彼が魔王である証拠があれば、信じてもらえる可能性はぐんと上がるのだ。
 では、どうやって証拠を集めるのか。具体的にどんな証拠が必要となるのか。考えあぐねていると、先輩文官が心配そうに、
「ケイティ、そんなに悩むような問題が……?」
 と覗き込んできた。
「わたし、がんばります!」
「え、ああ、うん。なんかわからないけど、がんばってね」
「はい!」
 拳を天井に突き上げて、妙な使命感に高揚したケイティは、上官を告発するための証拠固めを心に誓った。

 それから数日。
 ケイティは、リアムを追いかけることに没頭している。
 今の時点で、どんな証拠を挙げていいのかわからない。だが、少なくともリアムは眠っているときにツノが出てしまうと言っていた。彼が次に居眠りするのを見つけて、そこに将官を呼ぶのがいちばんだ。ほかにも、魔王というからには黒い羽が生えていたり、黒い尻尾が生えていたり、靴を脱いだら獣のような足があったり――
 ――今まで誰にもバレていないのなら、見てすぐにわかる特徴はないんでしょうけど。
 男性同士、こと戦闘職の軍人たちは暇さえあれば筋肉を見せつけ合っている、とケイティは認識していた。実際に入隊してからは、自分の同期だけではなく、上官たちも筋肉自慢をしているのを何度も目撃している。
 その中で、意味もなく軍服を脱ぎ捨てないのがリアムだった。
 ケイティにとってリアムが目の保養だったのは、彼がただ美しいからだけではない。彼がいつでもどこでもきちんと着衣でいたから、だけでもない。いや、それはまあ心の安寧にはかかわっていたかもしれない。
 そして、彼が魔王だと知ってこんなにも強く告発の意志を持っているのは――
「……裏切られた気分、だから」
 廊下を歩くリアムを、かなり距離を空けてこっそり追いかける。
 彼の黒髪はほかの者よりも目立つ。毛先に軽いクセがあるところも、男性にしてはかなりやわらかそうなところも、そもそも軍人のわりに短髪でないところも、すべてが目を惹きつけるのだ。
 角を曲がるのを見て、ケイティは少し速度を落とす。文官といえども、尾行術は研修期間に学んでいる。対象者が建物に入る、もしくは角を曲がるなどした場合には、待ち伏せされている場合があるから、すぐに追いかけてはいけない。
 ――十秒待った。行こう。
 そしてケイティが角を曲がると、
「ケイティ、ちょうどよかった」
 待ってましたとばかりに、リアムが微笑んで立っているではないか。
 まあ、自分の未熟な尾行術で上官を出し抜けるとはそもそも思っていない。バレていてもおかしくないのは、端から知っていた。
 それでも、見事に待ち伏せを決められれば動揺はする。
「は、はい」
 孔雀色のスカートが揺れて、ケイティはぴたりと両足の踵を打ちつけた。
「もし手が空いているなら、紅茶を頼んでもいいかな?」
「かしこまりました、イーヴ大佐」
「僕はこのまま部屋に戻るので、よろしく」
 軽く右手を振ると、彼が何ごともなかったかのように廊下を歩いていく。そのうしろ姿を見送りながら、ケイティは小さく息を吐いた。
 まったく、どうにも敵わない。彼は、ケイティがリアムの正体を知ってしまったことも承知の上で、今までどおりの態度を決め込んでいるのだ。
 ――こんな調子じゃ、証拠をつかむことなんて無理なのでは……?
 ケイティは給湯室へ向かって、リアムとは反対に歩き出した。

 室内には、淹れたての紅茶が香っている。準備を整え、隊長室にティーワゴンを運んできたケイティは、必要最低限の挨拶をするのみで黙って自分の仕事に没頭した。そうでもしていないと、なぜ魔王が王立軍に入隊したのか、探ってしまいそうだった。
「僕を疑っていても、きみの淹れる紅茶の味は変わらないね」
 ティーカップを手に、執務机に向かう彼が目を閉じて紅茶の香りを堪能している。
 疑っているというよりも、ケイティには確信がある。事実、彼は自分から魔王であることを暴露しているではないか。
 何を今さらと思いつつ、ティーポットをワゴンに戻す。
「これは仕事ですから」
「あはは、任務として淹れてくれているんだ?」
「あ、当たり前です!」
「じゃあ、もう部屋まで紅茶を淹れに来てはくれないのかな」
 さも残念そうに、リアムが目を細める。その表情に、嘘は感じない。彼がケイティの淹れる紅茶を好んでくれているのは事実なのだろう。ただ、彼が魔王であるというだけで。
 ――ここも、大佐の執務室だけど……
 彼が言っているのは、寮の自室という意味だ。
「それは、その……」
 魔王の証拠をつかむためには、彼のプライベート空間のほうがいいのかもしれない。同時に、寮の部屋でふたりきりになったら何をされるかわからない。事実リアムは、ケイティの口封じにキスをしようとした前科があった。
 ――どうしよう。部屋に行けば、この間みたいに油断している姿を見られるかも?
 身の危険と証拠のどちらを優先すべきか。
 ケイティは数秒考えたのち、答えを出した。
「わかりました。お部屋に紅茶を淹れに伺います」
「そうか。ありがとう、ケイティ。それじゃ、早速今夜からお願いするよ」
「はい」
 返事はしつつも、いきなり今夜からという事態におののく気持ちもある。
 就業時間に紅茶を淹れるのは仕事だけれど、プライベートで寮の個室に行くのは別の話だ。そこで何が起ころうとも、責任は自分にある。
「時間は――そうだな、夕食後がいい。入浴を終えて、時間が空いたら運んできてくれるかい?」
「わかりました。夕食後ですね」
「うん、よろしく」
 リアムは、なんだか嬉しそうにしていた。
「それでは、わたしはこれで。のちほど、カップを下げに来ます」
「ああ、ケイティ」
 立ち去ろうとワゴンに手をかけて、ケイティは振り返る。
「ありがとう。今夜、待っているよ」
「っっ……、は、はい」
 彼の笑顔を前にすると、どうしても心が逸る。
 ――大佐の顔がよすぎるのが問題なの。これは、わたしのせいじゃない!
 たぶん、と心の中で言い訳をして、ケイティは彼の部屋を出た。
 その日から、毎晩食後にリアムの居室に紅茶を運ぶ生活が始まった。

 

 入隊してから、実家の家族とは手紙のやり取りをするようになっている。ほかに連絡手段はなく、頻繁に帰省できるほどケイティにはまとまった休暇がない。フェイデルグの王立軍は、一年以上の勤務で三連休を取得できるようになるのだ。それまでは、基本的に連休は二日までと決まっている。
 毎晩、リアムの居室に紅茶を運ぶようになって十日が過ぎた。
 彼の部屋へ行くたび、ケイティは魔王の証拠を見つけてやろうと目を皿にしているのだが、なかなか相手は油断してくれない。軍内部に魔王がいるというのは、かなり危険なことだ。いかに剣術に優れたリアムとて、大勢の隊員たちから取り押さえられては身動きが取れなくなるだろう。そうならないよう、彼は魔王という身分をひた隠しにしている。
 ――そもそも、魔王どころか魔族であることだって、バレたらただじゃ済まないものね。
 かつては魔王軍とのたび重なる戦いに明け暮れたフェイデルグ王国だが、百年もの間、平和が続いている。つまり、ケイティ以外の王国民も魔族という存在を目にしたことはほとんどないということだ。
 ふうううう、と長いため息をついて、自室の小ぶりな机に向かう。今週、実家から届いた手紙はまだ封を切っていない。
 家族からの手紙は、何よりの楽しみだった。だからこそ届いてすぐに読むのではなく、自分にとっていちばん読みたいタイミングを待つ。落ち着いて、ゆっくりできる時間を確保してから読みたい。
「よし、今がそのときね」
 寝る前の穏やかな時間に、ケイティは封筒の中を覗く。普段は普通の事務職のような文官をやっているけれど、ここは軍だ。届く手紙は、すべて検閲されたのちに個々に届けられる。そのため、開封の手間がなくていい。人に見られて困る内容のやり取りはしていないので、ケイティは家族との手紙を見られることに抵抗はなかった。
 封筒の中からは、数枚の便箋と小さなメモのようなものが出てきた。
 最初に、おそらく弟妹たちが書いたと思われるメモを開く。
『ケイティおねえちゃん がんばれ』
『おほしさま きれい おねえちゃんも見てる?』
『アンディ アンディ アンディ』
 最後のは、六歳になったばかりの末の弟だ。自分の名前を書けるようになったと報告してくれているのだろう。
 家族が元気に暮らしているようで、そばにいなくても彼らの姿が目に見える気がした。まだ離れてそれほど経っていないのに、便箋からは実家の香りがする。
『ケイティへ
 軍での生活はどうですか? 無事に研修を終えたとの手紙をもらい、家族みんながほっとしています。
 わたしたちのかわいい娘が、花嫁ではなく軍人になると聞いたときはショックでしたが、今では誇りに思っています。
 ところで、今回はたいへんつらい連絡があります。
 あなたの末弟のアンディが、二週間前から体調を悪くしているのです。
 当初は風邪かと思っていたものの、熱が下がらず食欲が減退し、お医者さまの言うことによれば、王都の偉い先生に診てもらったほうがいいそうです。
 まさかとは思いますが、悪い病気だったらどうしようと心配でなりません。
 もし王都の病院に行くことになったら、あらためて相談することになると思います。
 連休は取れないと聞いているけれど、時間があるときに帰省してアンディと話してあげてください。
 きょうだいはみんな、あなたを頼りにしています。
 ケイティと会えればきっと喜ぶことでしょう。
 そして、もしもアンディの病気を治療するためにたくさんお金が必要になるとしたら、そのときには軍を辞めて相応なお相手と結婚することも考えてください。
 あなたの妹たちは、まだ嫁入りには早い年齢です。
 申し訳ないとは思うけれど、我が家はあなただけが頼りなのです』
 弟妹たちからの手紙と違って、丁寧に折りたたまれた便箋には、母の文字でそう書かれていた。
 ――アンディが、病気? まだあんなに小さいのに、重い病気の可能性があるっていうの?
 弟の小さな手の感触を思い出す。一緒に歩くとき、ケイティの人差し指を握っていたあの愛らしい手が、今は熱に火照っているというのだ。
 居ても立っても居られず、机の引き出しから古い革袋を取り出した。中には、ケイティが軍で働いて貯めたお金が入っている。もちろん、給金のすべてではない。多くは実家に仕送りしていて、生活に必要な分を除き、爪に火をともすようにして貯めたささやかなお金だった。
 ――こうなるのがわかっていたら、大佐のために新しい茶葉なんて買うんじゃなかった。目先の見栄のために、お金を無駄遣いした罰が当たったんだ。
 王都の偉い医師に診てもらうとなれば、診療費がかさむのは目に見えている。ケイティは自分の無力さが悔しくて、奥歯を噛み締めた。目の奥がジンと痛くなり、泣きそうになるのを必死に食い止める。
 泣いて、何かが改善することなんてない。
 神さまに祈っても、助けてもらえることはほとんどなかった。
 自分の手で、自分の足で、自分の意志で何かする以外に、事態を変える方法はないのだと、ケイティは十八歳にして知っている。
 よし、と自分に発破をかけるつもりで声に出した。
 ――次の休みは朝早くに出発して、日帰りで実家に行ってこよう。アンディの様子も気になるし、少しでも治療の足しにお金を届けたい。
 ほんとうは、先日割ってしまったティーポットを新調したいと思っていたけれど、無駄遣いをしている場合ではなくなった。幸いにして、寮の備品にティーポットはある。
 居室を出ると、ケイティは厨房で湯を沸かし、紅茶の準備をした。このあと、リアムの部屋に紅茶を運ぶのだ。
 たとえ相手が魔王だとわかっても、約束は約束である。
 ――魔王、か……
 リアムが悪い魔王ではないというのは、ケイティだってなんとなく察していた。
 すでにリアムは、王太子の護衛隊隊長まで出世しているのだ。彼がほんとうに軍内部からフェイデルグ王国に悪事をはたらこうとしていた場合、とっくに何か起こしていてもおかしくない。
 ――もしかしたら大佐は、ほんとうにただの紅茶好きの魔王という可能性もある。その場合、害をなすことはない。だからといって、軍に魔王が所属しているのを放置するわけには……
 考えながら、彼の部屋の前に到着した。
 ワゴンを横に寄せて、ケイティは二度ノックをする。
「待っていたよ、ケイティ」
「失礼します」
 毎晩、リアムのところに紅茶を運ぶ。それは、まるで侍女の仕事だ。だが、不満はない。紅茶を淹れるのは、ケイティにとっても気持ちが落ち着く作業だった。
 ――問題は、アンディの病状だわ。発熱していて、風邪のような症状だとはお母さまからの手紙に書いてあったけれど、それだけではどんな病なのかわからない。王都の偉いお医者さまに診てもらうといっても、この先どれだけの期間の治療が必要なのか。どのくらいお金がかかるのか、ある程度の目星はつけておかないと……
 弟の命は、お金とくらべられない。どんなことをしたって助けたいと思う。
 そうはいっても、先立つものがなければ診察を受けることもできないのだから、かかる治療費を考えるのも仕方ないことだった。
「今夜は少しぼんやりしているようだけど、どうかしたのかい?」
 長椅子に座るリアムは、まだ浴場に行っていないらしく、制服姿である。上着は脱いでいるが、孔雀色のトラウザーズに黒い長靴を履いている。
 フェイデルグ王国の王立軍は、基本的に上下ともに孔雀色の布を使っていた。ただし、丈の長い上着のほうがボトムスよりも少し明るい色味になっている。一概に孔雀色といっても、その範囲は広い。
「……そうですか? いつもどおりです」
 すげない返事をして、ケイティは紅茶のカップとソーサーを丸いテーブルに並べていく。
 今夜はミルクティーではなく、カップにバラの形の砂糖を添えていた。先日、料理長が分けてくれたものである。
 普段、この寮に住む軍人で厨房に頻繁に出入りする者はいない。その中で、紅茶を淹れるのにほぼ毎日湯を沸かしに行き、たまには焼き菓子を作りに行くケイティは、厨房で働く者たちと馴染みが深いのだ。
「昼間、仕事のほかに僕のあとをつけ回しているから、いつもの二倍疲れているのではないかな?」
 冗談めかしたリアムが、紅茶から立ち上る湯気を楽しみながらかすかに首を傾げる。その表情が美しくて、ケイティはぱっと顔をそらした。
 彼の紫がかった瞳には、甘い魔力がある。魔王だからなのか。そうではなく、彼の魅了の瞳が美しすぎるせいなのかは、定かではない。
「べ、別にそんなことはないです」
「それならいいのだけれどね」
 紅茶を淹れ終えたら、さっさとここから出ていくべきだ。
 頭ではわかっているのだけれど、足が留まりたがっている。
 ――魔王の証拠を集めなきゃいけないのもあるし、あとでティーカップを片付けに来るくらいなら飲み終わるのを待ったほうがラクだし、それに魔王とはいえど大佐がわたしの上官であることには違いないんだから、あまり失礼な態度を取るべきではないし。
 いくつも理由を並べて、ケイティはリアムが紅茶を堪能する姿を眺めていた。
 実際のところ、自分が淹れた紅茶をおいしそうに飲む彼の姿というのは、見ていて楽しいものではある。それに、好みの茶葉を探るには飲んでいるところを見るのがいちばん手っ取り早い。
 なんだか自分に言い訳をしている気がして、落ち着かない手がワゴンの上のティーポットをもじもじといじってしまう。
「ケイティ?」
「はい」
「ポットをそんなにいじり回していたら、危ないよ」
「え、あっ」
 手元で、ポットが倒れそうになる。まだ熱い紅茶の残っているポットを素手でさわろうとしてしまい、指先が触れた瞬間に手を引っ込めた。
「だから、危ないと言ったのに」
 そこを助けてくれたのは、ほかでもないリアムだった。
 彼は長椅子から立ち上がって、ワゴンから落ちそうになったティーポットをさっと救出する。紅茶がリアムの手を少々汚したけれど、それを気にする様子もない。
「きみはしっかり者に見えて、ときどきぼんやりしている」
「っっ……すみません」
 たかがこれだけのことに、心がかき乱されてしまう。リアムにしてみれば、大好きな紅茶にまつわる茶器を守ったにすぎないのだ。わかっている。わかっているのに。
「それとも、わざとだったのかな?」
「え?」
「わざと僕の前で危ない目に遭って、助けてもらおうとしているとか」
「ど、どうしてそんなことをする必要があるんですか?」
 少なくとも、ケイティには理由が思いつかない。
「そうだな、僕が魔王としての魔力を振るう姿を見たいとか」
「…………」
 心の中で、ひそかに「なるほど!」と思ってしまったのは内緒だ。そういう手を使えば、リアムが魔王である姿を人前にさらすことも可能なのか。
 ――でも、その場合、大佐が絶対に助けてくれるという前提条件が必要になる。たとえば、高いところからわたしが落ちそうになる、なんなら落ちる、とか。
 彼が助けてくれなかったら、ケイティの命にかかわってくるのだから、安易にその方法を選ぶ気にはなれなかった。
「魔力を振るうって、普段は魔法のようなものは使っていないんですか?」
「そうだね。そこは期待しないでほしいな」
「期待、というか……」
 もしも。
 彼がその力を人間のために使うのならば、魔王ということは隠して魔族出身の軍人という立場を確立することもできるのではないだろうか。
 そのことを告げると、リアムは困ったように微笑んだ。
「ケイティ、魔王だけではなく魔族というものは、人間を助けるようにはできていないんだ。だから、人間を攻撃するために魔力を使うことはできるけれど、助けるために使えばペナルティを受ける」
「魔王、なのに?」
 ――いったい、誰からペナルティを科されるの?
「人間でいう神さまみたいな、目に見えない存在がきっといるんだろうね。僕は、肉体を用いて人間を助けることはできても、魔力で救うことはできない」
「そうなんですね……」
 心のどこかで、彼を罷免すべきという声と、彼ならアンディを助けられるかもしれないという自分勝手な願望が入り交じる。
 ――わたしは、ひどく独善的だ。国のために、魔王を軍務に就かせておけないと考えている。そのくせ、自分の家族の病気を治してもらえるんじゃないかと期待している。両立させられることではないと、ほんとはわかっているのに。
 ふう、と小さく息を吐く。
 アンディには優れた医師の診察を受けさせればいい。そのために、働くのだ。大切な家族を養うために。
「だから、申し訳ないけれどきみの弟さんの病気を治してあげることも不可能なんだよ」
 予想外の言葉がリアムの口から聞こえてきて、ケイティは反射的に息を呑んだ。
「っっ……! そんなこと、頼もうと思っていません! そもそも、どうしてわたしの弟が病気だと知っているんですか!?」
「別に魔力を使ったわけではないよ。寮に届く手紙は、すべて検閲がある。そして、この寮の入居者でもっとも階級が高いのは僕だからね。隊員たち宛の手紙を検閲した者が、何かあれば知らせに来る。それだけのことだ」
 ――わたしの手紙も、全部読まれているってことね。だとすると、軍なんて辞めて結婚するよう言われているのもバレているんだ。
 実家があまり裕福でないことも、弟が重い病気かもしれないことも。
 本来ならば、人に知られたい話ではなかった。まして、憧れていた上官のリアムには隠しておきたい。
「ねえ、ケイティ」
 いつの間にか背後にまわったリアムが、そっと両腕でケイティの体を包み込んでくる。
「なっ、なな、何を」
「こら、逃げないで。これは上官命令だよ」
 ――こんな命令、ある?
 背中に彼のぬくもりを感じて、ケイティはぎゅっと目をつぶった。体がこわばって、呼吸が苦しい。なぜ、彼がこんなことをしたがるのかわからなかった。
「結婚するよう、ご両親に言われているのは知っている」
「検閲の結果、ですね」
「そうだね。――きみは、結婚から逃げるために入隊したんだろう? それなのに、軍を辞めて身売りのような結婚をしたりはしないよね」
 身売りという言葉に、悔しいけれどそのとおりだと感じた。
 ケイティの実家は、一応爵位がある。貧乏でも、貴族は貴族だ。つまり、成り上がりの金満家が求める身分の高い妻というポジションに収まることも可能という話になる。
 夫が妻の実家に援助するのは、さして珍しくもない。妻の親戚一同が裕福な夫から面倒を見てもらっているなんて話も耳にする。
 ケイティだって、最初はそういう方法も考えはしたのだ。ただ、自分には合わないと判断し、早々に見切りをつけて軍に入る道を選んだ。それだけのことである。
「わたしの給金でまかなえないほどの高額が必要となったら、それも考えるしかありません」
「金銭的に余裕のある男性に嫁げば、弟さんの治療費が手に入る。きみのご両親――というか、お父上の収入ではどうにもならないのだろうか」
「……そう、ですね」
「だから、娘を金満家に売りつける、か……」
 事実ではあるけれど、両親を金の亡者と誤解されたくはない。ケイティの両親だって、別に悪意があるわけではないのだ。
 実際、多くの貴族の娘たちは家のために結婚する。今の自分の状況が特殊であり、なんなら軍に入ることを許してくれた両親はすごい。ケイティはそう思っている。
「僕はこう見えて、実業家だって知ってるかな?」
「イーヴ商会は、大佐の会社だと以前に伺いました」
「そう。つまり、きみのご両親の望む金満家だね」
「そ、それって……」
 一瞬で、彼の言いたいことがわかった。
 だが、頭の中ですら言葉にするのはおこがましい。
 彼が魔王だろうとなんだろうと、リアム・ドゥ・イーヴが美しく聡明な男性であることに間違いはないのだ。
「ねえ、ケイティ」
「あの、ほんとうにちょっと距離が近いんで、少し離れて……」
「きみに僕の子を産んでほしい、ケイティ」
 体をよじったケイティの耳に、鼓膜を直接震わせるような声が届いた。
 ――いきなり、何を!?
「っっ……! や、やめてください、大佐!」
 子どもを産んで、だなんて完全に求婚の言葉だ。それも、夫婦の閨事を想像させる言い回しである。
 たしかにケイティは子どもの作り方を知っている。貴族の令嬢として、それなりの教育を受けてきたからには、そのあたりもバッチリだ。
 しかし、知っているのと実践経験があるのは、似て非なるもの。
 ケイティの左耳の裏に、彼の吐息が触れる。
「僕としても、正体を知られてしまったからには、きみに絶対に黙っていてもらう必要がある。それに、以前からケイティのことを働き者の良い部下だと思ってきた。かわいくて、愛らしくて、努力家で、周囲をよく見る目を持っている。女性として、とても魅力的だということだね。だから、これも運命だと思って、僕と結婚し――」
「できませんっ!」
 ケイティは、彼が言い終えるよりも早く腕の中から逃げ出した。
 あまりに勢いよくリアムを背後へ突き飛ばしたせいで、彼が絨毯の上に転倒する。
「あっ、すみません。大佐、大丈夫ですか?」
 慌てて助け起こそうとする。
 すると、そのまま抱きしめられて。絨毯の上に押し倒されてしまったではないか。
「逃がさないよ、かわいいケイティ」
「大佐、冗談はやめてくださいっ! こ、こんなの、誰かに見られたら――」
「そのときには、きみは僕の恋人だと説明しよう。若いふたりが同じ寮舎で暮らしているんだ。我慢できなくなるのも仕方がないことだからね」
 ――嘘八百を並べる気だ、この人!
 それどころか、先に周囲を納得させる方法で結婚に持ち込まれてしまうかもしれない。ケイティだって、妙齢の女性なのだ。そんなことをされたら、今後ほかの相手との縁談に差し障る。
 ほかの、相手。
 結局、自力で稼いで家族を養おうとがんばったところで、最終的に困窮したら裕福な男性にすがるしかない人生が悔しかった。多くの女性がそうやって家族を助けてきている。貴族同士ともなれば、政略結婚は当たり前の話だ。
 ――だけど、わたしは……
 絨毯の上に仰向けになり、ケイティは自分を見下ろすリアムの美しい瞳に魅入られていた。
 いっそ、このまま彼の言うとおりになってしまえばいいのだろうか。相手は魔王を自称しているが、貿易商を営む軍人でもある。リアムなら、条件としては問題ない。そして、彼はきっと自分のことも家族のことも大切にしてくれるだろう。
「っ、駄目、です」
 心がぎゅっとねじれるような痛みがあった。
 条件を並べて彼に抱かれるのも、結婚するのも、嫌だ。
 リアムが魔王だからではなく、彼との間にそんな契約のような関係を結ぶのが嫌だった。
「駄目だと言っても、きみは僕から逃げられないだろう?」
 あえかな笑みを浮かべる彼は、泣きたくなるほど美しい。
「逃げられないからって……あ、な、何するんですかっ」
「さあ、なんだと思う?」
 目を細めたリアムが、ケイティにのしかかったままで首筋に顔を寄せてくる。
 ――どうしよう。どうしたらいいの!?
 大きな手が、肩から二の腕を撫でた。往復しては、衣服の下のケイティの輪郭をたしかめていく。そして、するりと指先が胸元に触れた。
「っっ……!」
「そんなに緊張しないで。ひどいことはしたくないんだ」
 ――ひどいことなんて、そんなの困る。今だって、心臓が壊れそうなほどに早鐘を打っているのに。
「お願い、ひどくしないで、ください」
「ああ。優しくする」
 ――優しくしないでいいから、ヘンなことをしないでほしいのに!
 なのにどうしたことだろう。彼の吐息が肌をかすめるたび、ケイティは抵抗できなくなっていく。リアムの手に触れられる体が、熱を帯びていくのだ。
 コルセットをつけていない胸元を、彼がやんわりと揉みしだく。
「ん……っ……」
 幾度となく手のひらで乳房を転がされているうちに、胸の先端がせつなさに屹立してくるのを感じた。
 自分の体が、自分の心を裏切っていく。まるで、彼に触れられるのを喜んでいるように反応するのが止められない。
 背筋を、ぞくぞくと甘い期待が駆け上がってくる。
「感じてくれるんだね。嬉しいよ」
「わ、たし……」
「いい子にしていたら、気持ちよくしてあげる」
 背中のリボンがほどかれると、普段使いのドレスはふわりと広がる。いつの間にか、ドレスが下着ごと胸の下まで引き下ろされ、なだらかな胸の膨らみが空気にさらされていた。
「! 待っ、こんな、大佐、お願いですから……っ」
「怖がらないで。きみを愛でたいんだ」
 ――いけないことだとわかっているのに、もっとしてほしくなる。この先にある何かをたしかめてしまいたくて……
「かわいいよ、ケイティ」
 彼が左胸に顔を近づけ、色づいた部分にかすめるだけのキスをした。
「ひ、ぁッ……」
 これまでの人生で感じたことのない、初めての感覚が全身をひりつかせる。
 痺れるような、淫靡な悦び。
 体がびくびく震えて、ケイティは肩で息をする。
「ここも、僕に触れられるのを期待してるみたいだ」
「ぁ、あ、おかしいんです。わたしの、体……」
 まるで魔法にかけられたように、全身が甘く蕩けていく。特に彼の触れた部分は、痛痒にも似た快感が満ちている。
「おかしくなんてない。きみは今、僕の愛撫に感じてくれているんだから」
「ん、ぅ……っ、ぁ、ああ、っ……!」
 ぴちゃ、と舌先が躍る。彼の唇が胸の先端を食むのがわかった。
 やんわりと舌と口腔が感じやすい部分を圧迫してくる。それが、胸を吸われているのだと気づくまで、ケイティは意味もわからぬ快感に体を震わせていた。
「や、吸わないで……っ」
「駄目だよ。ほら、きみの体は僕にもっとしてっておねだりしている」
「だって、ぁ、ああ、気持ちよく、しないで……」
「それはできない相談だね」
 ドレスのスカートに膝をつき、リアムは脚の間をこすり立ててきた。
 彼の膝が内腿に挟み込まれる。誰も触れたことのない秘処に、初めての情熱が湧き立っていく。腰の奥から体がぐずぐずに溶けてしまう気がした。
「もっと、きみを教えて」
 リアムは左胸を唇であやしながら、右胸を指で弾いた。
「ぁあ、あ、大佐、こんなの……」
「こんなのは、嫌かな?」
 ――嫌なのに、どうして? 体がおかしくなる。
「ねえ、言って。ほんとうに嫌かい、ケイティ」
「ん……っ、気持ちいいの、お願い、お願い、気持ちよくしないでください。感じさせないで……」
「素直ないい子だね」
 ご褒美とばかりに、リアムが舌先で先端を舐った。
「ひぁんッ、や、ぁ、ああ、それダメぇ……っ」
「感じやすいきみが、ますますほしくなった」
 顔を上げた彼は、両手を胸元に伸ばしてくる。乳房をつかまれるのかと身構えたが、そうではない。リアムは指の背でつんと屹立した部分を撫ではじめた。
「は、ぁ……っ」
 すりすりとかすめる程度の刺激が、左右の胸の先から伝わってくる。乳暈をなぞり、先端を撫で、ゆっくりとケイティの快楽を引き出すような動きだ。
 ――こんなの、ただ肌に触れられているだけ。そう、手をつなぐのと同じ……なのに。
 次第にぷっくりと芯が通った乳首が恥ずかしくなってくる。彼に触れられて感じているのが、ケイティにもよくわかった。
「かわいいね、ケイティの体。もっとさわってほしいって、こんなにいやらしく凝ってるよ」
「っっ……、そ、んなの……」
 ただの生理的な反応だと言いたいのに、気持ちよくてたまらない。撫でられるだけでは物足りなくて、無意識に胸を突き出してしまう。
「よしよし、舐められるほうが好きなのかな?」
「き、もちい……」
「舌で転がしてあげるのと――」
 言うが早いか、リアムが伸ばした赤い舌で乳首をくるり、くるりと転がしてくる。
「っは、あ、あっ、それ、いい、ダメぇ」
「ふふ、いいのかな? 駄目なのかな?」
「ぅ、いじわる……っ」
 気持ちいいに決まっている。その証拠に、ケイティの体は甘く潤ってきていた。脚の間がぬかるみ、そこにリアムの膝が当たっているのがせつない。
 ――動かされたら、音が聞こえちゃう。
 そうならないよう、ケイティは必死で彼の膝を太腿で挟み込んでいた。
「ああ、それとも口に含んで舐めてあげるほうが好き?」
「ひ、ぁッ……! や、それ、ムリっ、お願い、吸わないで……っ」
「そっか。吸ってほしいんだね。いいよ、片方ずつしかできないけどごめんね?」
 ちゅうぅ、と彼が口をすぼめてケイティの右胸を吸い上げた。何も出ない、処女の乳首が快感にぴくんと震える。
 ケイティは絨毯の上で、小刻みに体を震わせた。やわらかな短い髪が、肩口で揺れている。
 ――気持ちいい。すごく気持ちよくて、何も考えられなくなっちゃう。
 ひたと密着した秘処と彼の膝が、かすかにこすれた。
「っっあ! あ、あっ……」
 ほんの少し彼が動いただけで、腰が跳ね上がる。すると、寝間着の上からでも柔肉がくちゅりと音を立てるのが聞こえてしまった。
「ダメ、ダメなのに……」
「濡れて、熱くなっているよ。ほら、こうして」
 彼が、膝を上下に動かす。
「あ、っ、あ、あっ、ああ!」
「ね? わかる?」
「動かさないでっ……! ぁ、ああ、そこはダメなの、お願いです……っ」
「駄目じゃなくて、感じるんだね」
「うぅ、感じる、感じすぎちゃうからぁ……!」
「いい子だね。じゃあ、気持ちいいって言ってごらん。もっとよくなる」
「そ……んなの、言わな……、あああ!」
 強く押しつけられ、腰が逃げを打つ。リアムはそれを両手で押さえつけ。いっそう割り込むように膝の角度を変えた。
「聞きたいな。ケイティが、僕に愛撫されて気持ちよくなってるの、教えて」
 胸と下半身に同時に与えられる快感が、脳まで到達する。
「ぅ……っ、ぃ、いい、あ、やだ、言いたくな……っ」
「うん、聞かせて?」
 ドレスまで染みた透明な液体が、彼の膝を濡らしていた。腰を左右にはしたなく揺らして、ケイティは絨毯に爪を立てる。
「言ってくれたら、今夜はここでやめてあげる。そうじゃないと、ケイティを僕の妻にしてしまおうかな」
 その意味がわからないほど、ケイティだって世間知らずではない。
 純潔を散らすと、彼は言っているのだ。
 ――それだけは、絶対にダメだから……!
 ちゅ、ちゅっと何度もリアムが胸の先を吸う。それに合わせて、彼の膝が敏感なところをこすっていた。
「ふ……っ、気持ち、い……、大佐にさわってもらって、気持ちよくて、おかしくなっ……あ、あ、あ!」
「僕にされるから、気持ちいいの?」
 脳までまわった快楽という名の甘い毒が、ケイティから羞恥心を奪い取っていく。
「大佐だから、ぁ、気持ちぃ……ッ」
「かわいいことを言って、僕を煽るのがじょうずだね。いいよ。このまま、イカせてあげる」
「んんっ……! ぁ、あ、ヘンに、なっ……」
「なってごらん。気持ちいいよ。ほら、ケイティ」
 浅い呼吸を繰り返し、ケイティは陸に上がった魚のように腰を跳ね上げた。亀裂の先端にある小さな突起が、快楽に張り詰めている。そこを重点的にこすられて、頭の中が真っ白になった。
「ひゃぁ、んっ、い、やああ、何か、来る、来ちゃう……っ」
「優しくするから怖がらないで。このまま、僕に感じさせられてイッてしまえばいい」
「んく……っ、ぁ、ああっ、イッ……くぅ、ぅ……!」
 耳の裏で、どくどくと自分の血管が脈を打つ音が聞こえていた。
 四肢を糸で引っ張られた操り人形のように、ケイティはピンと両手両足を絨毯の上で突っ張らせる。腰の奥深いところで熱が弾けて、脳天まで快感が引き抜かれていく。
 ――これが……達するということなの?
 初めての果てにあえいでいると、リアムが優しく頭を撫でてくれた。
「ちゃんとイケたね。かわいかったよ、ケイティ」
「っっ……、こ、こんなことをしていいと思っているんですかっ?」
「きみが僕を愛してくれると信じて、未来の快感を少々先取りしたまでのことだよ」
 悪びれる様子もない、美しい笑顔。
 ケイティはまだ力の入らない体で、必死に起き上がろうとする。
「まだ無理だよ。どうしても起き上がりたいなら――」
 脇の下に手を入れられて、ひょいと体を持ち上げられた。
「たっ、大佐!?」
「こら、暴れないで」
 そのまま長椅子の上に下ろされて、ほっと息を吐く。もしも隣の寝室に連れて行かれたら――きっと、逃げられない。
  乱れたドレスの胸元を手で隠す。
 ケイティを座らせたあと、彼は棚の上から紙で包まれた瓢箪状の何かを持ってくる。両手で包み込んで、ちょうどいいくらいの大きさだ。ただし、それはリアムの大きな手の場合である。ケイティが持ったら、そうはいかない。
「はい、これ」
「……え。わたしに、ですか?」
「そうだよ。先日、割れてしまったからね」
 包み紙を剥がすと、中から出てきたのは白い陶器に金縁の装飾をほどこしたティーポットだ。
「きれい……」
「気に入ってもらえたようでよかった。シュガーポットとカップとソーサーもそろいで購入したんだ。今度、これで紅茶を淹れてくれるかい?」
「……はい、わかりました」
「きみの分のカップもあるから、一緒に飲もう」
 艷やかな黒髪をかき上げて、リアムが目を細める。
 どうしようもないほど、魅力的な人。彼の美しさは、魔王だからなのか。それとも――
「歩けるようになったら、部屋まで送っていくよ。なんなら、抱き上げて運んでも構わないけれど」
「ひとりで帰れます!」
「ふふ、ケイティはほんとうにかわいいね」
 今の会話の何が気に入ったのか、リアムは嬉しそうに笑い声をあげた。


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