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騎士王さまと甘恋旅行①
聖なる夜のプロポーズ

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書籍紹介

この旅で、ますます君が好きになった

柔和で端整な顔立ちの騎士王オーウェンと周辺国を巡る旅に出たジリアン王女。肩書きのみの婚約者だったはずなのに、初めてのことばかりで戸惑う自分を助けてくれたり、危険から身を守ってくれる彼にどんどん惹かれていく。精霊祭の夜、厳かな大聖堂でついに告白されて! ねだるようなキスと情熱的な愛撫で身体に快感を刻み込まれる。想いを通わせ、本当の甘恋旅行が今始まる――!

ジャンル:
西洋
キャラ属性:
ワイルド・騎士・軍人
シチュエーション:
年の差 | 甘々・溺愛 | 政略結婚 | 船上・旅もの
登場人物紹介

オーウェン

ロサ王国を治める騎士王。心優しく精悍だが、寡黙なため相手に威圧感を与えてしまうことがある。小柄なジリアンと並べば子供と大人くらいの差が出るほど長身。

ジリアン

ガレオス王国第二王女。明るく聡明だが、実姉アレクサンドラの影響でつい高慢ぶってしまうのが短所。国の決まりで騎士王オーウェンと他国を巡る旅に出る。

リラ

島国ユーノの女王。美しいが表情に乏しく冷たい印象の女性。王として国民の生活を守ることを第一に考えてきた。

立ち読み

 船に揺られて塩辛い潮風を頬に受けながら、ジリアンは遠ざかる祖国を見つめていた。
 王女として育った彼女が国を離れるのは、初めての経験だった。
 ここから先は頼れる父がおらず、優しい義母もいない。行く先で何が起きても、ジリアンは一人で対処しなければならないのだ。
 祖国の港が小さくなるにつれて、国を発つ前までは高揚していた気分が不安の色で塗り潰されていく。
 勝手に震え始める両手を握りしめていたら、後ろから声をかけられた。
「ジリアン殿」
 ハスキーで深みのある声だった。
 ジリアンが弾かれたように振り返ったら、長身の男が佇んでいる。
「甲板に居続けると身体が冷えます。船内へ入ったほうがいい」
 男が差し伸べてきた大きな手に、ジリアンはおそるおそる自分の手を重ねる。指先から伝わる温もりが、身を苛んでいた不安を緩和してくれた。
 穏やかに揺れる船上で、ジリアンは遠ざかる祖国に背を向けて船室に向かう。
 ふと足を止めて空を仰ぐと、まるで彼女の船出を祝うように、規則正しく隊列を組んだカモメが横切っていく。
 ジリアンは肩の力を抜くと、男の手を握り返して凜と顔を上げた。
 祖国を発った直後に不安を覚えていたら、今後どうするつもりなのだと、彼女は自身を叱咤激励する。
 これから学ばなければならないことがたくさんある。前を向いていこう。

 ジリアンの旅は、ここから始まるのだから。

 


 それは、ジリアンが幼い頃の記憶である。
「いいわね、ジリー。王族としての誇りを持ちなさい。私がどうふるまうのか、その目でよく見ておくのよ。王女たる者、わがままなくらいでちょうどいいの」
 華やかな夜会の席でジリアンにそう囁いた姉のアレクサンドラが、ドレスの裾を持ち上げながら客人の前に出ていく。
「おお、王女殿下。よろしければ、ダンスでもいかがかな?」
 他国から訪れた貴族の男性が、アレクサンドラに恭しく手を差し出した。
 それを一瞥したアレクサンドラは、顔を背けて言い放つ。
「お断り致します。ガレオス王国第一王女である私に軽々しくダンスを申し込むなんて、なんておこがましい方なのかしら。下がりなさい」
「アレクサンドラ! 何と失礼なことを!」
 客人が唖然としており、ガレオス王の叱りつける声が響き渡った。
 アレクサンドラは気にした素振りもなく、顎をツンと逸らしてジリアンのもとまで戻ってくる。
「ちゃんと見ていたわね、ジリー」
「はい。でも、お姉さま。今のは、とても失礼だと思います」
「あれでいいのよ。他国から訪れた使者なんて、大国ガレオスの恩恵に与りたくて足を運んできているようなものなのだから。私たちは大国の王女なの。嫌なものは嫌だとハッキリ言ってもいいのよ。使用人たちの前でも同じよ。常に堂々として、高慢にふるまっても許されるの」
 アレクサンドラが戸惑うジリアンの手を取り、言い聞かせるように告げた。
「あなたも、私のようにふるまいなさい」
「……だけど……お客さまには、礼儀正しくしないと……」
「ジリーは、私の言うことが間違っていると言いたいの?」
「いいえ、お姉さま」
 不愉快そうに顔を歪めるアレクサンドラを見て、ジリアンは慌てて首を横に振る。
 母のイザベラが急逝してから、母親代わりであったアレクサンドラの言葉は、幼いジリアンにとって従うべきものだった。
「だったら、私がどうふるまうのか、いつも見ておきなさい。分かった?」
「はい。お姉さま」
「ジリアンは、とてもいい子ね」
 アレクサンドラは満足げに微笑むと、ジリアンの頭を優しく撫でてくれた。
 他国のお客様の前では王女として自分の意思をハッキリ告げること。
 嫌なものは嫌だと言う。そして、使用人たちの前でも王女としてあり続けること。
 しかし、ジリアンが姉の教えを胸に刻みこみ、アレクサンドラと同じようにふるまおうとしていても、どうしても良心が咎めることが多くて──。
 ある時、ジリアンはアレクサンドラがいる前で、前王妃の侍女をしていた女性に高飛車な物言いをしてしまったことがあった。姉の教えに従ったのだ。
 そして姉が満足げに部屋へ去ったあとで、ジリアンは侍女のもとへ行き、服をツンツンと引っ張って頭を下げる。
「さっきは、ごめんなさい」
 ジリアンがもじもじしながら謝ると、侍女は驚いた様子で目を丸くしてから、ゆるりと首を振った。
「ジリアン様が謝られることはございません」
「あのね、お姉さまがいたから……」
「分かっております。ジリアン様は、お優しい方なのですね」
「……私ね、お姉さまが言う通りに、うまくできないの。何だか、いけないことのように思えて……お姉さまみたいに、大国の王女として、しっかりしないといけないのに」
「ジリアン様……」
「お母さまは、もう死んじゃったし、お父さまはお忙しいから……お姉さまが教えてくれることを、いい子で守らないといけないの。お姉さまみたいな、王女になるために」
 ジリアンが物心つく前に母は死んで、アレクサンドラは母代わりだった。
 自分に言い聞かせるように繰り返すジリアンを、亡き王妃に仕えていた侍女は何も言わずに抱きしめてくれた。
 当時のジリアンは幼くて、姉の考え方が正しいのかどうか判断できなかった。
 しかし、聡明な彼女は成長するにつれて姉の教えに疑問を抱くようになり、やがて十九歳になって──運命を変える出会いを果たすことになる。

◇◆◇

 その日、ガレオス王国第二王女のジリアンは父に呼ばれていた。
 ジリアンは王の謁見の間に向かいながら、侍女が語る噂に耳を傾ける。
「ガレオス王国の王女は、気位が高すぎて、わがまま放題。他国ではそういう噂が立っているそうですよ。よろしいのですか、ジリアン様」
「他国の噂なのでしょう。私にはどうすることもできないわ」
「ですが、ジリアン様のことを悪く言われるのは我慢できません」
「私もミナに同意します。皆、ジリアン様のことを誤解しているのです」
 膨れ面をする侍女のミナとそっくりな顔をした双子の姉、アナも同意してくる。
 ジリアンは忠実な双子の侍女を見つめて柳眉を寄せた。
「どう言われようが、構わないわ。それに──あながち間違いじゃないのだから」
 小声で呟いたジリアンは、謁見の間へと続く階段を上り始めた。
 彼女は明るい蜂蜜色の髪と鮮やかなコバルトブルーの大きな瞳を持ち、熟れた野イチゴのように赤く、ふっくらとした唇が魅力の王女だった。
 小柄だが愛くるしい顔立ちをしているジリアンの歩く姿は人目を惹き、彼女が微笑めば荒れていた海が収まって、曇り空さえ晴れ渡ると人々が囁き合うほどだった。
 もちろん、海を鎮めたり、空を晴れさせるという部分については、吟遊詩人が誇張して歌ったために広まった話だが、少なくともガレオス王国の民たちはジリアンに対して好意的な印象を抱いているということだ。
 その一方で、彼女については別の噂も囁かれていた。
 それが、先ほどミナが語ってくれた内容なのである。
 王との謁見の間に到着した彼女が扉を開けると、にこやかなガレオス王がおり、こちらに背を向けている長身の男性と握手をしているところだった。
「おお。来たか、ジリアン」
「お父様。謁見の間に急いで来いと言われたのですが、どうなされたのですか?」
「他国から客人が到着したのだ。さぁ、ご挨拶を」
 ジリアンは背筋を伸ばして玉座に向かった。すると、挨拶をしていた男が振り返る。
 彼と目が合った瞬間、ジリアンは僅かに息を呑んだ。
 男は黒髪に紫水晶の瞳を持つ美丈夫だった。鼻筋が通っており、垂れ目で穏やかそうな面立ちをしている。
「ジリアン。こちらはロサ王国の王、オーウェン殿だ。遠路はるばる、我が国まで旅をしてこられたのだぞ」
 ロサ王国──大陸の西端に位置して、優秀な騎士団と、美しい薔薇の産地として有名な小国だ。
 紹介を受けたオーウェンの薄い唇が弧を描く。笑うと目が細まり、ひどく優しげな表情で見つめられたので、ジリアンの鼓動は勝手に高鳴った。
 一礼されて、ジリアンも礼で返して男の脇をすり抜けると、父の隣に立つ。
 向き合ってみて気づいたのは、オーウェンの身長がとても高いということだった。
 小柄なジリアンでは、首を傾けないと彼の顔が見られない。体格も鍛え上げられた騎士のように肩幅が広かった。纏っている漆黒のフロックコートがよく似合っている。
「はじめまして、王女殿下。オーウェン・カヴァリエ・ロサと申します。お目にかかれて光栄です。こちらは祖国の薔薇です。枯れないように細心の注意を払いながら船で運ばせました。どうぞ、お受け取りください」
 恭しく挨拶をしたオーウェンが、侍従から薔薇の花束を受け取って差し出してくる。
 深紅の薔薇は上質のベルベットのように光沢のある花弁が重なり合っていて、思わず見惚れてしまうほど美しかった。
 ロサ王国で栽培されている薔薇の美しさは有名で、各国との交易でも高値で取引されている高級品なのである。
 ロサの薔薇一株を買うためには、高価な香辛料が何袋も必要だと言われていた。
 ジリアンはオーウェンとは目を合わさずに花束を受け取ると、丁寧な手つきで背後の侍女に渡す。
「わざわざ、ありがとうございます。……アナ。あとで部屋に運んでおいて」
「かしこまりました」
「お父様。私をこの場に呼んだのは、ご挨拶だけではないのでしょう」
「ああ。実は今回、オーウェン殿からお前との婚約についてのお話を頂いたんだ。そのために、わざわざガレオスまで足を運んでくださったのだよ」
「我がロサ王国は、ガレオス王国と深い繋がりを持ちたいと願っています。この婚約をぜひとも前向きに検討して頂ければと思い、ご挨拶に参りました」
 オーウェンの声はハスキーで、滑舌がよく聞き取りやすい。
 婚約という響きに顔が歪みそうになるのを堪えて、ジリアンは彼を観察した。
 見た目から推測して、オーウェンの年齢は二十代後半から三十代の前半だろう。
 ジリアンとて一国の王女として生まれたからには、他国へ嫁がされるのは己の役割であると理解している。
 だが、彼女はまだ祖国で学びたいことがたくさんあった。あと二ヶ月で二十歳になり、待ち望んでいた〝ガレオスの慣習〟も行なえる年齢になるのだ。
 こんな時に、お姉様だったらどうするかしら。そう考えて取った行動は一つだけ。
「ロサ王国からいらっしゃった国王陛下。先ほどの薔薇、あのような贈り物で私を懐柔しようとしても無駄ですよ。ロサ王国のような小国に嫁ぐなんて、私は嫌です。どうぞ、お国にお帰りください」
 ああ、ダメよ。私ったら、またそんな言い方をして。
 皮肉めいた口調で言い終えると同時に後悔の波に襲われるが、ジリアンは顔には出さずに、高慢ちきな王女のように顎を逸らして踵を返す。
「ミナ、アナ。話は終わったわ。部屋に戻るわよ。ぐずぐずしないで」
「こら、ジリアン!」
 苦い表情を浮かべたガレオス王が叱りつけてくるが、ジリアンは目を逸らしたままドレスの裾を持ち上げると、礼儀正しく一礼して謁見の間を後にする。
「どうか王女の無礼な発言を許してくれ、オーウェン殿。本来は礼儀を弁えている娘なのだ。だが、色々と事情があって……」
「お構いなく。気にしておりません」
 謁見の間を出る際、オーウェンの言葉が聞こえてきて、ジリアンは振り返った。彼女を見送る菫色の瞳は、先刻の不躾な発言にも怒っているようには見えない。
 ジリアンはオーウェンの視線を無視すると、侍女を連れて自室に戻った。
 次の瞬間、力が抜けたかのように座りこむ。
「ああ、またやってしまったわ……」
 可憐な唇からは、弱々しい呟きが零れ落ちた。
「あんな言い方をしなくても、よかったのに……美しい薔薇を頂いたのに、贈り物の感想さえ言えなかった……何てことなの……」
「ジリアン様。そうやって床にお座りになられるのは、行儀が悪うございますよ」
「後悔されるくらいなら、言わなければよろしいではありませんか」
 ミナが笑いながら手を貸してくれて、アナは呆れ顔で薔薇の花束をテーブルに置く。
 侍女に手を引かれてカウチに腰かけると、ジリアンは両手で顔を覆い、項垂れながら謝罪を口にした。
「あなたたちも、ぐずぐずしないで、なんて酷いことを言ってごめんなさい」
「私たちは気にしておりませんよ。ねぇ、アナお姉様」
「はい。全く気にしておりません」
「そう……自分でも、あの態度はいけないとは分かっているの」
 ジリアンの頭の中には他国に嫁いだ姉、アレクサンドラの言葉が過ぎっていく。
 ──他国から訪れた使者なんて、大国ガレオスの恩恵に与りたくて足を運んできているようなものなのだから。私たちは大国の王女なの。嫌なものは嫌だとハッキリ言ってもいいのよ。
「王女としての心得を散々お姉様に教えられてきたから……お姉様の態度を真似していたら、身体に染みついて抜けなくなったの」
 最初は、幼い娘が母の行動を真似するような、そんな軽いものだったのだ。
 しかし成長するにつれて〝こんな時、姉だったらどうするのか〟と考えるようになり、姉もまたジリアンが同じ態度を取ると褒めてくれて、その結果が今の状況なのである。
 ゆえに巷で流れているという〝高慢でわがままな王女の噂〟というのは、ジリアンが姉を真似して高慢にふるまった結果、流れた噂なのだ。
「お姉様の行き過ぎたふるまいを、真似しないように色々と改善したはずなのに、他国のお客様の前でだけは、まだ失礼な態度を取ってしまうの……あの方の名前は、オーウェン様だったかしら。きっと、私は嫌われてしまったわね。間違いないわ。お父様にも恥をかかせてしまった」
「私たちはジリアン様の努力を知っておりますよ。ジリアン様ったら、使用人に対してまで『酷い物言いをしてごめんなさい』って、謝りに来られるのですもの」
「城の者たちは皆、弁えております。気になさらないほうがよろしいかと」
「気にしないなんて、無理よ……ベネディクトにも盛大に嫌味を言われるわ」
 ベネディクトというのはガレオス王国の宰相であり、侍女のミナ、アナの養父だ。
 打ちひしがれているジリアンをよそに、ミナが紅茶を淹れてくれて、アナは薔薇を飾る花瓶を探しているようだ。
「ジリアン様。紅茶を飲んで元気を出されてください」
「宰相様のもとには、私どもも一緒に叱られに行きますわ」
「……そうね。あなたたちが居れば、心強いわね。大人しく叱られに行きましょう。あとで、お父様にも謝りに行かないと」
 ジリアンは優秀な双子の侍女の顔を順番に見やると、紅茶を飲んで心を落ち着かせてから立ち上がった。
 オーウェンに貰った薔薇の花束をそっと抱えて、身を翻す。
「こんなに素敵な薔薇は見たことがないわ。花瓶に入れただけでは、すぐに枯れてしまうかもしれない。庭師のジョンに、どうやって飾るのが一番いいのか聞きに行くわ。あなたたちも付いてらっしゃい。一緒に話を聞きましょう」
「はい、ジリアン様」
「はい、ジリアン様」
 双子の侍女は全く同じ声で答えると、嬉しそうな顔でジリアンの後を追ってきた。

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