新しくカートに入れた電子書籍 すべて見る
カートを見る 合計金額(税込)0円
新しくカートに入れた電子書籍 すべて見る
カートを見る 合計金額(税込)0円

男装騎士

本を購入

本価格:670(税抜)

カートに追加しました
電子書籍を購入

電子書籍価格:670円(税抜)

獲得ポイント:7pt
電子書籍を閲覧するにはビューアアプリ「book-in-the-box」(SHARP)をインストールしてください。
書籍紹介

男装がバレて幼馴染みのエリート騎士に愛されました

男性と偽って騎士になったクルト。隠していたのに幼馴染みのカインに知られ、プロポーズされちゃった!? 嬉しい気持ちで身を任せれば、優しく抱きしめてくれて。「お前の乱れた顔を見ていいのは俺だけだ!」誰にも見せたことのない白い胸に付けられる彼の痕。媚肉を穿ち注がれる飛沫。夜ごと激しさを増していく独占欲と熱情に身も心も溶かされ、愛される喜びを知ってゆき……!

ジャンル:
西洋 | ファンタジー
キャラ属性:
ワイルド・騎士・軍人
シチュエーション:
幼馴染・初恋の人 | 甘々・溺愛
登場人物紹介

カイン

クルトの幼馴染みで優秀な騎士。寡黙だけど熱い想いを胸に秘める。皇帝ジークフリートに憧れていて、髪型を真似ている。

クルト

男装をして騎士を刷る少女。カインとは幼馴染みでずっと性別を偽ってきたことに後ろめたさを感じている。上司に男装がバレて『戦女神』役を受ける。

立ち読み

 月に二度、街を縦断する大通りにさまざまな露店が並ぶ『市』の日。ルーファルト帝国の東に位置する中核都市──ポルガンは、朝から多くの人で賑わっていた。
 買い物客や見物人、それに店を開く側の者が入り乱れ、収穫祭並みの人出だ。普段は馬車や騎馬も行き交う通りだが、今日は徒歩の者だけが通れると決まっており、それでもすれ違う相手と肩がぶつかってしまいそうに混んでいる。
 しかしそういう中でも、決まりを守らない者はいる。
 通りに敷かれた石畳に、馬の蹄の音とガラガラガラと木製の車輪の転がる音が響き、反射的に飛び退いた人々を掠めて、一台の黒塗りの立派な馬車が街の最奥へ向かい、疾走していった。
「なんだ? 危ないな!」
「どうして馬車が?」
 本来は馬車が通れないことを思い、憤りの声を上げる者もいるが、それはたいてい他所からの来訪者だ。ポルガンの街に住む者ならば、馬車の扉に描かれていた、二本の旗に百合の模様の紋章を知らない者はいない。
「しっ! 領主さまの馬車だよ」
 馬車の主を教えられると、怒りをあらわにしていた者たちもすぐに口を噤んだ。
 ポルガンの領主──ホルガー・ウェルゼン伯爵は、この街において絶対の権力を持っている。その上残忍な性格で、住民たちを己と同じ人間とは思っていない。睨まれたならば街で暮らせなくなるどころか、命の保証がないことは、近隣の町や村まで広く知れ渡っていた。皆、口を噤んで、何事もなかったかのように歩き始める。
 そんな中、また人ごみの中で悲鳴が上がった。
「誰か! 誰かその子をとり戻してくれ! 人攫いだ!」
 悲痛な訴えが聞こえてきたほうから、フードつきのマントで人相を隠した男が猛烈な勢いで走ってきて、建物の陰に飛びこもうとする。
 男は腕に四、五歳くらいの子供を抱えており、声を聞いた屈強な男たちがさっと進路を塞いだ。
「くそっ!」
 逃げきれないと見た男が、抱えていた子供を放り出して、我が身一つで逃げていく。立派な体の男たちはそのあとを追い、地面にころんと転がった子供には、すぐ近くの露店で野菜を売っていた恰幅のいい婦人が駆け寄った。
「ちょっと! ああ……大丈夫かい?」
 幸いけがなどはなく、子供は大きな紫色の瞳をきょとんと瞬かせている。
「まあ……こりゃあ……」
 助け起こした婦人が思わず納得の息を吐いてしまうほど、それは愛らしい少女だった。
 幼児らしい丸みを帯びた頬は透きとおるように白く、陶器めいた美しさがある。紫水晶にも似た瞳は零れ落ちんばかりに大きく、太陽の光を受けて、純粋そのものといったふうに煌いていた。
 何よりとても珍しい銀色の髪をしている。腰までの長さがあるその髪をふわふわと揺らし、女性を見つめてにっこりと笑う少女は、表情も仕草も実に愛くるしい。
「無理もないわ……」
 その容貌ゆえに、攫われかけたことにもつい頷いてしまう婦人の前に、少女の父親と思しき男が、ようやくたどり着いた。
「クレア……ああ、よかった……」
 真っ青な顔色のその男は、婦人に抱かれた少女の姿を見ると、ほっと表情を緩めたが、そのまま崩れ落ちるように地面へ倒れてしまう。
「ちょっと、あんた!」
 婦人も、その周りにいた人々も驚いて駆け寄りかけたが、男の背に深々とナイフが突き刺さっていることを確認すると、悲鳴を上げて動きを止めた。
 男が足をひきずるようにして歩いてきた道には血の跡が残っており、倒れた地面には見る見るうちに血だまりが広がる。
「…………」
 地面に顔を伏せたままの男は、もうぴくりとも動かない。もはやどうすることもできず、手で口もとを覆った夫人の腕から、少女が身を捩って下りようとする。
「おとうしゃん……」
 にこにこと笑いながら、動かなくなった男に手を伸ばす様子を見て、周囲からはすすり泣きの声も聞こえた。
「かわいそうに……」
「さっきの人攫いに刺されて?」
 何もわからずに無邪気に手を伸ばす少女を腕に抱きしめ直すと、婦人は自分の露店をふり返って叫ぶ。
「カイン! ちょっと来ておくれ!」
 呼びかけに応じて、黒髪の少年が古い布製の屋根の下から出てきた。年の頃は婦人に抱かれた銀髪の少女とそう変わらないが、背が高く、とても落ち着いた雰囲気がある。じっと婦人を見上げる青い瞳は、相手の意図を読み取ろうという意志に満ちており、いかにも聡明そうだった。
「この子としばらく店の裏で遊んでおいで、いいね?」
 婦人が腕から下ろした少女の手を取り、少年はすぐに頷く。
「うん、わかった」
 ほぼ表情の変わらない顔を見つめ、少女がにっこりと微笑んだ。
「だあれ?」
「カインだ」
 短く答えた少年に手を引かれ、少女が店の奥へ入っていくと、婦人は腰に巻いていたエプロンを解き、地面に横たわる男性にかけてやる。
「うちの子と同じくらいの年の子供を残して……心残りだろうねぇ……よくわかるよ」
 数人で囲んで手をあわせているうちに、誰かが呼んだ警邏隊がその場に駆けつけ、男の遺体は役所へと運ばれていった。


 その日のうちに婦人に届いた知らせによると、亡くなったのはハリスという隣町の男で、仕事を求めてちょうど今日、ポルガンの街へ出てきたところだったらしい。家も財産もなく、一人残すことになってしまった少女以外には、身寄りもなかった。
「困ったねぇ……」
『市』が終わり、街の外れの古い借家へ戻った婦人は、息子のカインのあとをついてまわる少女を見つめる。
 警邏隊の男たちに怯えて泣きだしたので、父親の身元がわかるまでと預かることにしたが、判明したのは少女には行く宛がないという事実だった。
 夕食の、豆のスープが入った鍋をかき混ぜながら、婦人はため息を吐く。
「どうしようかね……」
 女手一つでカインを育てている彼女には、生活にゆとりがあるわけではない。亡くなった夫がやっていたのをひき継いで、小さな畑で野菜を作り、月に二度『市』で売ってはいるが、収入は微々たるものだ。
 壊れかけの古い家をぎりぎりの家賃で借りて、替えのない服を毎日着て、カインと二人でやっと生きているだけの生活。それでも──。
「カイン! カイン!」
 楽しそうな声を上げて、カインのあとを追う少女の笑顔を見ていると、自然と頬が綻ぶ。
「やめろって、もうっ」
 いつになく感情をあらわにして、年相応の顔をしている息子の様子も、婦人の心を温かくした。
「よし……!」
 決意を固めて椅子から立ち上がった婦人は、カインにはもう小さくなった男の子用の服を、物入れからひっぱり出す。いつか袋か雑巾にしようと思って、しまっておいたものだが、破れた部分にはちゃんと当て布をして、洗濯もしてあった。
 ふわふわと銀色の髪をなびかせている少女を、手招きする。
「ちょっとこっちにおいで」
 無邪気に駆け寄ってきた少女を抱き止めると、女児用のスカート服から、カインのお下がりに着替えさせた。
 柔らかな銀髪をもったいないと思いながらも、カインと同じように首のあたりで切ってしまう。
 少女は抵抗も疑問もなく、されるがままになっている。
「カインと同じだね」
 髪を短くした頭を婦人が撫でると、少女はとても嬉しそうな笑顔になった。
 婦人はカインに向き直り、じっと目を見つめる。
「今日からこの子はうちの子だ。名前はクルト。弟ができたと思って、困った時は助けてやるんだ。お前が守るんだよ」
 同じように婦人の瞳を見つめていたカインが、細い首が折れてしまいそうなほど、深々と力強く頷いた。
「わかった。絶対に俺が守る」
「ありがとう」
 小さな息子の頼もしい返事が嬉しく、瞳を潤ませて抱きしめる婦人に、クルトと名前を改められた少女も、頬を染めてもじもじと近づく。
「おかあしゃん?」
「ああ、二人とも私の大切な息子だ」
 大きく手を広げた婦人に力をこめてぎゅうっと抱きしめられた子供たちは、悲鳴を上げながらもとても幸せそうに笑った。


 それから半年後、流行り病で婦人があっけなくこの世を去ったあとも、二人の子供は一緒に路上生活をした。そこで出会った、アメリアという八歳年上の少女のもとに身を寄せることになった時も、そのアメリアがさまざまな偶然が重なって皇帝の妃となった時も、常に行動を共にし、揃って宮殿へ同行した。
 二人が出会った時の記憶はなく、母と過ごした日々もおぼろげだが、クルトを『お前が守るんだ』と母から託されたことだけは、カインが忘れることはなかった。
 そしてクルトが、カインの傍を離れることも──。

 

 

 

「おい、クルト。いるんだろ? まだ起きてないのか? いい加減にしろ」
 どんどんと忙しく扉が叩かれる音に、クルトは重たい瞼を必死で開けようとする。
(う、ん……カイン?)
 声の主は聞き違えようもないが、今の状況がよくわからず、目を閉じたまま首を傾げた。
(こんな朝早くから何……? もう少し寝かせてよ……)
 縮こまっていた身体を解そうと腕を伸ばすと、ばさばさばさと頭の上に何かが落ちてくる。
「きゃあっ!」
 悲鳴を上げて飛び起きて、それが頭上に積まれていた本だと確認した。頭の上ばかりではない。身体を丸めて眠ってしまっていた長椅子の、右も左も本に囲まれている。
 それらを見回し、クルトは昨夜、自分が宮殿の本館にある、騎士団用の書庫で本を読み漁りながら寝入ってしまったことをようやく思い出した。
「ああ、そうか……」
「おい、どうした? 何かあったのか?」
 悲鳴を上げたせいで、廊下へと続く扉の向こうから、カインが心配げに問いかけてくる。
「何もないよ!」
 急いで答えながら、クルトは服装が乱れていないかと自分の格好を確認した。
 昨夜は着の身着のままで寝てしまったので、袖の膨らんだシャツに細身のブリーチズとごく普段着だが、シャツの前釦を途中まで開けている。急いで留めたいのに、起きたばかりで指がうまく動かない。
「入るぞ」
 がちゃりと取っ手をまわして、カインが扉を押し開けようとするので、必死に制止の声を上げた。
「待って! ちょっと待ってってば!」
 しかし叫びが終わる前に、騎士団の制服に身を包んだ背の高い人物は、扉の隙間からさっさと部屋の中へ入ってきてしまう。すらりと長い手足、広い肩幅。金釦や飾緒で華やかに彩られた紺地の制服がとても似あう、堂々たる美青年だ。
 細い眉の下で鋭い眼光を放つ切れ長の大きな瞳。意志の強さを感じさせる真一文字にひき結ばれた口もと。精悍さが際立つ顔だち。
 首の横で軽く結わえた癖のない黒髪を揺らして、すっと自分に定められた隙のない眼差しと、その青い瞳の吸いこまれそうな輝きから、クルトは慌てて視線を逸らした。
「待ってって言ったのに!」
 少し怒ったふうのクルトの声を気にすることなく、カインは長い脚を颯爽と動かして長椅子に近づくと、床に散らばった本を拾い始める。
「文句を言う前に、どうせ今日もここで寝てるんだろうと、見事に当てたことを褒めろ。まったく毎晩、毎晩、騎士団の宿舎を抜け出して……」
「……ここを管理してらっしゃるマクシミリアンさまの許可はいただいてるよ……」
 頬を膨らませたクルトの言い訳には返事をせず、カインは淡々と本を集め続ける。
「ずいぶん慌ててたが、何か、俺に見られて困るものでもあるのか? ああ、その涎か?」
「────!」
 ちらりと一瞬視線を流されて、クルトは急いで手の甲で頬を拭った。シャツの釦はカインがこちらを向く前に、ぎりぎり留め終わっていた。
「さっさと顔を洗って行くぞ。お前……今日が厩舎掃除の当番なこと忘れてるだろ?」
 不揃いな前髪の間から、長い睫毛に覆われた青い目に見つめられて、クルトの胸はどきりと跳ねる。
「ああっ! 忘れてた!」
 焦りを叫びでごまかし、カインを押し退けて扉へと向かった。
「おい! 迎えに来てやった俺を置いていくな!」
 急いであとを追ってくるカインに追いつかれないように、早足で廊下を歩き続ける。
「他に、一緒の当番は誰?」
「フランツとギードかな」
「ええーっ! どうしてもっと早く起こしてくれなかったのさ!」
 同じ年頃の騎士見習いたちの中でも、いつも非力なクルトを馬鹿にして、妙に絡んでくる二人の名前を挙げられたので、カインへ非難の目を向ける。
 そんなクルトが首のうしろで一つに結わえている長い髪を、カインが簡単に横を追い越しざま、少しひっぱった。
「ちょっと長すぎるんじゃないか?」
 クルトの波打つように豊かな銀髪は、背中の真ん中よりも下の位置まである。
「伸ばしてるんだよ」
 懸命に脚を動かして、追い抜き返したクルトを、カインがもう一度あっさりと抜き去った。
「そうか」
 ため息交じりの呆れたような言い方と、いくらがんばってももう彼を追い越せそうにないことに腹が立って、頭一つぶん以上も高い位置にあるカインの顔を、クルトはきりっと見上げる。
「カインだって伸ばしてるじゃないか」
 彼も、肩にかかるかかからないかほどの黒髪を、首の横で軽く結わえている。それなのに、クルトの長い髪にばかりいつも微妙な顔をする。
「俺はいいんだ」
「なんだよ、それ……ジークさまに憧れて真似てるんだって、僕、ちゃんと知ってるんだからね」
「うるさい」
 小さな頃から一緒に育ち、誰よりも近くで過ごしてきた相手だからこそ、二人の間に遠慮はない。その関係と、他人に距離を置きがちなカインが自分にだけ積極的に関わることは、クルトの自慢であり喜びだが、同時にうしろめたい思いもある。
 ──クルトは重大な秘密を抱えている。それはカインも知らないことだ。
 子供の頃はあまり変わらなかったのに、ここ数年で差がつくばかりの肩幅の広さや身長を恨めしく思いながら、大きな背中を見つめる。
「なんだ?」
 視線を感じたらしいカインがふり返ったので、その隙に彼を追い抜くことに成功した。
「なんでもないよ!」
 逃げるクルトをカインが無言で追う。
 こういう日々が、一日でも長く続けばいいのにというのが、最近のクルトの一番の願いだった。

おすすめの関連本・電子書籍
電子書籍の閲覧方法をお選びいただけます
ブラウザビューアで読む

ブラウザ上ですぐに電子書籍をお読みいただけます。ビューアアプリのインストールは必要ありません。

  • 【通信環境】オンライン
  • 【アプリ】必要なし

※ページ遷移するごとに通信が発生します。ご利用の端末のご契約内容をご確認ください。 通信状況がよくない環境では、閲覧が困難な場合があります。予めご了承ください。

ビューアアプリ「book-in-the-box」で読む

アプリに電子書籍をダウンロードすれば、いつでもどこでもお読みいただけます。

  • 【通信環境】オフライン OK
  • 【アプリ】必要

※ビューアアプリ「book-in-the-box」はMacOS非対応です。 MacOSをお使いの方は、アプリでの閲覧はできません。 ※閲覧については推奨環境をご確認ください。

「book-in-the-box」ダウンロードサイト
一覧 電子書籍ランキング 一覧

ジャンル・シチュエーション検索

 

ジャンル

キャラ属性

シチュエーション