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平安初恋艶絵巻
桜の貴公子となでしこ姫

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書籍紹介

あなたは男を狂わせる媚薬のようだ

麗しの中将様に憧れる撫子。お近づきになりたいけれど、凜々しく秀麗な顔立ちや品の良い仕草と雰囲気に緊張してしまう。勇気を出して自邸でふたりきりになると、彼が豹変!? 「あなたが私を惑わし、狂わせる」低く艶のある囁き、首筋を這う舌や乳房を揉む淫らな手つき。下腹を穿つ熱杭。撫子のうぶな体は官能を刻まれ、中将好みに変えられてゆく。高貴なお方のやんごとなき溺愛!

ジャンル:
和風
キャラ属性:
王子・王族・貴族
シチュエーション:
玉の輿・身分差 | 年の差 | 甘々・溺愛
登場人物紹介

桜野の中将(さくらののちゅうじょう)

左大臣家の三男。近衛中将で三位の位。蔵人頭も兼任している。撫子には会った時から惹かれている。

撫子(なでしこ)

中級官吏の箱入り娘。明るくやんちゃだが、大恋愛に憧れたり乙女なところがある。

立ち読み

 ──春。弥生。
 爛漫の宇治の里を、やわらかな緑や花々に染められながら、ゆるやかに牛車が行く。
 牛車の物見窓が、すこし開いている。道中の景色を、こっそり眺めている。
 桜の大木が、今年もみごとに咲いている。ちかくにほかに桜の名所はあったが、野とも道端ともつかぬ人寂しげな場所に一本きり堂々と立つその古木を、毎年見た。
 ふとその下に、ひとり佇んでいる青年を目にした。顔は見えない。けれど、佇まいが好もしい。桜の木に包まれるかのようだった。
 牛車はそのまま行き過ぎた。

 じき着いた邸は、相変わらず風流に出家の庵をしつらえている。祖母に招じ入れられた廂の間には、おおきな美しい甕に花ぶりも豊かな桜の枝をかたち良く挿していた。気軽に表に出ることのない貴族の女性は、このようにして桜を愛でる。
 里の桜も満開でした、お忍びで見に参りましょうと声をはずませ誘うと、祖母は、とんでもない、とおそろしげに身を震わせた。
 梅香、黒方、荷葉、侍従の四種の香を、調えてごらんなさい。手ぎわよくおこなうと、満足げに頷いた。衣や歌もさりながら、なにより香でその人の出自や人品がはかれるのです。あなたの母は勝手に調合を変えたりしましたが、とんでもないことでしたよ、と話す。
 新しい香もととのえてはいたけれど、お祖母さまから継がれたものを決して疎かにしていない証しに、母さまは、こうして一厘たがわぬ法をわたしに遺してくださいました。そうおこたえしようとして、繰り返されたやりとりだと気づき、うつむく。
 おっとりと微笑む祖母は、しかし父の家柄が低いと、母の結婚には猛反対だったという。代わりに自分の勧める公達を寝所に忍び込ませようとしたので、母は父のもとに逃げこみ、そのまま結婚したそうだ。孫である自分と弟のことは可愛がってくれる。しかし今でも、あれは母のためだった、不憫な結婚をさせてしまったと言ってはさめざめ泣く。
 母さまは、わたしたち親子四人でいつも幸せそうでした、お好きな父さまとご一緒になれて、わたしたち、仲の良い家族でした。とそう語っても、耳に入らないようだった。
 それでも、無頓着な父が延び延びにしていた裳着を、乳母と一緒になってせっつき、万事滞りなく手配してくれたのは祖母である。
 甕に生けられた桜を見る。きれいだった。甕との取り合わせといい、生けた美しさというものがある。
 でも夜中、こっそり邸を抜けだした。大地に根を張って、枝をぞんぶんに伸ばした桜を、いまは無性に見たかった。尼を装って、祖母の墨染めの衣を頭から被いた。
 ひとは誰も通らない。星と月明かりを頼りに、どきどきしながら一人で夜道を歩いた。
 あの古木の桜が見えてくる。いつも牛車からで、これほどそばで見たのは初めてだ。立って見仰ぎ、はなれて見晴るかし、歩をさまよわせながらまた眺める。
 思いたって桜の枝の真下に入ると、歌には満開のめでたさや散りぎわの儚さがよく詠まれるけれど、枝の下にたくさんの人を宿せる、おおどかな木だと知る。
 花はどこまでもやさしく優美なのに、おとな二人で抱えるほどの幹に手を触れると、うらはらに無骨だった。
 なぜか昼間の青年を思い出す。くすりと笑う。自分がこうして思いきったことができたのは、あの青年のおかげかもしれない。あんなふうに自然に無心に見上げているのが、いいな、と思ったから。すらりとした佇まいだけでも品の良さはうかがえたけれど、人のよさそうなひとだったなと思う。
 と、ちかくの別荘の宴から流れてきたのか、声高く吟じ合いながら、酔人の松明がいくつも近づいてくる。咄嗟に幹の陰に隠れようとすると、そこに、先客がいた。
「し」
 口もとに人差し指をあてているようだ。夜の木下闇で、顔は見えない。手招きして、すこし場所を空けてくれる。
「ひとりになりたくて逃げてきたのです。都にはないこの桜も、今日が見納めだったので」
 なんとなく、昼間の青年だとわかった。話しぶりや声音や、それに香が、どこかあの佇まいと重なったから。がやがやと集団の声が遠ざかっていく。
「すみません、隠れて見ているつもりはなかったのです。やり過ごそうと思って、つい」
 あとから来た自分が通りすぎるのを、待とうとしていたらしい。まさか女ひとりで、真夜中に花見にきたとは思わない。
 風がつよく吹いた。
 枝を覆わんばかりにぎっしりとついた桜の花が、さわさわと音をたてて揺れる。
 桜に心奪われ、青年がそこにいることを忘れた。頭をうしろに落とし、夜空に舞う白い花びらを、心で追い縋るようにして見上げていた。
 風がやんだ。
 青年が桜のほそい枝先に腕を伸ばし、ほんの二、三寸ばかりを手折る。なにかとおもって見ていると、
「乙女らが挿頭のために」
 青年がそう言ったので、おもわずふふっと笑ってしまい、青年の手が伸びてくるのを拒まない。頭をすこし傾ける。手は触れず、ほそい枝が耳のうえの髪にそっと挿される。ひと叢の桜が、髪を飾る。
 手探りで、その一輪だけを摘みとる。そうして明るい声で、
「風流士の鬘のために」
 手渡すと、青年はにっこり笑ったようだ。そんな、気配があった。
 青年は、いつの間にか風で飛ばされていた墨染めの被きをかぶせ直してくれる。
 と、そのとき、先ほどの声の一団がまた戻ってきた。はじかれたようにびくっと身を固くする。怯えたようすに、青年は庇うように反対がわに押しやる。自分のからだで隠す位置に立って青年が背中を向けたとき、「や、ここにおいででしたか」と一団から声が大きく張り上げられた。青年は桜の陰から出ていく。
「桜を尋ねて来ながら気づかず通り過ぎるとは、いささか酒を過ごしましたよ、不覚不覚」
 胴間声で笑い合う声が、道と反対がわの丈高い草むらに分け入り駆けてゆく耳から、遠ざかっていく。おぼつかない足で、夜にたつ草の匂いに溺れそうになりながら、野原を掻くようにして走り、息を切らせて、祖母の庵に帰り着いた。
 だれにも見咎められずに部屋に戻ると、鏡に、桜で飾られた自分が映る。ふと笑みこぼれ、それからなんだか無性におかしくて、胸が満たされて、くすくすと笑いだす。
 青年が押しやるために両肩を抱いたとき、一瞬鼻さきが彼の胸もとに触れ、香が間近く薫っていた。どこまでも澄んだ清らかな沈香だった。
「咲きにける桜の花の匂いはもあなに」
 ふるい大和の御世の歌のつづきを口ずさんで、青年が髪に挿してくれた桜を、いつまでも眺め続ける。

 1

 賀茂祭りも終わって都がいつもの落ち着きを取り戻した、──初夏。
 童水干姿の小弥丸が、姉のいる東の対屋にちょうど差し掛かったときだった。
 小さな鼻先を、ふと良い香りが掠めていく。それに続いて目の前を、白い花びらがひとひら、同じ風に乗って舞っていった。
「あ、桜」
 小弥丸は幼い声をあげて追いかけようとしたが、庭の草木に紛れて見失ってしまった。
 けれど、見間違いだっただろう。
 桜が満開だったのはふた月ほども前のことだ。今、木々は初夏の光を受けて青々と葉を繁らせている。桜の花を見るはずもない。
 姉の部屋に入ると咲き誇っていたのも、やはり桜ではない。撫子の花だった。
 ほっそりと華奢な茎、梳いたように繊細な花びらの姿形は儚げながら、色はやや青みがかった華やかな薄紅色という花容を誇る、撫子の花。
 その撫子の花のごとき姫君が、床中に広げられた絵巻物や冊子が風でめくれるのを、袿の袖で押さえているのだった。ようやく止んだ風に、冊子の中ほどの一葉がふわりと落ちた。
 部屋の片隅の香炉からは、細い煙が立ちのぼっていた。その傍らに白猫が眠っている。
 香りの出どころは分かったが、花びらの正体はなんだったのだろう。
「姉さま、ぼく、さっきそこで、桜を見た気がしたよ」
「小弥丸、来たの」
 声をかけると、姉が明るく顔をあげた。そして遅れて、
「え──、桜が?」
「あ、うんと、もちろん気のせいだとは思うけど」
 不審げに聞き咎められ、小弥丸は慌てて打ち消した。ところが姉は、
「それ、何枚?」
 と思わぬ方向からの返事をしてきた。
「え、と、一枚、かな」
「そう……」
 しばし難しい顔をして俯いている。が、気を取り直したように円座を勧めた。
「姉さま、すっかり元気そうだね。ここしばらく病みついたみたいに沈んでたけど、そんなのあんまり珍しいから心配したよ。具合悪かったの? もう大丈夫なの?」
「──さてそのことです、小弥丸」
 と姉は、可愛らしい声で晴れやかに、しかしやけに物々しい言い回しで切り出した。
 なんだか嫌な予感がした。いつもそばに控えている乳母どころか、ほかの女房も誰一人いないのも妙だった。
「あなたは、桜野の中将さまという方を知っている?」
「そりゃ、お噂くらいはね。当朝一の公達として誉れ高いお方でしょう」
「うん、そうみたいね」
「そうみたいねって、知らなかったの? 物語ばかり読んで、現実のそういう噂話や評判は疎そうだもんね姉さま」
「今は知ってる。調べたから」
 と、姉は堂々と言った。
「左大臣家のご三男で、近衛中将ながら従三位の位をいただき蔵人頭を兼任。桜のごときめでたくも優しげな美貌と、聡明で自然と人の寄り慕う信望から、あるいは帝の桜狩りに供奉したおりに手柄のあったことから、桜野の中将と呼ばれる。元服と同時に帝の皇女降嫁という栄誉を賜ったものの結婚直前に亡くされ、その後も独身。現在決まった女君はいない模様」
 姉は淀みなく諳んじあげ、
「そしてここからが大事なところ。毎月同じ日に、大臣家別邸でご静養中のお祖母さまを見舞って、うちの前を通る。お車は、網代車に文様は大八葉、牛は白と薄茶の斑。そしてその日とは、まさに今日」
「ちょ、ちょっと姉さま。なんだか怖いよ」
「これだけ調査してもらうのに、一番上等な化粧筥と衣を何枚か売り払っちゃった」
「……その桜野の中将さまが、どうかしたの?」
「妻にしていただこうと思って」
「────」
「姉さまは、桜野の中将さまの、妻になろうと思います。この夏が終わるまでに。あの」
 と、姉は庭に目を遣った。
「撫子の花が散るまでに」
「──姉さま、まさかとは思うけど中将さまと知り合い?」
「これから知り合うの」
「────」
「ついては小弥丸にお願いがあるのだけど」
「ちょ、ちょっと待って。ぼく、今から父さまと乳母を呼んでくる。もしかしたら姉さま、お医師かことによると陰陽師が必要かもしれない。何か悪いもの食べたか、へんな物の怪が憑いてると思う、絶対。まだ治ってないんだよ、きっと」
「姉さまは至って健康だし、正気です。知っているでしょ」
「姉さまがちょっと変わってる人だとは知ってるけど、ここまでおかしなこと言い出すのはやっぱり変だよ。今、乳母を」
「乳母は今朝、念願の長谷寺詣でに発った。避暑と腰痛の養生と永年勤労の褒賞と他家に仕える娘さんとの久々の親子水いらずも兼ねてて、夏の間は帰ってこない。もし父さまに言ったら」
「と、父さまに言ったら……?」
 小弥丸が唾を呑み込むと、姉はにっこりと無邪気そうに微笑んだ。この笑顔で、お目付け役の乳母を一時追い払う算段を立てたのか。
「放っておけ、人に害を為さない限りは構うな、とお応えになるでしょう」
「……そうだね」
 父は朝廷で大内記の職を賜る官人だが、これもまた姉に劣らず違った方向で変わり者である。この邸でまともなのは自分だけだ、と小弥丸は戦慄する。
「それで話は戻って、ついては小弥丸にお願いがあるの」
 そう姉は再び切り出した。
 長い睫毛に縁取られたきらきらとした大きな瞳、今から世にもすばらしいことを語ろうという小さな赤い唇、弾んだ声音、白い頬がほのかに上気して染まるさまに小弥丸は、逃げられない、とはや観念した。
 そうなのだ。この黙ってさえいれば一見たおやかな姫君然とも見える姉は、いつも突拍子もないことを言い出したりやらかしたりするのだった。
 その生き生きとした面は、今しも庭で咲いている撫子の花の群れが、まるで楽しげな声をたてて笑い合うかのように揺れているのを思わせた。
 そしてまさに姉は、当家では「撫子」と呼びならわされているのである。夏の花とされるにふさわしく鮮やかに色づく花。貴族は、特に女君は総じて本名で呼ばれることはめったにない。姉、撫子の君は言った。
「あのね、小弥丸に今から、中将さまのお車に身投げしてきてほしいの。お願いできる?」

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